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【渡邉卓也】プロ50戦目の元WBOアジアパシフィック王者、「出し惜しみせずすべてを出し尽くす」 5月15日

◇東洋太平洋スーパー・フェザー級王座決定12回戦
 3位 渡邉卓也(DANGAN-AOKI) 49戦38勝(22KO)10敗1分
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 6位 力石政法(緑) 11戦10勝6KO1敗

 渡邉卓也が記念すべきプロ50戦目を迎えようとしている。ひょっとすると試合数は現役最多? 「いや、違うと思いますよ。そこ、けっこう気にしているところなので」。渡邉にそう指摘され、早速調べて見ると上には上がいた。

 現役トップは東洋太平洋L・フライ級王者の堀川謙一で58戦。2位が世界3階級制覇のホルヘ・リナレス(帝拳=ベネズエラ)の54戦。4月の日本タイトルマッチに敗れて引退を表明した久高寛之(仲里)が51戦。そして渡邉が日本ランカーの高橋竜也(ヤマグチ土浦)と並んで49戦。トップボクサーでなければこれだけの数字を残せないことがよく分かる。

 これまでの49戦で数々のタイトルマッチを経験してきたのも渡邉ならではと言えるだろう。日本ボクシングコミッション公認のタイトルとなると、代表は16年に獲得したWBOアジアパシフィック王座となるが、未公認を含めると2011年のWBCユース・ライト級王座決定戦から毎年のようにタイトルマッチの舞台に立ってきた。11年以降でタイトルマッチのなかった年は13年とコロナ禍の20年だけだったというからすごい。

「本当にありがたいと思っています。今回もWBOアジアパシフィックを取っているからOPBFは別にいらいない、とかはまったくないです。OPBFは日本で昔から認められている伝統のタイトル。相手も強いですし、モチベーションは高いですね」

 高校に入学してからジムに通い始めて高3でプロデビュー。33歳になった渡邉は「がむしゃらにやってきただけなのでベテランになったという感覚はまったくない」と笑う。腰の低さも関係しているのか、確かに渡邉からベテランのイメージは湧いてこない。

「よく年齢を重ねて疲れやすくなるとか言うじゃないですか。そういうのはまったく感じません。怖いくらいです。10代のころと一緒なんですよ。ほんと、生活スタイルも20歳くらいからまったく変わっていないので。スーパーのバイトは高校のときからずっと同じところで、バイトしてジム行って練習しての繰り返しですから。まあ、バイトは長いので、『スパーリングが入ったので早めにあがらせてもらいます』とか、融通は効くようになりましたけど」

 2007年1月のプロデビューから夢中で走り続けて足かけ16年。たくさんけがをして体のケアを学び、10度の黒星から多くを学んだ。直近の敗北は昨年1月、日本王者の坂晃典(仲里)に挑んだ日本タイトルマッチだ。長いキャリアの中で初めてのTKO負けは大いに考えさせられる契機となった。

2021年1月22日日本スーパーフェザー級タイトルマッチ10回戦 VS 坂晃典

「(TKO負けの場面は)まだまだ戦うつもりでしたけど、あれで止められるのは仕方がない。本当にダサイ試合をしてしまったというか、自分に腹が立つような試合でした。練習から、日々の生活から、まだまだやれることがたくさんあると反省しました」

 坂に敗れたあと、新たな取り組みの一つに食事の改善がある。もともと減量や食事への関心は高く、ユーチューブで他競技のアスリート食を研究するなどして自分なりに工夫を凝らしていた。ところが――。

「ある人のアドバイスで自分に合う食材、合わない食材を血液検査で調べてもらいました。遅延性アレルギーというのがあって、普通のアレルギーは食べたらすぐにかゆくなったりしますけど、遅延性は食べて時間がたってから疲れやすいとか体に悪い反応が出るアレルギーです。調べてもらった結果、遅延性アレルギーと思われる食材がけっこう見つかった。今では野菜とか果物とか、だいぶ選んで食べるようになりました」

2021年10月30日スーパーフェザー級8回戦 VS三瓶数馬

 もちろん技術的な見直しも加え、再起戦となった同年10月の三瓶数馬戦は2回TKO勝ち。「あの負けでふっきれて練習できるようになったと思う」という成果を出した。そして巡ってきたのが今回の東洋太平洋王座決定戦だ。またしてもタイトルマッチのチャンスを手にしたのは決して運がいいだけではない。

 エリートでもない、器用でもないと自認するボクサーがコツコツと努力を重ねてプロ50戦までたどりついた。はたして渡邉にとってボクシング人生のゴールとはどこにあるのだろう。ストレートに疑問をぶつけてみると、渡邉は少し首をひねって考えてから、次のように答えてくれた。

「中学生のとき、後楽園ホールで渡辺純一さんの試合を見て『ボクシング、ヤバっ』と思ったときのままなんですよ。ただあこがれでやってきた。自分もかっこいいと思われたいと思ってやってきた。だから大人の考えというか、次にこう勝って、こういうプランで世界チャンピオンになるとかは考えてないんです。もちろん大きな舞台に立ちたいという気持ちはあります。きっと次勝てば、別の景色が見えてくるんだと思いますけど」

 33歳となった今でもボクシングを初めて見たときの感動は消えていない。これからも真っ直ぐ、がむしゃらに。「出し惜しみなく、すべてを出し尽くす」と語る渡邉は経験してきた49戦のすべてを力石にぶつけるつもりだ。
<渋谷淳>

●ライブ配信情報
 ▷配信プラットフォーム:ABEMA
 ▷ライブ配信:5月15日(日)12時45分~試合終了時刻まで
 ▷料  金:無料
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