21.高校入学そして…
「ちーちゃん、去年の今頃大変だったんだよね~~」
新聞に、選抜二次試験の応募状況が掲載されていたのを見ながら、次女にそう声をかけました。
「そうよー。悲惨な毎日だったよ。でも、今年からウチの学校は、選抜三次試験はもちろん、選抜二次試験も募集もしないんだって。一次だけの応募になったらしいよ」
そう言われて新聞を見ると、確かに新聞には学校の名前が載っていませんでした。
「ほんとじゃ~。そりゃ多分前例が悪かったんじゃね」
「え~~~~ひどい!!!ウチはウチなりにがんばっとるよ!!」
と言う次女ですが、「この高校に入ってよかった」と言いながら、毎日楽しく学校に通っています。
入学したての頃は、たった一人だけ選抜三次試験に合格した『外進生』(ス中学入試で入った生徒を『内進生』と呼んでいる変な学校です)だったので、先生や内進生が、次女のことを、入れ替わり立ち替わり見に来たそうです。
しかも、それまでは、内進生と外進生はクラス分けされていて、内進生が1組から3組、外進生が4組という編成だったのだが、次女が入学した年から、混合クラスで、成績別に1組から4組に分けられることになりました。そして次女は2組でした。
「見せもんじゃねぇっつーの!」と言いながらも、プレッシャーに負けず頑張っています。
本数が少ないバスを2つ乗り継いで通うので、朝5時半に起きて、(私も5時半に起こされて弁当を作らされ)念入りに身だしなみを整え、6時43分には家を出る。
そんなに早く行く必要はないのですが、早く学校について始業時間まで勉強しているそうです。
試験前には4時半起きで、私もお弁当を作るので付き合いで起こされます。次女の高校入学と同時に、私の寝不足はさらにエスカレートしましたが、いつの間にか私も早起きが習慣になりました。
真面目にコツコツ勉強していますが、今でも英語と社会のことは私によく聞いてきます。長女もですが、教科書の半分近くは私が日本語訳したかも…。
次女は相変わらず「わからん!わからん!」ってボヤいてるけど、受験のときに勉強のしかたを改善したことが、今、役に立っているようです。
「将来のことなんて、何も考えてないし、何も浮かばん!」といつも言っていたのですが、高校入学と同時に茶道部に入り、10月からはシツコク勧誘されていた美術部にも入り、今、油絵に夢中になっています。
先日、県総合体育大会のシンボルマークのコンテストがあって、特賞を取り、大会パンフレットの表紙を飾りました。
想像力がないと悩んでいたけど、次女なりに努力して少しずつ世界を広げているように見えます。
「わたし、市立大学を受けてみようかな?もうちょっと絵を頑張ってみたい」
少し前に、そんなことを話していました。
それは初めて、次女が将来のこと語ってくれた瞬間でした。
「やってみたらいいんじゃない?心配しなくても、好きなことに夢中になったら道が拓けるって言ったでしょ?」
「そうだねーー」
と、話してやりました。
そして、つい最近、
「私ね、美術の先生になってみようかな?と思うんだけど…でもね、人前で話すのが苦手なのに、無理かな~とも思ってるんよ。母さんはどう思う?」
「美術の先生か~。いいんじゃないの?人前で話すのが苦手なのは大丈夫よ。母さんも苦手だから…」
「うそーーー。今の仕事は、たくさんの人の前で話すことなんじゃないの?」
「そうよ。人前で話すのも、何かを説明するのも嫌いだったし苦手だったよ。でもね、苦手だから仕事にしたのよ。苦手なことにきちんと向き合って、少しずつ取り組んでいったら、少しはうまくなるんじゃないかと思ってね!
出来ないことがあるって、イヤでしょ?でも、出来ないことができるようになると嬉しいよね。得意なことだけが仕事になるんじゃなく、苦手なことも仕事にできるもんなのよ」
「そうだったんだーー。私と母さんは似てるんだね~。そうなんだ~」
少しの時間でしたが、二人でそんなことを話しました。
次女は、この高校に入ったことで、少しずつ自分の進みたい方向が見えてきているようです。
そして、想像力が乏しいといいながら、自分で何かを考えようとすること、自分で何かを創り出そうとすることに一生懸命取り組んでいます。
それは、美術だけに留まっていません。勉強についても、日常生活についても、すべてのことにおいて今までの次女から、少しずつ進化し、成長していっているように感じています。
高校受験は大変でしたが、試験勉強以上に、親子で得たものが多い貴重な経験ができました。そして、次女は就職した現在も、自分らしく仕事とプライベートをエンジョイしています。 (END)
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