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20. 3度目の合否結果

いよいよ選抜三次試験の合否発表の日。私は朝早くから夕方まで、新入社員研修でした。昨年の長女のときも、島根での宿泊研修が入っていて、義母に代わりに見に行ってもらいました。娘と一緒に合否結果を見るのはドキドキしますが、電話で連絡を受けるのはもっとドキドキします。

「私がついていくよ!」
今回は、すでに春休みに入っていた長女が一緒に合否結果を見に行ってくれることになりました。
親として大事な瞬間に、二度も立ち上えないことを本当に申し訳なく思いましたが、仕事を抜け出すわけにはいきません。
「本当にごめんね!メールでもいいから、わかったらすぐに連絡を入れてね」と長女に頼んで、私は一足先に仕事に出かけました。次女は特別に緊張したり不安な感じではなく、いつもの調子で私を見送ってくれました。

研修は9時から5時までで、12時から1時間お昼休憩になっていました。
合否発表は12時に発表される予定でした。

前年、長女の合否発表は2時からでしたが、義母も長女も携帯電話を持っていなかったので、連絡が取れませんでした。ですから、研修中でも、合否発表の時間になった頃からドキドキし始めて、4時に研修が終わると、会場を飛び出して家に電話をかけました。
「どうだった?」と聞いたあと、長女から、
「合格したよ」という返事があるまでのわずか2,3秒が、10分にも20分にも長く感じられ、心臓がバクバクして飛び出しそうだったのを覚えています。

今回は、時間になったらすぐにメールで結果が飛び込んでくることになっていました。
マナーモードにしている携帯電話が、ブルブルッと鳴ってから画面を開いて結果を見るまで、やっぱり心臓がバクバクだろうし、手も震えて操作ができないんじゃないかなと思いました。

9時からの研修はなんとか集中して頑張れました。
そして、12時になりました。

「食事をこちらでどうぞ」と人事部長に促されたのですが、
「いえ、ちょっと電話がかかってくるので・・・」と断って会場を出て、廊下の隅で連絡が入るのを待ちました。

12時1分、2分、3分…。待ち受け画面の時計の表示が進むのに、一向に電話がかかってきません。

”おかしいなぁ~。早めに結果を見に行ってるはずなのに…。”

さらに時間は5分、6分、7分…と進んでいきました。
途中で人事部長が、「お食事はどうされますか?」と聞きに来てくださったのですが、「すみません。もう少し待っていただいてもよろしいですか
」と断って、さらに電話がかかってくるのを待ちました。

12時10分になっても、15分になっても電話はかかりませんでした。

”やっぱりダメで、長女もメールを入れる気力すらないのか?”
と心配になりました。
12時20分。さすがに待てなくなってこちらから電話を入れようと思った瞬間、電話がかかってきました。
着信表示はもちろん長女からです。そしてメールが届きました。

私が予想していたとおり、早く開こうと思うのですが、手が震えてなかなか操作ができませんでした。
心臓は、服の上からでもがわかるのではないかと思うほど、バクバクしていました。

”落ち着け!!!”
と、何度も言い聞かせてメールを開いてみると、何も書いてありません。
おかしいなと思ってスクロールすると、ネコがセンスを持って踊ってるようなイラストが表れました。

そして、

「合格だ、合格だ、やったーやったーめでたいな~」というメッセージ。

連絡が遅かったのは、このイラストを打っていたからだったのです。

”ったくもう、人騒がせな~~~”

急に力が抜けて、その場にへたり込みそうになりましたが、喜びがじわじわ広がっていきました。そして私から電話をかけました。

「もしもし!!合格したよーーーー、ちーちゃんに代わるね!」
長女のハイテンションな声に続いて、

「もしもし」と照れくさそうな、でもとっても嬉しそうな次女の声が聞こえてきました。

「おめでとう!!やったね~。今までほんとによく頑張ったね!これで、安心して入学の準備に入れるね。ほんとうにおめでとう!帰ってゆっくり休みなさい」

「うん。母さん、ありがとう。今まで本当にありがとう!」

短い会話だったけど、話しながら1月から今日までのことが早送りのように頭の中を駆け巡っていました。

家に帰って結果を詳しく聞いたところ、三次試験を受験した5人の中で、合格したのは次女一人だけだったようでした。

「ある意味、これが一番競争率が高かったわけじゃん!」
とみんなで笑いながら話しましたが、頑張って頑張って、その努力が認められて、選んでもらえたのかな?と思うと、喜びがまた膨らんでいきました。

こうして、長かった次女の高校受験は終わりました。

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