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【澤田京介】初防衛戦で真価問われるバンタム級王者 「澤田は強いと認められたい」 6月23日

◇日本バンタム級タイトルマッチ10回戦
王者 澤田京介(JB SPORTS) 19戦15勝(6KO)2敗2分
×
1位 堤聖也(角海老宝石) 7戦5勝(4KO)2分

悲願の日本タイトル獲得も「すっきりしない勝ち方だった」

ひょっとして燃え尽きてしまったのではないだろうか?

初防衛戦を控えるチャンピオンに失礼な質問だったかもいれない。それでも澤田は嫌がる素振りを見せず、余裕を持って次のように返してきた。

「取った瞬間はホッとしたというか、安堵感がありましたけど。それで終わりじゃないんで。そこからスタートというか、防衛していかなくちゃいけないので。すぐに気持ちは切り替えられました」

 そう聞かずにはいられなかった理由はある。

高校時代に全国大会準優勝の成績を残し、名門日大をへてプロ入りしたものの、デビューから2連敗とつまずいた。ようやく日本タイトルマッチまでこぎつけながら、その試合はコロナ禍によるスケジュールの延期、チャンピオンの引退による対戦相手の変更、初回にダウンを奪いながらまさかの2回負傷ドロー、対戦相手の計量失格……とまったく歯車がかみ合わなかったのだ。

ようやく大嶋剣心(帝拳)との王座決定戦に勝利したのが今年2月の話で、挑戦者決定戦を終えてから2年3カ月もたっていた。だからこそ「精神的に疲れてしまったのでは?」と心配した。しかし、澤田のゴールは日本タイトル獲得ではなかった。初防衛を成功させて自分の力をアピールしたい。チャンピオンの心は今、大いに奮い立っていた。

 ボクシング界には「初防衛をはたしてこそ真の王者」という格言がある。ましてや王座決定戦に勝利した澤田はチャンピオンからベルトを奪ったわけではない。加えて大嶋戦はカットによる5回負傷判定という不完全燃焼の内容だった。

2022年2月5日日本バンタム級王座決定戦10R VS 大嶋剣心(帝拳)

「そう、この前は勝つには勝ったけど負傷判定です。そして去年7月の王座決定戦(対定常育郎)が2回負傷ドロー。すっきりした勝ち方をずっとしていません。だから今度こそは、という思いは強いですね」

 チャンピオンという肩書きを手にしたとはいえ、自分はバンタム級で最も強いボクサーだと言えるのか。「澤田は強い」と周囲に認められたい。ベルトという形あるものを手にしたからこそ、その価値を高めたいという気持ちは強くなった。チャンピオンになった者でなければ分からない実感だろう。

不利予想は発憤材料、活気あるジムのためにも勝利を

 そんな思いに加えて、澤田には「勝ちたい」と強く思うもう一つの理由がある。それはJB SPORTSジムを牽引する34歳の最年長者としての誇りだった。

 澤田がデビューしたころ、ジムのプロボクサーが次々と抜け、澤田1人しかいない時期があった。トレーナーの山田武士が他の格闘技のセコンドに入ってライセンス停止処分となり、ボクシングの指導をできなくなったことが原因だった。山田はこのとき、自分を守ってくれた会長の森川ジョージに「澤田をチャンピオンにして、必ず恩返しをします」と誓った。

山田は2年半かけてライセンスを再取得し、2014年から澤田とタッグを組んだ。それからは無敗。8年かけて日本チャンピオンに育て上げた。こうした背景があったからこそ、山田にとっても、森川にとっても澤田のベルト獲得は特別な思いがあったのだ。

 そんなジムの歴史を澤田もしっかりかみしめている。

「最近、すごくプロ選手が増えたんです。移籍組もいる。たぶん自分がジムに入ってから一番たくさんいます。ほんとにぎやかで、活気があるんですよ。日々刺激を受けています。自分がチャンピオンになれたのは、そういう雰囲気、環境の後押しもあったと思うんです。そう考えるとここで負けるわけにはいかない。あとに続く選手もいるわけですから」

 辛いときも、苦しいときも、ともに歩んだJB SPORTSジムに勝利をもたらしたい。それは結局、自分自身の将来を切り開くことにもなる。5月、SNSを通じてWBOアジアパシフィック王者の西田凌佑(六島)から「ぜひ統一戦をしましょう」というラブコールが届いた。澤田も「次は指名試合だから、それをクリアしたら有りだね~」と答えた。

「あんなことを言われるまで統一戦なんて意識したことがなかったんです。防衛戦のことしか頭になくて。でも、うれしかったですね。勝っていけば自然とそういうこともあるかもしれない。モチベーションがグッと上がりました」

 今回の一戦、ボクシングモバイルの勝ち予想投票では挑戦者の堤が優位と出ている(6月20日現在)。確かにアマチュア経験豊富(84勝17敗)な堤は評価の高い選手だ。澤田の最近の試合が決して快勝ではないことも、このような予想につながっているのだろう。

 澤田本人も不利予想を知っていた。だからこその思いは当然生まれる。

「見返してやりたいという気持ちはありますね。インパクトを残して勝って認めさせたい。名実ともにチャンピオンになりたいと思っています」

 あれだけ苦労して手にしたベルトを初防衛戦で手放すわけにはいかない。34歳のチャンピオンがキャリアのすべてを結集して最強挑戦者を迎え撃つ。

〈渋谷 淳〉

●ライブ配信情報
 ▷配信プラットフォーム:BOXINGRAISE
 ▷ライブ配信:6月23日(木)18時00分~試合終了時刻まで
 ▷料  金:980円 ※月額会員制
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