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相手の変容につながるフィードバック

わたしが所属している日本プロフェッショナル講師協会™(https://j-pia.net/)には、会員向けの様々なサブコミュニティがあります。研修講師は一人で活動していることが多いので、そこで会員同士が交流をしたり、仕事に役立つ情報交換を行っています。
先日、会員さんから「研修でフィードバックをどのように行っていますか?」というご質問があったので、自分なりに行ってきたことを投稿しました。このような質問は、自分自身のやり方を振り返るよい機会になっています。フィードバックは具体的には「褒める、認める」「注意、助言する」などですが、どのようなフィードバックであっても、相手の変容(気持ち、考え方、行動)に繋がっていることが重要です。

1.どのようなフィードバックを行っているか?

他の会員の方も同じご意見でしたが、フィードバックは、相手に伝わるように「行動的事実」「客観的事実」に対して具体的なフィードバックを行っています。「とてもよかった」「もっとこうした方が良い」という漠然とした内容ではなく

「~ついて~という行動を取っていたのは、適切な対処だった」
「~について~と言葉をかけていたことで、相手の表情に安心感が感じられた」のような表現です。
客観的な事実に対しての具体的な言動をフィードバックするのは、今後の仕事や対人関係において、どのような行動や言葉をかけていけばよいかを提示することにつながるからです。
単に、良いところをほめる、良くないところを指摘しても、それが研修の中だけに留まってしまうと、「よい研修だった」に留まってしまいます。
この具体的な指摘が、たくさんあったかどうか、受講者本人がそれをしっかり受け止めたかどうかは、最後の研修修了レポートに反映されているかを確認すればわかります。

フィードバックの種類は2種類あります。1つは、受講者への個別フィードバック、もうひとつは人事や事務局へのフィードバックです。
どちらも、研修のリピート率や、別階層の研修への発展につながります。効果を数値化することも大切ですが、相手の心の針を動かすようなフィードバックであることが最も重要だと考えています。

2.個別のフィードバックについて

「フィードバックは講師が行うもの」「講師の力量はフィードバック力で決まる」ということを聞きます。しかし、私はフィードバックは、研修に参加した受講者も行うものだと考えています。講師からフィードバックをもらい、自分自身もフィードバック力をつけていくことが大切です。
管理職や先輩社員にとっては、フィードバックは指導を行う上で欠かせないスキルです。また、私だけでな気がつかない点を皆で補完し合って、バランスの良いフィードバックがし合えると、得るものが増えます。

受講者が自分自身の取り組みに対してフィードバック出来るようにすること、一緒に受講するメンバーがお互いにフィードバックが出来るような場面を作りながら、最終的に受講者が気づいていない今後の成長や発展に繋がる内容を講師が見つけて、伝えるようにしています。それによって自己理解が深まり、モチベーションが深まること間違いなしです。

受講者自身が、適切なフィードバックを行えるようにするためには、
①研修の初めに、研修を受講する自分自身の目的や課題と向き合い整理する時間を作る。
②整理した内容をお互いが共有し合えるよう話し合う。(お互いの課題を共有する)
①②によって、何をフィードバックすればよいかが絞りこまれていきます。

また、事例研究の内容をロールプレイングで発表する場合は、ロールプレイングを評価するためのチェックリスト(行動や言葉が具体的に表されているもの)を用意し、その内容に基づいて、フィードバックを行っています。
「何に対して、どうだったか?」ということを伝え合うことで、フィードバックのしかたを身につけることができます。

3.人事の方や事務局の方へのフィードバックについて

私が担当させていただいている研修は、企業様との直接取引ばかりなので、研修の目的やゴール、テーマや進め方のご要望などを事前にしっかり打ち合せて研修を行っています。
ですから、フィードバックはその成果がどうだったかを具体的にお伝えしていることになります。
特に喜んでいただいていることは下記のような内容です。

①一人ひとりが、どのような取り組みを行っているときに、積極的だったかをお伝えしている。
(普段、仕事をしているときに見せない様子であれば、「○○は、そういうことも出来るんですね。意外でした!それがわかってよかったです!」と、喜んでいただくことが多いです。)

②「●●さんに指示を出されるときは、~のような伝え方をすると伝わりやすくなります」などのように、個別のフィードバックよりも、組織の中の人間関係や仕事が円滑に進むために必要な内容を具体的にお伝えするようにしています。
研修の中では、具体的な指示を出し、その指示に基づいて適切な対応を行ったかどうかをフィードバックしています。しかし、日常の仕事の中で、上司がそれを実践していないと、せっかく出来たことが仕事に活かせません。
特に、若手の研修を担当すると、研修の中で皆が、イキイキと積極的に取り組んでたくさんの気づきを得ています。普段どれだけ指示があいまいなのか、受講生のモチベーションを刺激する機会が少ないかが伺えます。
研修で出来たことを定着させるためには、受講生と関わりのある方への具体的な改善提案は効果的です。そして、それがきっかけになり管理職研修に発展する確率が上がっていきます。

③研修は、受講者の変容を促すための場でもあり、研修によって組織や仕事、コミュニケーションが円滑化、活性化する場でもあることを念頭に、フィードバックを行うと、定例研修、新たなテーマでの研修、別階層の研修に発展しています。
②でも、説明しましたが、単なるフィードバックを行うことが目的ではありません。フィードバックの機会は「営業のチャンス」と捉えることです。
「もっとこういうことをすれば、仕事も人間関係もスムーズにいきます!」と伝えると、「では次はそうしましょう!」と事務局の方は関心を持って次の機会を準備して下さっているのです。

きっかけは、スポット的なマナー研修から始まり、気が付いたらそれが、定例研修になり、階層別研修に発展し、他のお客様をご紹介していただくことにつながった。というパターンで28年が経ちました。私はホームページを持たず営業活動を一切行わず、研修会社も通さずお客様との直接取引のみで講師の仕事を続けてきました。これもひとえに、お仕事をいただいている
お客様のおかげでです。

4.効果の数値化について

研修効果の数値化については、特に重要視していません。
受講アンケートの満足度や習得度を5段階に分けて評価してもらい、5が何パーセントあったか?を算出するのは数値化としてはとてもわかりやすいです。しかし、それはあくまで主観的なものであり客観的な評価とは言い難いと考えています。それよりも、具体的な変容につながる感想が、受講者の何割から引き出せたか?のほうが説得力があります。
「講義が分かりやすかった」「講師が丁寧だった」「話が聞き取りやすかった」というのは、提供する側としては当たり前のことです。研修を実施する際に、どの地点から、どの地点に導くことができるかを、講師が明確にし、進め方やフィードバックにより導いていくかをまず考えることが数値化よりも重要だと考えています。

研修ではありませんが、店舗改善指導においては、成果を数値化することは最も重要だと考えています。
15年前から店舗改善指導を担当させていただいている地元銀行さんの場合、改善指導によって以下のような成果につながりました。

・ワースト2(全134店舗)だった営業店を、改善指導により半年後にベスト2に引き上げた
・日経ベヴェリタス紙が毎年行っている全国リテール力ランキング調査(全117行)の店頭窓口接客部門において、前年47位から2位に引き上げた

成果に直結した要因は、やはりフィードバックでした。
フィードバックはテクニック的なものではなく、変容に直結しているかどうかが大切ということです。

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