What a wonderful world
バック・トゥ・ザ・フューチャリング 1967。
1967年を象徴する曲として、そしてまた歴史に残る名曲として多くの人に知られているルイ・アームストロングのWhat a wonderful worldを弾き語ってみましょう。
「サッチモ」という愛称で世界中の人々から愛された稀代のミュージシャンであるルイ・アームストロングの代表曲となったこの曲は、日本では「この素晴らしき世界」という邦題でよく知られています。クリスマスソングではないのに、そのポジティブな歌詞のメッセージ性からか、毎年12月になるとホリデーシーズンにぴったりなBGMとして今でも街中で耳にします。商売熱心なフランク・シナトラやナタリー・コールなどはカヴァーするだけでなく、自らのクリスマスアルバムにちゃっかり収録しているほどです。
実はこの曲の歌詞がポジティブな理由は、クリスマスでもなんでもなく、当時日を追うごとに激化していたベトナム戦争にあります。この曲の作詞者はなぜかG.ダグラスというペンネームを使っていますが、ボブ・シールという音楽プロデューサーで、ベトナム戦争を嘆き平和な世界を夢見てこの曲を書いたそうです。作曲は、ジョージ・デヴィッド・ワイスという人ですが、この二人はジャズファンなら誰もが知っている「ララバイ・オブ・バードランド」や、エルヴィスプレスリーの大ヒット「愛さずにはいられない」などを共作している名コンビなんです。
実はこの曲は、当初これまた著名な歌手であるトニーベネットに歌って欲しいとオファーされました。ところがベネットはこの曲を気に入らず、拒否。当時66歳になっていたルイ・アームストロングにお鉢が回ってきたという経緯があり、結果、アームストロングはヒットチャート1位を獲得した史上最高齢の歌手となったのでした。この曲の録音の4年後に、彼は71歳で没しています。ちなみに、この曲のレコーディングを拒否したトニーベネットなんですが、アームストロングの成功をさぞや妬んで否定し続けるのかと思いきや、早くも1970年にいけしゃあしゃあとこの曲をカヴァーして、自らのアルバムに収録しています。
1967年の発売当時、アメリカの民放テレビ曲ABCの社長がこの曲に嫌悪感を示して全くプロモーションを行わなかったとか(現大統領にソックリ!)、実際にイギリスではたちまちチャートの1位となったのに、アメリカ国内ではたったの1,000枚も売れなかったというあまりに極端な事実は、当時の情勢もありますが、実にアメリカらしいですよね(笑)。
そんな、アメリカの「闇」を感じたりもしますが、逆に67歳にして最大のヒットを飛ばしたとか、全米で1,000枚も売れなかった曲がのちに世界一の大ヒットとなるなんて(1968年以来最高のセールスを記録したシングル曲となった)、売れないミュージシャンにとっては何ともハゲみになるではありませんか!
ギター弾き語りのポイント
ルイ・アームストロングのオリジナルキーはF。ちなみにロッドステュアートのカヴァーは高い音域の声に合わせてAです。私はオリジナルキーF(1Capo/PlayE)でやります。PlayEは、今後様々なキーでのプレイが出てきますが、その中でAと並ぶもっともベーシックなポジションで、この2つのポジションにG、B、Dのポジションでのギタープレイパターンをマスターすればどんな歌の弾き語りもできるのですが、とりあえず今はそういうものだということで、第1フレットにカポをつけ、PlayEで挑戦してみましょう。(以下は実際に抑えるコードフォームのキーを記します)
オリジナルは、2小節の短いながらも印象的なイントロがを付いており、ベタでいけばE→F#を2回まわすのですが、様々なアーティストのカヴァーでは二回目のEをEmaj7に変えたり、イントロの尺を長くしたりと色々ですので、気に入ったものを参考に自分なりのカヴァーに合うイントロを工夫してみましょう。
私は、イントロを省き、いきなり歌から入るアレンジでプレイしています。しかも、相当に遅いテンポで。理由は、楽器が一つなので、途中からフィルインしだんだん盛り上げていくことで、全体としてしっとりとしたこの曲の中でのメリハリをつけることができると思ってのことです。
コードワークとおかずの絡み、途中のソロの入れ方は、弾語流独特の味付けだと思います。Youtubeの動画をなんども見て、左手の運指をよく観察してください。特に間奏では、完全に単音弾きになってしまいますと、曲として壊れてしまいます。なにせギター一本ですから、この曲に限らず間奏を入れる場合は相当の工夫が必要です。しかし、コードの響きを随所に混ぜながらの単音弾き、これができると聴かせどころの一つとなり、あなたの弾き語りの大きな武器になることでしょう。PlayEでは、6弦開放と1弦開放の2つのルート音をうまく響かせることに留意すると良いでしょう。
(ギターコード譜)
私は52歳になるまで音楽教育を受けずにきましたので、恥ずかしながら今も楽譜が書けないし読めません。添付画像のように、歌詞カードにコードを書いたものをカンペにして弾き語っています。おそらくこの添付画像からコード進行はわかってもらえると思いますが、ルイ・アームストロングらジャズの人たちは、コードは様々なパターンに展開しますし、この曲の楽譜は広く出回っていますがどれも微妙に異なるコードがふられています(間違いではありません)。私のコードは、あくまでご参考まで。
ピアノの弾き語りについて
オリジナルキーFでのピアノプレイは、添付のようなコード進行になります。
(ピアノコード譜)
テクニックについては、52歳から独学で始めたピアノですから、まともに語れることはありません。ピアノに関して、私は「歌と一緒に歌う」ことだけを心がけています。
私自身がまだ初心者なので、新しい曲をカヴァーするときに、3つまで課題を意識して取り組んでいるのですが、これはピアノ初心者の方へのいいアドバイスかもしれません。
この曲の場合で言いますと、①コードの音をときおり必要な音だけに「間引く」ことで、時折歌とピアノとで主役を入れ替えること、②一曲の間で、88鍵盤のできるだけ幅広い所に指を動かしていくこと、③この曲にしばしば登場する分数コード(分子の音の上に分母のコードを構成する)の3つだけを意識して弾き語るということです。
でも、この程度のなんちゃってピアノでも、いくらでもいい弾き語りはできると確信しています。なにせ、ピアノは楽器の「王様」ですから。私も毎日、店のグランドピアノをポロロンと鳴らすだけで、その音色にやられて昇天しそうになりますもの。ピアノ本来の音色と、あなたの歌(声)とが殺し合いさえしなければ、それで十分聞き応えのある弾き語りになるのではないでしょうか。
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