やりきった証を(千葉開)、憧れの伯父を超える(高山涼深) それぞれの明日を懸けたホープ対決! 2021年10月30日
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やりきった証を(千葉開)、憧れの伯父を超える(高山涼深) それぞれの明日を懸けたホープ対決! 2021年10月30日

◇53.0kg契約8回戦
 日本バンタム級9位
 千葉開(横浜光) 15戦13勝(8KO)2敗
 ×
 日本スーパーフライ級9位
 高山涼深(ワタナベ) 4戦4勝(4KO)

 高いポテンシャルを秘めた才能か。往年の強打者の血を受け継ぐサラブレッドか。興味深いホープ対決である。

「勢いのある選手ですし、負けを知らない強みはあると思いますけど、しっかり勝たないといけない相手」と言うのはプロの経験、実績で上回る28歳の千葉開。今年5月、東洋太平洋王座決定戦で判定負けも「後悔するようなところは残さず戦えた」と前向きに捉え、「どうしてもベルトを獲りたいという気持ちが増しました」。決意も新たに戦線復帰する。

「名前もあるし、攻防のバランスがよくて、パワーも実力もある1個上の階級の選手ですけど、これはもうやるしかない、と思って」と高山涼深。駿台学園高から法政大にかけ、通算51戦35勝(10KO・RSC)16敗のアマチュア戦歴がある25歳も「ここで勝ったら、一気に来年、(タイトルに)近づける」と強い意気込みを持って、試される一戦に臨む。

 横浜光ジム入門時から「モノが違った」と石井一太郎会長が能力の高さを認めてきたのが千葉だ。22歳のプロデビューから7連勝(6KO)。期待どおり、順調に日本ランク入りを果たした。だが、迎えた8戦目、優勢に試合を進めながら、荒々しいパンチを振り回すブライアン・ロベターニャ(フィリピン)のラフな攻撃に巻き込まれ、4回ストップ負け。ここから千葉の言葉を借りれば、「長いトンネル」に迷い込むことになる。

 再起して、勝利は重ねたものの、「酷いときは、足は動かしづらいし、スピードも出ないし、やたら疲れるし、で」。自分の動きがしっくりこない。デビュー当初は何も考えず感覚で動けていたが、あらためて向き合うと「自分のボクシングが分かっていなかった」ことに気づかされた。

「なぜ勝てていたのか、自分でもはっきり説明できなかったですし、軸がなかったというか。それからは自分のスタイルを探して、いろいろな人の話を聞いたり、いろいろな選手の映像を見たり、考えすぎて。あっちに行ったり、こっちに行ったり、ずっとボクシングが定まらなかったですね」

 トンネルを抜け出したのは昨年12月。ほぼフルマークの大差判定で快勝した石川春樹(RK蒲田)戦の前だった。3年近い自己探求の果てに悩める千葉がたどりついた答えは “姿勢”だったという。

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「いちばん動きやすい“姿勢”を見つけたところから、どんどん体をうまく扱えるようになって。調子がよかったときにできていた感覚って、これなんだなっていう動きを安定的に出せる自分の軸が定まったというか。それまでは“積み上げる”というより“探してる”だったのが、積み上げるためのベースがようやく整ったな、という感じです」

 だからこそ、悔しい思いはしたものの、初のタイトルマッチでつかんだ一定の手応え、見えた課題も前向きに受け止められた。

 絶妙なライン取りで懐の深いサウスポー・中嶋一輝(大橋)の強打をかわしながら、前に引き出してカウンターを狙う。明確な意図が見えたのはむしろ千葉のほうだった。「半歩距離が遠かった」ため、相手を引き出しきれず、倒すしかなくなった終盤には、あわやのところまで中嶋を追いつめた。ポイント差以上に千葉も力を示した試合だった。

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「自分のクオリティがもう一歩足りなかったというところで、やってきたことはできたとは言わないまでも、ある程度は表現できたので。しっかり反省して先に進める試合だったのかな、と思います」

 長く暗闇の中でもがいてきた分、これまでになく「モチベーション高く、充実感のある練習ができた」ことも「もう一度、タイトルマッチの舞台に立ちたい」と思いを強くした理由のひとつだった。今回も「リスクのある相手のほうが、練習で自分を磨いていける」と意欲的に取り組んできた。高山との再起戦に向けた言葉に静かな自信がにじんだ。

「8ラウンドを通して、僕が完全にコントロールする試合が理想です。そのなかで、相手を見て、状況を見て、自分主体で展開を動かしていく。自分のボクシングをして、相手を上回れば、それでいいと思いますし、絶対に勝ち切るという気持ちを見せられれば」


 元日本スーパーフェザー級、元東洋太平洋フェザー級、ライト級王者の渡辺雄二さんを伯父に持つ高山。小学生のとき、1990年代を彩ったKOパンチャーが相手を「ぶっ倒していく」雄姿をYouTubeで見て、憧れを抱いたサウスポーは2019年2月のプロ転向以来、4戦全KO勝ちを続ける。が、この2年8ヵ月は決して平坦ではなかった。

高山が「思い入れの深い、熱い試合でした」と振り返るのは2019年10月、敵地神戸に乗り込んだ3戦目。前年の全日本新人王で、技巧とスピードが持ち味のサウスポー・大橋哲朗(真正)との無敗同士の日本ユース・スーパーフライ級王座決定戦は、高山が初回に倒し、大橋が2回に倒し返す熱戦となる。大橋のポイントリードで迎えた最終8ラウンド、懸命に追い上げる高山が2度倒し、劇的な逆転KO勝ちを収めた。

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 さまざまな経験が詰まった試合だった。ボクシングキャリアを通じ、倒されたダウンは初めて。プロ初の遠征、初めてのメインイベント、タイトルマッチ、8ラウンドの戦い。「プロの洗礼を浴びた試合」であり、勝ち切ったことで「自信になった試合」でもあった。だが、試練はここからだった。

 多くのボクサーと同じくコロナ禍に翻弄された。試合が決まっては中止になり、を2度繰り返した。そして3度目。ハードな練習を重ね、体重をつくりあげ、いよいよと気持ちを高ぶらせていた矢先、直前で中止を告げられ、心が折れた。電話越しに「ボクシングを辞めます」と泣きながら訴えてきたと、小口忠寛トレーナーは当時を振り返った。

高山を支えたのは周囲の励ましだった。「ボクシングは長くできない。ちょっと休んで、後悔のない選択をしたほうがいい」。そんな言葉の一つひとつが心に響いた。高校、大学の先輩であり、高校入学前のワタナベジム入門時から指導を仰ぐ小口トレーナーも「お前がまたやる気になれば、とことん付き合うから」と声をかけ、見守ってくれたという。

 かつての仲間の姿にも奮い立たされた。高山と同じく昨年は1試合もできなかった高校の同級生で、東洋大出身の福井勝也(帝拳)が今年3月、2018年の全日本新人王に完勝した試合を会場で見届け、「カッちゃんも強くなってるし、頑張ってるな」と刺激を受けた。東京オリンピックのミドル級代表・森脇唯人とは高校、大学の同期。「選ばれし者が立てる場所」を勝ち取り、奮闘する姿に「自分も負けてられねえ」と鼓舞された。

 今年7月、実に1年9ヵ月ぶりとなる試合が決まった。「嬉しさもあり、怖さもあった」が、リングに上がったときには「あ、この感覚だ」と腹が決まったという。小、中学生の大会で活躍し、昨年の東日本新人王決勝まで進出した19歳のサウスポー、富岡浩介(REBOOT.IBA)を3度倒して初回TKO勝ち。鮮烈に復帰を飾った。

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「なんでボクシングをやってるんだろう、と考えてしまったり、去年は気持ちの浮き沈みが激しかったんですけど、あらためて、自分ひとりでやってるんじゃない、周りがいて、自分がいるんだ、と強く思わされた年になりました。気持ちの整理ができて、また新しい自分になれたのかな、と思います」

 千葉との話があったときも迷いはなかった。「練習のいつもどおりを出せれば、勝てると思ってますし、そのいつもどおりをいかに最大限に出しきれるか、がテーマ」という高山に臆したところはない。

「見てもらえれば、高山涼深というボクサーの魅力が分かると思うので、とりあえず試合を見てください。必ず倒して勝ちますので」

「ボクシングをやりきった、と言うためにはベルトが必要」と千葉。「伯父を超えないと、自分はスタートラインに立てない」と高山。この一戦の先に見据える明日がある。

 千葉が小学4年のとき、母ときょうだい4人と一緒に移り住んだ沖縄で、ボクシング部のある那覇高校を選び、ボクシンググローブを手にしたのは「どんな理由であれ、自分はすべて中途半端で、何ひとつやりきったものがなかったというコンプレックスがあった」からだったという。

 だが、高校2年の途中で退部。学校も退学してしまう。「母親と衝突して、ボクシングに集中できる状況ではなくなった」ことが原因で、ずっと千葉が悩まされ続けてきた親子関係の問題だった。それでも「誰かのせいにして、中途半端で終わらせたくはなかった」と固い決心は揺るがなかった。アルバイトでお金を貯め、「ボクシングをやりきるために」独り立ちした。

プロデビューから約6年、千葉は届かなかったベルトに懸ける覚悟を語った。

「僕のなかで、チャンピオン以外は、ボクシングをやってました、ぐらいの感覚で、日本ランカーだろうと、それ以外は一緒のくくり。やりきった証をしっかり残すためにやっているので、ベルトに対する気持ちは強いものがあります」

 高山がボクシングを始めたのは中学2年の秋。古巣の斉田ジムでトレーナーをしていた伯父を訪ね、基礎を教え込まれた。自宅には現役時代の渡辺雄二の写真が飾られ、活躍を伝える記事が掲載された雑誌や書籍が並び、伯父は「高山家のヒーロー」だったという。

 ただし、プロデビューしたときから「やるからには、伯父は超えなきゃいけない存在」と言い続ける。渡辺さんは世界タイトルに2度挑戦し、望みを果たせないまま引退した。目指すところはひとつしかない。

「渡辺雄二の甥じゃなくて、高山涼深の伯父が渡辺雄二になるように」

 伯父を超えることが自分のスタート――。その言葉に込めた思いを高山はこう語った。

 勝者はひとり。それぞれの明日を懸けたゴングが鳴る。

<船橋真二郎>

●ライブ配信情報
 ▷独占ライブ配信:10月30日(土)17時45分~試合終了時刻まで
 ▷アーカイブ期間:11月2日(火)23時59分まで
 ▷視 聴 料 金:3,000円(税込)一般チケット
 ▷特 別 解 説:京口 紘人 (WBA世界ライトフライ級王者)
          赤穂 亮 (元東洋太平洋・日本王者) 
 ▶販売サイトはこちら

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