スパイスアップ・ナイトパレードの感想を真面目に書いてみた

2017年G.Wに行われた、分岐型演劇JUNCTIONさんの第1弾「スパイスアップ・ナイトパレード(http://lavo3.com/junction/)」に行ってきた。参加型という触書はないが、観客が登場人物のあとを追って動くことや、一応観客はそのパーティーの場にいるかのように進むらしいので、参加型みたいなものだろうという感覚で行った。5日に観客側として、6日はスタッフとして参加するに至った。
ここから先、まず参加していないと分からない話ばかりになる。そして一応ここで注意書きしておくが、壮絶なネタバレを含む。あと、取り留めのない小池節の文章(校正なし)なので超読みにくい。あと、今回は個人的に珍しい程度には正直に書いている。提供者の方で読まれる方がいらっしゃったら、先に謝罪しておきます。すみません。

この感想の前提

さて感想に入るが、前提の話を2つ。1つは、スパイスアップ・ナイトパレード(以降、「S・P」表記)を分岐型演劇と捉えるならば、「タマラ」を知っておいた方がいいということである。「タマラ」とはWikiいわく、「観客と俳優の間の壁がなくなっている。『タマラ』が上演されるのは一軒の大きな家で、11ある部屋で、10人の俳優たちが、同時進行的にストーリーを展開してゆく。観客は誰か1人の俳優を選択して、その俳優に随行するが、同時に随行する役を「俳優」として演じ、ストーリーを体験する。他の部屋で同時進行しているストーリーは見ることができないので、1度見ただけでは全体の筋はわからないように出来ている」である。ほぼドンピシャ。私もこの言葉を知ったのは、E-Pin企画さんのミステリー座談会だった。E-Pin企画主催「密室迷宮倶楽部」の後半で実施される移動しながら見る演劇は、この「タマラ」の発想がベースにある。と言うわけで、S・Pもそういうものだと思って観にいった。おおむね、その通りだった。上記に書いたとおり、1度だけではストーリーの全容は分からない。ので、6日目にスタッフとして入ることで全てを観た気でいる。2つめは、私に関する前提だが、スタッフはクラウドファウンドで10,000円払って参加している。周遊観劇者(別払いだからVIP扱い)ではなく、(会場で会った方なら分かると思うが)普通に客誘導してた。お金払ってスタッフをした。斬新である。と言うわけで、別に中身に携わったわけでもなければ、劇団関係者でもないのであしからず。

感想に入る。

感想は、「観客として」「イベントシステムを考える者として」の2つの視点で考えたい。あとは最後に、「その他」を添えて。偉そうなことこの上ない・・・とかそのあたりの謝罪のクダリは、前回のサファリング・ザ・ナイトで書いておいたので割愛させてもらう。

まず観客として。

楽しかった。1つの演劇としては楽しめた。が、役者の近くで演劇を見る以上の楽しみがあったかどうかは、正直疑問の余地があると感じた。そりゃ、板倉さん(ルージュで出演していた、お調子者刑事役。クロムモリブデンの役者さん)の演技を目の前で観ることができた、俺得要素があったことは認める。しかし、体験型や舞台という台がない演劇の経験がない人なら素晴らしい体験だったと思うが、体験したという点においての感想は「惜しい」という気分だった。
分岐する楽しみについて考えてみたが、分岐するメリットが薄かったという感想がある。例えば。AとBとCが宝探しに出かける設定で会話した後、3人がバラバラの場所へ行った。1時間後に再び3人が揃ったとき、Aは宝の鍵を持っていて、Bはなぜか宝はさて置いて女を連れてきて、Cは子供になっていた。AかBかCかに付いていった観客は、それぞれの登場人物が何故そういう展開になったか知っている。しかし、真面目に宝探しの資料集めをしていたAにくっ付いていった観客にとって、Bが何で女を連れてきているか分からない。というか、何でCは子供になっているんだ。・・・というように、他の場所で何があったか皆目検討が付かない方がいい。あるいは見た目変わらないとしても、改めて出会った登場人物の言動や行動の根拠を疑う瞬間が、あるとなお興味深く物語を楽しむことが出来る。・・・なんだか難しい言い方になっているが・・・あぁ、こうもいえるな。AとBとC、Aについていった人はBとCに再開した時にBとCの新たな側面に出会って、BとCのことをもっと知りたくなる。一方で、Aについては知っているので、BとCについていった人は知らない物語を知っている優越感がある。これも重要だろう(という話を、同行者とした記憶がある)。しかし、今回のS・Pでは、再び出会った登場人物の心情が大きく変わっている事は少ない。パニックと疑心暗鬼で揺れ動く内容が多い。そして、シチュエーションに対して置かれた登場人物・・・という手札を観たときに、想定の範囲内の変化が多い。そのため、登場人物同士が合流したときに、著しい変化やフェイタルな情報の受け渡しが発生しなかった。そこが惜しい感覚だったように思える。
あとは、物語的に消化されていないところがある気がする。6階はVIPルームという名称だが、冒頭には少年少女がおり、途中で女刑事が「こういう部屋入ったことないんですか?」と小馬鹿にされるシーンがある。あとは警察がいるのに、遺体を検めずに死んだということになっている。エンターテイメントだから気にしすぎなのは分かる・・・が。

次に、イベントシステムを考える者として。

某身長の高いお方と合言葉になっていた「UP or STAY」。本作の分岐は、まずそもそも、「登場人物に付いていく」ではなく、「フロアを移動する」が主軸となっていた。5階のフロアをメイン会場とし、6階と4階を利用して物語は分岐していく。

ここで、盛大なネタバレになる。物語の分岐がどこで発生していたかを思い出しながら書き進める。ストーリーの全容はあえて書かず、大枠だけ示す。あと、登場人物の名前は書いていると分からなくなるので、分かる人だけ分かる書き方をする。


① オープニング
観客はオープニングを観る。オープニングは登場人物がダンスをしながら、バックのスクリーンに名前が映し出される形式である(例えじゃなく、ぱっと思いついたのは、レティクルさん)。そして、なんの情報もなく、最初の「UP or STAY」。

②-1 UPの場合
6階のフロアに移動すると、白いワンピースの少女と赤いドレスの少女2人が男(観客に実際話しかける)を引っ掛けて飲み物を頼んだり、ワイシャツの少年とチャラい少年の2人がそのフロアで再会を果たしたりする。話が進むと、少女2人とワイシャツの少年は、どうやら今開催されているパーティーに参加した結果失踪した少女――白い少女の双子の妹――を探しに来たらしい。スカジャン/アロハシャツのチャラい少年は、同じ目的でも3人とは別に単身で来たようだ。結局チャラい少年も含めて、失踪した少女探しの作戦を進行させることになる。

②-2 STAYの場合
5階に残っていると、まずこのパーティーには3つの思惑があることが分かる(6階の作戦は知らない前提のため、実際にはこの物語中に4つの思惑がある)。1つは警察側。S・Pの参加者が失踪しているという届けがあるほか、会場のクラブからは大量の血が破棄されている事が報告されており、このクラブには吸血鬼がいるという眉唾の噂の真相を警察が確認しなければならなくなった・・・というわけで、潜入調査で男刑事とその上司の女刑事が参加者に紛れていた。2つめは、自称探偵・ミント。潜入調査中の刑事達の上司である警部は、友人?の自称探偵・ミントとその助手を連れてクラブへ来ていた。理由は警察とほぼ同等で、噂の真実を確かめに来た。3つめはクラブ側。思惑というべきか、単純にショーの支度をしている体である。パーティーの監督や経理担当、パフォーマーは冒頭でパーティーの支度をしながら誰かを探していた。結局、その誰かが見付からないので、経理担当が代役をする話でショーがスタートする。

③ ショーと騒動
ショーが始まると、6階にいた全員が5階に集められる。そして、吸血鬼をテーマにしたショーが行われる。パフォーマーが一瞬にして消えるショーがひとしきり終わると、6階にいた白い少女がステージに上がり、今行われたショーと同じように自分も消してほしい的な事を言う。パーティーの監督はそれを承諾し、ほぼ同じような手順でショーを行うが、少女が消えなければならない場面になると、少女は首筋から血を流して倒れてしまった。客席に居たワイシャツの少年や赤い少女、チャラい少年は「吸血鬼だ!この中に吸血鬼がいる!」と叫んで会場を去る。ここで、「DOWN or STAY」。

④ 騒動の分散
この選択肢のあと、警察側が捜査的な意味で6階にいく。というわけで、「UP or STAY」。③と④の間、約30秒。そのため、③の移動中だった人は、急に「DOWN or UP or STAY」になる。

⑤-1 DOWNの場合
4階のフロア。先に断っておくと、この部屋は出入りに扉の開閉が必要で、暗黙的に移動は「移動」が匂わされている時にしか出来ない(絶対ではない)。逃げていった赤い少女と少年2人が、話をしている。吸血鬼から逃げようというワイシャツの少年と、白い少女を助けに行こうというチャラい少年。チャラい少年がワイシャツの少年を部屋の奥へ突き飛ばし、赤い少女と会話したあと、またワイシャツの少年の方を向き直ると・・・ワイシャツの少年から血が流れている。「吸血鬼にかまれたんだ!吸血鬼になっちまう!」と騒ぎになっているところへ、ミントと助手が5階から移動してきて登場。ワイシャツの少年を縛って部屋へ閉じ込めろと赤い少女に言いつける。その後、チャラい少年はワイシャツの少年の敵討ちだ!といって部屋を出てどこかへ。ミントは戻ってきた赤い少女と部屋にいる観客を逃がすように助手へ指示し、レディーファーストで4階フロア奥のエレベーターにまずは赤い少女と女性の観客を乗せて送り出す。残りの観客やミント・助手が次のエレベーターを待っている最中に、パフォーマーが着替えて登場。その後、送り出したはずのエレベーターが戻ってきて、乗っていた赤い少女がいなくなった代わりに、ショーで代役をしていた経理担当が登場。「下にも吸血鬼がいる」と騒いで、4階を後にする。残された観客、ミント、助手に、パフォーマーが「VIPルーム(6階)の奥から外に出れる」というので、4階の全員が6階へ移動する。

⑤-2 UPの場合
(逃げた経理担当を探しに・・・だったかな)男刑事が6階にいくと、吸血鬼みたいな恰好をした奴が縛られたまま寝ている。起こしてしゃべっても、どうも会話がかみ合わない。疲れた男刑事が去ろうとしたところで、その吸血鬼みたいな奴が「元吸血鬼だ」「この事件の謎を解明してやる」と言い出す。男刑事は喜んで、その男を縛っていた縄を解いて、女刑事の待つ5階へ男を連れて行く。
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この時、指示はないが「登場人物について行かず、6階に残る」という選択肢が存在する(なぜならスクリーンに「UP or STAY」と書かれているわけではないから)。残っていると、⑤-1で吸血鬼にかまれた!と騒いで別室送りになっていた筈のワイシャツの少年が裏から6階に上がってくる。その後、辺りを見渡して「まだかよ」とつぶやいて消える。次に、チャラい少年が正規ルートの階段で上ってくる。行き場をなくして、その場に残っていた数少ない観客に「ステージに行くにはどうすればいいか」を聞いて、去っていく。これに前後して、エレベーターから消えていた赤い少女が裏口から6階に来ていなくなり、入れ替わりでワイシャツの少年が戻ってくる(ここはすれ違いが発生していることだけは覚えているが、順序は忘れた)。最後にワイシャツの少年と赤い少女が出会い、作戦が大丈夫なのか的な不安を漏らしていたところへ女刑事と男刑事が正規のルートから現れる→⑥へ続く

⑤-3 STAYの場合
とにかく、いったい何が起きたのかという話で大盛り上がりする。というか、容疑者たる経理担当が逃げたので騒ぎになる。女刑事はパーティーの現場監督を責め、男刑事は6階へ移動する(これが⑤-2)。残されたメンバーは吸血鬼騒動の話になり、軽い推理合戦が始まる。ミントと助手が警部を残して4階へいなくなり、しばらくして6階から男刑事が元吸血鬼を連れて戻ってくる。元吸血鬼は「6階から観ていたが、刃物で少女を刺していたところは観ていないから、経理担当は少女を殺していない」という話をし始める。そこで女刑事が倒れていた白い少女を検めようと、その上に被せていた大きいローブを剝ぐが、白い少女は忽然と姿を消していた。そこからは、本当に吸血鬼がいるのではないかという話になり、警部がガチで吸血鬼を恐れた挙句、部下の女刑事が吸血鬼になったと言い出す。結局、事の収集のために女刑事は隔離という意味合いで男刑事と共に6階へ送り込まれる。というわけで、「UP or STAY」(これが⑥へ続く)。残された人の間で元吸血鬼が何も見ていないでたらめを言っていることを暴露され、吸血鬼なんていないというムードになる。しかし、チャラい少年が吸血鬼に噛まれた友人の敵討ちだと飛び込んでくるわ、経理担当が吸血鬼がいると騒ぐわで、5階はカオスになる。

⑥ 推理対決の準備(⑤-2の続き)
6階に隔離された女刑事と男刑事が引き続き推理を続けていると、4階からパフォーマー、ミント、助手、観客が上ってくる。そこで推理対決の話になり、「おあつらえ向きのステージが既にある」と言って、5階へ登場人物が移動していく。主要な登場人物全員が6階からいなくなると、実は隠れていた赤い少女とワイシャツの少年がその様子を観にいくために、ステージ裏へ繋がっている階段から5階へ降りていく。こうして、6階にいる全員が5階へ移動することになる(これは5階へ移動するようにアナウンスがある)

⑦解決へ(全体合流)
ここで(隠れている人間はおいといて)、白い少女以外全員揃う。あとは当日、物語を見ていた観客が知っている全て。

※間違いなどあれば、教えていただけましたら幸いです。修正します。

ざっくり書いたが、伝わるだろうか。間々分岐があったことは分かると思うが、とりあえずルール上設けられている「スクリーンに『UP or STAY』と出たら分岐」は5階しか当てはまらない。6階は雰囲気で察するしかないのである。しかし、スタッフをしていて見ている限り、分岐の瞬間ではないタイミングでも動くこと自体は許されていた。動いてもいい、しかし、本作では観客を待って演技がスタートするわけではない。そのため動き出しが出遅れた人や移動を頻繁に行う人には、物語を途中から観なければならず、言い方次第ではアンフェアなことになっていた。リアルタイム進行だから仕方ないっちゃ仕方ないが、フロア移動では暗くて狭い階段を、多い日は20人以上が上り降りするので何かしらの対策は欲しかったようにも思える。
それと、観客としての意見でもあるかもしれないが、もう1つ。これは友人とも話していたが、あの空間における観客の立場がよく分からない物語だった。観客は、スタート時点ではS・Pと同名を冠するパーティーの参加者として扱われている。登場人物から話しかけられることもある。しかし、物語が進展すると、物語を観せる必要性からか観客は空気になったり騒ぎの蚊帳の外に置いていかれる。「置いていかれた・・・」と思った瞬間、「そうだよな、これはタマラであって参加型演劇じゃないもんな」と思い直すが、どうも腑に落ちない。ちなみに、本物のタマラは殆ど観客を意に介さず物語が進む(であってたはず)。先に挙げたE-Pin企画さんのものは、逆に徹底して観客もその場にいる参加者として扱っている。観客とは空間においてなんだったのか、明確に分かる形なら良かったのに、という感想である。
そうそう、上記の2つを組み合わせて考えると、観客がS・Pの参加者であれば「パーティーの客」として登場人物が牽引していくのが望ましい気がする。逆に、観客は観客という空気(観測者)なのであれば、より自由な行動が可能な状況にしておくと親切だったということか。

“そのほか”、言及すべきこと。

・・・例えば、公演期間の後半はS・Pのテーマソングを作った『HOTEL ピューリツァーズ』のライブが開演30分前からあった。JAZZは元から好きなので良かった。なお、オープニングダンス中も、生バンドでお届けだった。聞くところによると、公演期間の前半に行った友人は生バンドじゃなかったらしい。あぁ、そういえば開場が開演の60分前だと、早い時間から来た人がとても手持ち無沙汰だった。だから簡易的な読み物を渡したり(パンフとまでいかなくても)、スクリーンに何か映したりしたらいいのにな・・・と感じた。あるいは、30分前開場にするか、か。
・・・おぉ忘れてはいけない。ルージュとノワールの違いについて。本公演は2チームが交代で出演している。個人的に率直な感想でいえば、ルージュの役者さんでノワールの演出が良かった。「何が違ったの?」という意味で、最も分かりやすかったのはオープニングのパフォーマンス。ルージュは2人の少女が踊るだけのシーンが、ノワールでは手品とキレてるダンスが観ることができた(笑)手品、あっという間に白い鳩が出てきたので、凄かった。細かい違いで言えば、役者が違うので変わっただけですが、警部の態度、ミントと助手の関係、白い少女の観客に対する謝罪の感覚がそれぞれ違った。その点ではノワールの方が好きだったかな。
あぁ、スタッフの話。基本的には客入れと誘導のみの手伝いだった。10,000円の詳しい内訳は個別にお問い合わせいただくとして、メリットは3つあったと思う。1つ目は役者との触れ合い。これは一緒にスタッフをしていた人がとある役者さんのファンで、その人の出演回に何度も観客として来つつ、珍しさからクラウドファウンディングを経てスタッフに入ったそうだが、握手したり円陣組んだりできて嬉しいといっていた。2つ目は観客の立てない場所から演劇を観ることができること。私の場合、白い少女が経理担当にナイフを突きつけるシーンが眼前で繰り広げられたので、他の観客からの流れ弾的視線を浴びることになったが迫力があって良かった。3つ目は俺得な学びがあった。ここは詳しく語らない。ぶっちゃけ、払っている側とてスタッフで入ったのだからもっと色々やりたかったという、意味の分からない感想を抱いた(苦笑)

再演は分からないが、第2弾、第3弾はあるらしい or やりたいらしい。

ミステリーと聞いてミステリーという心構えで行ったもんだから、演技している場所以外もジットリと見回していた。実は最初の「UP or STAY」で6階にいかなくても、ショーの最中ひたすら少女2人を観ていると、赤い少女が白い少女の首に細工しているシーンを見ることができるので、少女らの作戦については気付くことができるようになっていた。その点はリアルタイムで細かい動きもあったように思えた。でも、ちょっと観にいく前に違う物を想像しすぎていたかもしれない。次回があったら、また可能なら観客だけでなくスタッフで入りたいと思う。

あ!そういえば仮面してスタッフしてるのに、即私だってバレたぞ!がんばれよ、仮面!

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