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白頭山(はくとうさん)の死#3(出会い)

僕が3歳になってからお母さんからこの山の頂上、海抜2744メートルにあるクレーター湖、龍王潭(りゅうおうたん)の出入りが許されました。
僕のことを認めるという意味です。
僕が生まれたこの「冠母峰」(かんぼぼう)にある「ママの懐」池よりかなり広い池やいくつの峰を登って頂上の龍王潭にたどり着きました。
高い所だから呼吸が若干苦しくて耳も痛かったですが、山頂にこんな広い湖があるなんて
想像もできなかったです。
湖を見た瞬間、僕は言葉を失いました。
美しいという表現だけでは足りませんでした。
青空と山頂が会う所。
空と地の境界に挟んでいる空を似ている湖。だから人間はこの龍王潭を天地(てんち)とも呼ぶかと納得しました。
霧に囲まれて顔を見せる青い水面は見る人を魅了させました。
水面から白く立ち込んでいる霧の様子はまるでこの世の物ではなさそうでした。
良く分からないですが、神様の居場所はこういう所ではないかと思いました。
そのように静かに龍王潭を見晴らしました。
僕はやっと大人になるでしょうかね。

以後、僕は龍王潭に何回か登ったですが、恐らく四度目行った時の出来事だったと思います。
夏だったから雪は解けて山頂に向かう道は名前も知らない可愛い花が咲いていました。
いつもの通り敬い気持ちを込めて龍王潭を静かに見下ろしていました。
山道の下の花畑か不自然に動いていました。
風ではないと本能的に気づいて警戒態勢にしました。
鹿?
熊?かと思ったが、
花畑から姿を現したのは驚くことにそれは
人間でした。
まっすく立って歩く人間の姿は初めて見ました。
赤い熊も時時立ちますが、基本的には四つ足で這います。
ところが、人間は前足(?)を使わずに立っていました。
お母さんから人間の出没を注意されましたが、実際に出会うとやはり不思議でした。

小さい人間の子供一人が木で作った自分の体サイズのかごを背中に背負って左手に道具を握っていました。かごの中は木の実や薬草が半分ほど入っていました。
大きくて輝く目、肌が白々の女の子はとても可愛くてお母さんの話ように
そんなに危なくはないと思いました。
少女は迷子になったかとも見えましたが、ここが初めてか好奇心いっぱいの顔で
目をキョロキョロ見まわしました。
もし僕を見たらどんな顔をするかしら。
僕は知りたくなりました。
泣く?
気絶?
それとも無反応?
僕は静かに少女に近づきました。


ママとパパはどこ?
朝、ママとパパと一緒に山で木の実や薬草を取りに行くと言われて嬉しかったです。
私はつまらない町より山へ行くのが好きでした。
山へ行くと名前も知らない蝶々を始め可愛いウサギ、リスなどにも出会って、
運がよければライチョウにも出会うからです。
遊んで暑かったら涼しい渓谷で泳ぐのも楽しいです。
美味しい山のイチゴやさくらんぼもいっぱい食べられます。
ママとパパが山を登りながら薬草を木の実を採取する間、私は付いて遊び放題でした。
特に、今日は山頂近くまで登るとパパが言ったからドキドキしました。
ママとパパはもちろん、私も自分の体サイズの大きい木の皮で作ったかごを背中に背負って薬草を取れる道具を持って家を出ました。
山はやはり楽しかったです。
午前中ママとパパの周りでいっぱい遊んで美味しいお弁当も食べました。
午後は山頂の近くまで登りました。
山道は結構大変でしたが、ママとパパがいるから安心しました。
珍しい薬草がいっぱいだ!やった!
喜んでママとパパは取るのに夢中になりました。
これを市場で売ったら設ける。私の願いだった新しい靴も買ってくれるとママは言いました。
嬉しい!

その時でした。
今まで見たこともない蝶々一匹が木の下で飛んでいました。
オレンジ色で黒いしま模様が神秘的な蝶々でした。
私は自然に引かれて蝶々を追いかけました。
悔しい事に出に入りそうだった蝶々はいつも手に取れるギリギリ直前で飛んで逃げました。
まるで私をからかう様に蝶々は先を進んでいました。
私は必ず取ると思い切って必死で追いかけました。
知らないうちに結構上まで登ったなあと思った瞬間、
あ!ママとパパは?
気づいてみたらママもパパも見えませんでした。
ここってどこ?
迷ういました。
深い森だった山の風景も結構変わって名前も知らない可愛い花畑が広がっていました。
そう言えば耳もちょっと痛くて息も苦しいでした。
怖い気分もあったけど、花畑を見たら少し心が落ち着いて好奇心が強くなりました。
花畑に入って黄色い花の甘い香を感じる瞬間!
上の方から大きい猫みたいなしま模様の動物が見えました。
私みたいに大きい目ては輝いていました。
私より三倍?四倍?は大きい体。
なぜか私はあの獣に出会った主瞬間怖いというより不思議な気分でした。
オレンジ色で黒いしま模様は先まで追いかけた蝶々とそっくりだけど
偶然でしょうか。
すげえ!この世にこんなに大きくて立派な生き物がいるんだ。
ママとパパの事はうかり忘れてやつに近づきました。
やつも私が不思議だと思ったか私の目を見ながら私の匂いを確認したいか大きい鼻の穴をばたばたして私の体サイズの頭で私の小さな顔に触れました。
寂しい?
友達いないの?
ママとパパは?
初めて出会ったのにこの親しみは一体どこから出るでしょうかね。
私も微笑みながらやつの顔や背中を優しくなでなでしてあげました。
そして、好奇心でやつの長いひげを引っ張ってみました。

やつが痛そうにびっくりして後ろに下がりました。
あ、ごめんごめん!
すまない気持ちで私はやつを抱っこしてあげました。
やつは私を振り向けながら山道へ進みました。
うん?あなたこの道知っているの?
やつはまるで僕を付いて来いというしぐさでした。
私は背中から重たいかごと道具を降ろしてやつを付いて道を登りました。
ほぼ山頂みたいだけど道は意外と緩やかでした。
間もなくやつは足を止めました。
私も息を苦しめながら追いかけてやつと同じ所へたどり着きました。
!!!
山頂です。信じられません!
山頂には大きく口を開けて霧に囲まれた真っ青の綺麗な湖がありました。
こんなところにこんな大きい湖があるなんて!
大きいだけじゃない、
青い水面はとても美しい!!
ママとパパから話だけ聞いた龍王潭です。
私は目を回してやつを振り向きました。
やつは静かに身をすくめて湖を眺めていました。
この湖と同じ清い目で…
<続く>

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