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逃げ恥への違和感。イシュードリブン思考で作品が商品化。

西野さんの最新作『ゴミ人間』を読了したところです。
その中の「商品」と「作品」、「マーケティング」について整理された一節を読み、『逃げるは恥だが役に立つ〜ガンバレ人類!新春スペシャル!!〜』を見て感じた違和感らしきものが、分解された気がしました。
連ドラは「あんまり共感はしないにせよ面白かったな」と感想をもったのですが、今回の特番で「うーん???」となったのです。
その「うーん???」の正体は、
「作品を見てるつもりが商品だった」
に近いな!って発見しました。
(ちなみに漫画は読んでません)

西野さんによると、
商品=販売を目的として生産されたもの
作品=作者の思想を具現化したもの
で、両者の違いはマーケティングの絡み方でよりスッキリ整理されます。
商品は、お客さんがどんなものを求めるか(ニーズ)を調べ、実現されたものを指します。つまりマーケティングが先に来る流れです。
作品は、ニーズとかは一旦置いといて作者の言いたいことが形になったもののことです。どう世の人に届けるか?(マーケティング)は、後に置かれるという説明でした。
革命のファンファーレを読んでから西野さんのファンを2年ほどしてますが、やっと商品と作品の違いを説明できるようになりました。

逃げ恥に戻って。
連ドラは、作品を通して伝えたかったことが聞こえたんです。
みくりさんは悩んでいる元彼を持ち前の心理学知識で分析しまくり、「小賢しい」とブチギレられトラウマを抱えました。
我々はみくりさんの行動に対して「まあ恋人にすることではないわな…」と自然に思ってしまうのですが、その延長線は「彼女なら、彼氏が悩んでたら黙ってヨシヨシしてあげて美味しい手料理のひとつでも作ってあげなさい」に繋がりかねないんですよね。そこまでじゃないせよ、同じ方向性で思ってはいるわけです。
派遣社員のみくりさんは、効率化のための改善案を積極的に提案してウザがられ、職を失いました。
これについても「まあ新卒の派遣社員がすることではないわな」と思ってしまう。「ハケンは黙ってろ!!」とハケンの品格の塚地さんよろしく言わないまでも、我々の大多数はそういうロールモデル思想の入り口に自然に立っています。
みくりさんは「彼女」「派遣社員」と役割を与えられる度、真摯に向き合おうとすればするほど、望まれていない動きをして相手と衝突してきました。みくりさんにとって役割は重要ではなく、その場で自分にできることを真剣に取り組んでいるだけなのです。が、役割ありきでみくりさんと対峙してる人からすると「なんであなたが」ってなっちゃう。
そんなみくりさん、同じく役割を重視しない価値観の平匡さんと出会って、利害が一致。何もかもがうまくいくかと思いきや、役割の呪いは解けず。
仕方がないので役割を形から受け入れていく内に、次第に気持ちも変化して役割通りの2人(夫婦)になったはいいけど、なんやかんや引っかかる。やっぱり最後は夫だからとか妻だからとかじゃなくてあなただから大切、的な着地をしていました。
という感じで「役割からの解放」っていうテーマが一貫してあったんですよね。夫婦をこえてゆけ〜です。
「役割による期待で搾取する・されることに甘んじてるところあるけど何が本当に大事か立ち止まって考えてみない?」っていうメッセージがあったように思います。
私は、とは言え役割的な振る舞いが大切なときもあるからな〜って思う派なので、何から何まで共感はしませんでしたが、そのメッセージは現代に刺さるものであり、良作品だと思いました。

そして新春スペシャルです。
これまた次々と現代社会の抱える問題が垣間見られましたね〜!

まず選択的夫婦別姓。
みくり&平匡「女性だけが苗字が変わって諸々手続きが煩雑なのはおかしい。現行制度では別姓にできないので籍入れてません」
→子どもができたので籍は入れます。一人っ子の平匡さんの苗字にします
…なるほど?えっ、この件おわり?

そして育児。
みくりさん「サポートってなに?2人で親になるんじゃないの?」
→平匡さん「言わなくてもいいことを言わせてしまった…(しゅん)」
…この件もまさかおわりなのか?

職場の妊娠順番制問題。
→みくりさん「そんなのおかしいですよね!」
→みくりも妊娠発覚。部署に女は私1人なので順番もクソもないのでした。おわり

これは…ストーリー関係なく、イシュー投げたいだけやん!
もうあとは簡単に書く。
同性愛について。
同性同士の結婚が認められてなくて、…早く時間が進めばいいのに。友情であっても愛情であっても好きって気持ちはうれしかったよ。おわり。
育休について。
育休うんぬんのまえに、仕事が休めないのっておかしいですよね。偉い人がその辺はちゃんとしよう。おわり。
家事について。
調理家電は便利でおいしいし、手作り信仰って古いよね。
苦しい時は外注サービス使おうね。おわり。
コロナのこと。
助かれ人類。
民度下がって嫌になる時もあるけど、それでも世界はまだ美しい。

全部正しいし、メッセージ性とてもあります。
でも作品を通して伝えたいことかっていうと、正直分からなかったのです。
扱われてるテーマに対する展開が全部ネットで見た世論から一歩もはみ出してなかったのです。
なのでこのドラマは、嫌な言い方すると、社会派ツイッタータイムラインの実写版みたいでした。西野さんの言い方すると、現代社会問題のひな壇芸人集合!みたいな…。
でももちろんつまんなくはなかったです。それはなんでかって言ったら、私たちのニーズがふんだんに具現化された「商品」だったからだと思いました。

商品はニーズありきです。
「子どもが産まれるのに、気持ちよく送り出してくれない会社はおかしいよね」
そう思ってる人に、育休取得予定のみくりさんと平匡さんが会社に対して「当然でしょ?」って顔を練習する場面はくすっと笑えるシーンとして届きます。
でも、仕事を引き継がれる側の人(ナオトインティライミさんやたらハマってたよね)からすれば?
制度利用の権利は「当然」あるにせよ、プライベートな事情により自分の仕事を誰かがやることまで「当然」と言えるのか?
など思い、届かないのではないでしょうか。
私自身がどういう立場かは置いといて、個人的にあまり好きになれないシーンでした。

…というか、テレビドラマはスポンサーがついてるんだからそもそも商品なのかな。
いやいや、作品を通してメッセージ伝えてくるテレビドラマも結構ありますよ。
でも今回の逃げ恥は、私たちのメッセージ(それも世論的なやつ)がひたすら具現化された…どこまでも商品だった気がするんですよね。

作品が良くて商品が悪いって言いたいんじゃなく。
作品かと思って見てたら商品だったから違和感あったんだな〜って話でした。

あとみくりさん、「つわりが終わりました!」ってガッツリ卵かけご飯食べてたけど、妊娠中は生卵やめといた方がよいのでは…てのも思ったよ。笑

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