ともに17歳でプロデビューした日本ランカー対決 タイトル戦線へ生き残りを懸ける! 2021年10月30日
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ともに17歳でプロデビューした日本ランカー対決 タイトル戦線へ生き残りを懸ける! 2021年10月30日

◇スーパーフェザー級8回戦
 日本スーパーフェザー級5位
 渡邉卓也(DANGAN AOKI) 48戦37勝(21KO)10敗1分
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 日本スーパーフェザー級9位
 三瓶数馬(協栄新宿) 26戦20勝(9KO)6敗

 ともに17歳でデビュー。プロのリングでボクシングのすべてを学び、喜びも悔しさもすべて味わってきた。プロ15年目、32歳の渡邉卓也。プロ10年目、26歳の三瓶数馬。キャリアにアマチュアの経験が刻まれたトップボクサーが主流になり、小、中学生のころからボクシンググローブと親しんできた選手も珍しくなくなってきたなか、プロ叩き上げの日本ランカーがタイトル戦線への生き残りを懸けて相まみえる。

 渡邉は今年1月、日本スーパーフェザー級王座に挑戦し、6回TKO負けを喫して以来、9ヵ月ぶりのリングになる。通算3度目となる日本タイトル挑戦も現王者・坂晃典(仲里)の強打に屈し、キャリア初のKO負けに終わった。再び敗北から立ち上がる戦いを前に、その表情に口調に隠し切れない感情がにじみ出た。

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「悔しかったですね。めちゃくちゃ悔しかったです。出し切れないで終わるっていう自分の弱さがすごく出てしまったな、というのがあるので。正直、あの試合のことは、細かいことは振り返りたくないというか、振り返りはするけど、自分のなかにとどめておこうと思ってて。何を言っても負け犬の遠吠えになるだけじゃないですか。悔しいけど、はけ口なんてないから、試合するしかないんですよ」

 元WBOアジアパシフィック・スーパーフェザー級及びWBCユース・ライト級王者、それが日本での渡邉の肩書きであり、勲章になる。ほかにも48戦中14戦をタイ、香港、韓国、台湾、中国で戦い、日本“未公認”の地域タイトル3つも獲得している。

「もちろん今までやってきたタイトル、すべてに思い入れがありますよ。日本の人たちは『何、それ?』って感じだろうけど、そういうの俺は別に関係ないと思ってるんですよ。実際にタイトルマッチをやって、獲ったベルトだから」

 国内では考えられないような8千人の大観衆の前で戦ったこともある。香港、台湾には渡邉の試合を観戦するため、日本に駆けつけてくれるまでになったファンもいるという。すべてがかけがえのない経験であり、大きな財産である。それでも日本タイトルのベルトには、何にも代えがたいぐらい特別な思いがある。

「まだ中学2年の頃で、お金がなかったから立ち見でした。あれは多分、東側の上だったと思いますけど、バルコニーから乗り出して、4回戦の最初から。人がどんどん集まってくるから、トイレに行きたくても『場所を取られちゃうから、行けねえよ!!』とか思いながら(笑)」

 友だちに誘われ、初めて観戦した後楽園ホールの臨場感に心をつかまれた。驚いたのがパンチの打撃音。「『こんな音がするのか!』と、あの乾いた音が衝撃で」。その日のメインは日本スーパーバンタム級タイトルマッチ、友だちイチ押しの渡辺純一の防衛戦だった。金髪のポニーテールをなびかせ、“金狼”と呼ばれた強打のサウスポーの好戦的ファイト、何より日本チャンピオンのベルトに目を奪われた。

「もう、シンプルにカッケーな、と思って(笑)。『俺もやりてえ!』『絶対にやる!』って決めました。リングで戦うボクサーはカッコいいなって」

 あれから約20年の時が流れ、ベルトのデザインも変わり、計12度のタイトルマッチを戦った歴戦のボクサーとなった今でも、思いはまったく変わらない。

「憧れというか、目標なんですけど、日本タイトルを獲りたい、という気持ちが強くて。やっぱり、そこですよね。カッケーな、と思っているので」

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 そのためにも負けられない再起戦。3年前の台湾以来、長いキャリアで数えるほどしか対戦経験のないサウスポーが相手になる。が、ミットを持ってもらうことの多い晝間貴司(ひるま・たかし)トレーナーが現役時代はサウスポーで「自然な左構えで受けてくれたので、久しぶりの左とのスパーも違和感はなかった」という。

 人柄そのまま、決して器用なボクサーではない。堅いガード。丹念なジャブ。徹底的に鍛え上げ、築き上げた基礎の上に技術、経験、一つひとつを地道に積み上げてきた。そこに一昨年夏から指導を仰ぎ、かつて協栄ジム時代に佐藤修、坂田健史を世界王者に導いた名伯楽、大竹重幸マネージャー兼トレーナーの「スパイス」が加わった。

「パンチの打ち方とか、大竹先生に見てもらえるようになって、また自分が変わってきたところがあるので。そういうところも次はしっかり出せるように」

対三瓶、対サウスポーより自分自身が「出し切ること」と繰り返す。常に心がけてきたことだが、前戦の悔しさが大きい分、その気持ちが今回は特に強いという。

「今までやってきたこと、これまでのキャリアの出せるものを全部、片っぱしから出していくつもりです。出し切ることができれば、結果はついてくると思うので」

そして現在、三瓶とコンビを組むのが内田洋二トレーナーである。2012年7月、23歳で初めて日本タイトルに挑戦したとき、当時の日本フェザー級王者・天笠尚のコーナーにいた因縁の人だ。渡邉が「胸に秘めたもの」はさらに大きい。

 三瓶は今年6月、渡邉の元同門・長谷川慎之介(ワールドスポーツ)との日本ランカー対決に6回負傷判定で敗れて以来、10ヵ月ぶりとなる再起を果たしたところ。サウスポーとの連戦となった宮本知彰(一力)を6回TKOで下した一戦は会心の出来だった。冷静かつ丁寧なブロッキングを駆使し、打たせず打つ“新境地”を見せた。長谷川に連勝を4でストップされた試合が2度目の転機になった。

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「このままのボクシングでは上に行けないんだって、また思い知らされたというか。あの負けがあったから、また今の自分がいるなって感じがします」

 無傷の9連勝で全日本スーパーフェザー級新人王になったのは18歳のとき。技能賞にも選出されたとおり、右ジャブを基調とした手堅いボクシングに定評があった。が、次第に負けが込んでくる。決定的だったのが後の日本王者・末吉大に敗れた2戦だったという。長身で懐の深い実力者に自分のボクシングの限界を見せつけられた思いがした。

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「何かを変えなきゃいけない、自分が変わらなきゃいけないと考えた結果が、あの打って打たれて、みたいなボクシングでした」

 それまでとは打って変わってファイタースタイルに傾倒し、激闘型に転じていく。24歳未満のA級ボクサーが争う日本ユース王者にはなったものの、ダメージが懸念されるような打ち合いが続いた。内田トレーナーや周囲から「頑固」と評される所以だが、「あのときは、あれが最善だった」という信念が三瓶にはある。

「僕のなかでは常に、そのときの自分が勝つためにいいと思ったことをやってきたつもりです。勝つためにもがいていたというか、試行錯誤中だったのかなって思います」

 再び迎えた大きな分岐点で、また自分を見つめ直した。自己変革の試行錯誤のひとつが呼吸法。信頼するフィジカルトレーナーにヒントをもらい、横隔膜を下げ、深く呼吸することを意識するようになった。

十代の頃からスパーリングで思いどおりにならないと感情を乱す悪癖を指摘され、試合でも時折、顔をのぞかせたが「落ち着いて、やると決めたテーマだけを淡々とできるようになってきました」。体が浮かなくなり、体幹が安定してきた実感もある。より顔面を保護するフルフェイスタイプのヘッドギアをノーマルに替え、ディフェンスに集中できるようになってきたのも、メンタルの落ち着きと体幹の安定があればこそだった。

 いい流れで迎える上位ランカーとの一戦。だが、「前戦がよかったからって、あれと同じものを求めるつもりはありません」と言う。

「ボクシングは対相手のスポーツ。相手を研究して、また違う自分じゃないと渡邉選手に勝つボクシングにはならないと思うし、ある意味、対サウスポーと対オーソドックスでは別競技ぐらい戦い方が変わってくるので」

 これもまた「僕のことを分析して、嫌がることをやってきた」長谷川戦で、あらためて気づかされ、突き詰め直してきたことだった。

 長くランキングに名前を連ねながら、メジャータイトルへの挑戦経験がまだない。次の勝利がまた一歩、タイトルに近づく足掛かりとなるが、「正直、その上のキラキラしたものは見えていません。目の前の相手に勝つことだけに集中しています」ときっぱり言った。それは三瓶の原点でもある。

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 小学4年の頃に空手を始めた。礼儀や落ち着きを身に着けさせようと父親に連れられてだったから、最初は「イヤイヤ感」があったという。向き合う姿勢が変わるのは中学生になり、2つ上の先輩との組み手でボコボコにやられてから。負けじ魂に火がつき、1対1の勝負の楽しさに目覚めていく。

 その頃、親せきが友人だった縁で、初めて後楽園ホールで観戦したのが渡部あきのりの試合だった。後にスーパーウェルター級、ウェルター級の2階級で日本、東洋太平洋王者となるサウスポーのハードパンチャーに憧れ、同じ協栄ジムに入ったのは高校1年のときである。

渡邉につく元協栄ジムの大竹・晝間の両セコンド陣は駆け出しの頃の三瓶を知り、晝間トレーナーと再生した名門ジムを率いる瀬藤幹人会長は、かつての師弟コンビと、こちらにもちょっとした因縁がある。

 打ちつ打たれつのボクシングから脱却した三瓶だが、打たれても打たれても向ってくる、あるプロ叩き上げのベテランファイターとのスパーリングで思い直したことがある。

「あ、この覚悟がプロだな、と思って。もちろんしっかりディフェンスはするし、殴られないに越したことはないけど、殴られても引かない、この覚悟だけは忘れちゃいけないと思い出させてもらいました」

 だからこそ、試行錯誤し、もがきながら歩んできた道も間違いではなかったと思える。「渡邉卓也選手というひとりのボクサーに対して、自分のやってきたことがどこまで通用するのか。自分でも楽しみです」。その笑顔は充実感に満ちている。

<船橋真二郎>

●ライブ配信情報
 ▷独占ライブ配信:10月30日(土)17時45分~試合終了時刻まで
 ▷アーカイブ期間:11月2日(火)23時59分まで
 ▷視 聴 料 金:3,000円(税込)一般チケット
 ▷特 別 解 説:京口 紘人 (WBA世界ライトフライ級王者)
          赤穂 亮 (元東洋太平洋・日本王者) 
 ▶販売サイトはこちら

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