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エピソード9 出版コンテストにチャレンジ

1.何かの形にまとめたい!

「青春グラフィティ」の連載を全部書き終えたとき、大きな仕事をひとつやり終えたような爽快感と達成感がありました。
それと同時に、ぽっかり穴が空いたような気持にもなりました。

書き始めた当初は、この連載がこんな方向に展開するなんてことも、ここまで続なんてことも思ってもいませんでしたが、読んでくださった方からの、感想が次の展開のヒントになったような気がします。そう考えると、これはわたしだけのものじゃなく、みんなで考えた作品ってことになります。(登場人物の名前は、私以外は仮名ですが、ストーリィはいちおう、ノンフィクションです)

「青春グラフィティ」を書く以前から、いろんな形で文章を書いてきて教えられたのは、文章は「書いて終わり」ではなく、「形になってからが始まり」だということでした。
連載は終ったけれど、時間に追われて「とりあえず書いた」という箇所もあったし、誤字や脱字もたくさんあるし、読んでくださる人のために、これからは加筆・修正しながら、もっと読みやすい内容にしなければいけないなと思っていました。

でも、地道に手直しをしていくだけというのは、何もないところから何かを生み出すことに比べると、単調でちっとも面白くありません。
その作業が大事なことだとわかっていても、なかなか前には進みませんした。

そんなとき、ある公募専門雑誌の広告が目にとまりました。

「あなたの感動を本にしてみませんか?」

2.久々に達成感が蘇った


それは、東京にある出版社が掲載した作品募集の広告でした。年2回、コンテストを開催していて、今回はちょうど区切りの20回目の開催でした。

「大賞には賞金100万円と単行本化・賞金総額670万円」

その金額の大きさに惹かれました。本を出版したいと思う人なら、このキャッチコピーにみんな惹かれるだろうと思いました。

“大賞は無理だとしても、プロの方に私の作品を審査してもらえるチャンスだと考えたら、チャレンジする価値はあるんじゃないかな?”

私は雑誌からその広告の部分を切りとり、応募することを決めました。
応募の締め切りは、3月25日。締め切りまで1ヶ月あまりしかありませんでした。

“間に合うかな?いや、絶対間に合わせてみよう!”

そして、まず始めたのが連載の読み直しでした。自分の書いた作品を最初から最後まで読み直すなんて、実は初めてのことでした。これが、大変な作業でした。(泣)
話の流れがきちんと整っているか、表現がわかりやすいかに注意して読む必要があるので、同じ箇所を何度も読み返さなければいけなせん。流れを追うためには、ちょっとずつ細切れではわからないので、ある程度まとまった時間に一気に読むことにしました。
日中は仕事でずっと外出しているので、作業はどうしても夜~深夜になってしまいました。ぐったり疲れ果てているのに、コーヒーを何杯も飲みながら睡魔と闘って1週間かけて作業を終えました。

大変な作業だったのですが、私自身のことを書いたのに、読んでいてとっても励まされました。

”昔のわたしのほうが、もっとパワーがあったんだ!今のわたしも、負けちゃいられないな!”

そして、いろんな人から感想や励ましのメッセージをいただいて、この連載が好きだといってくれる人の存在がありました。そのためにも こんな中途半端な内容や表現じゃダメだな!と思いました。

次に行なった作業は、作品のテキスト化です。ものすごいボリュームなので、原稿用紙に手書きなんてしていたら、1ヶ月どころか、1年かかっても作業は終りません。ワードにコピーペーストしながら、加筆・修正を行なっていくのが一番手っ取り早い方法です。

しかし、ココでひとつ大きな問題が…!それは、「わたしはワードが大の苦手!」ということでした。パソコンを購入して3年以上たち、最近やっと必要に迫られて 使えるようになってきたものの、まだまだ素人の域から脱出していませんでした。特に、ワードを改行したときが、恐怖なのです。

「げっ!なんでこんなところにいっちゃうのよ!?(怒)」

文章を書く上で大切な改行、行揃えが私の意に反して全く思い通りに出来っません。

「ちっ!どうして、私の言うことを聞いてくれないんだよぉ~~~~(怒)!!」

最初は、内容の加筆・修正より、ワード操作との格闘でした。一向に進まない作業、どんどん溜まるストレス。何度机を叩いたことか!!(さすがにマウスを叩きつけたりはしなかった。スペアを買ってなかったし...ってあったらたたきつけるんかい!)

時間はどんどん過ぎていきます。仕事も忙しくなり、毎日コツコツ作業できる状態ではなくなってきました。

“時間が足りない!どうしよう・・・。仕方ない、この際、操作上のミスは勘弁してもらおう。とにかく、表現だけは雑にならないようにしなきゃ!”

操作上の問題より、もっとやらなければいけないことがありました。早く更新しようと思って雑に書いていたところを、もう少し丁寧にわかりやすく書く作業です。もう少し書きたかったけれど、時間がなくてかけなかった新たな事実。連載が終って、思い出したこと…。

締め切り1週間前は、毎晩かなり遅くまでこの作業を行なっていました。 “自分の作品を、きちんと評価してもらうためには、これが最低限のマナーだもんね!”

大変でしたが、「応募」という新たに生まれた大きな目標に向かって パワーがどんどんアップしていくようでした。

そして、3月24日_ついに書類化完了!そのボリュームは、A4の用紙で191ページ。1枚の字数が40行×40桁=1600字なので、原稿用紙に換算するとざっと764ページ! “チリも積もれば・・・っていうけど、2年がかりとはいっても、よくこれだけ書けたなぁ~~”

と、ビックリしました。
久々の達成感、爽快感!足取りも軽やかに、郵便局へ行き原稿を出しました。

なんとしても賞を取りたいとか、単行本化したいなんて、どうでもよくなっていました。 
私は私のためこの作品をひとつのカタチに完成させることできた。それで、いいんじゃないかな?あとは、審査員の方の評価に任せよう!

3.審査の経過

作品を応募して1ヶ月近くたった4月21日。出版社から1通の薄っぺらな封筒が届きました。

ドキドキしながらハサミで開封すると

「貴殿の作品は第一次審査を通過しましたので ここにお知らせいたします。これからさらに審査を進めていき、審査結果は5月下旬頃 ご通知する予定です」
"おおっつ!!やった~~~。一次審査は通過したんだ!!”

それだけで めちゃくちゃ嬉しかったです。あんなにたくさん書いたんだから、あっさりボツにはなりたくない!大変な作業を、認めてもらえたんだなって思いました。

そして、その1週間後の4月28日、また薄っぺらな封筒が届きました。
あまりにも早かった次の結果報告。私は当然、 “え゛??もうあっさり結果が出ちゃったの?やっぱりダメだったのね~”って思ったのですが、

「先日お知らせした 『第一次審査』に続き、『第二次審査』が行なわれました。その結果、貴殿の作品は『第2次審査』を通過しましたので、ここにお知らせいたします。
なお、これからさらに審査を進めていき、審査結果は6月中旬にご通知する予定です」

意外にも、一次、二次を通過して、最終審査に残ったのです。

説明が遅くなりましたが、このコンテストは、フィクション部門(小説・詩・児童文学・童話・SF・ミステリー・戯曲・短編集など)、ノンフィクション部門(研究論文・エッセイ・旅行記・体験記・ドキュメンタリー・評論・実用書など)、ビジュアル部門(絵本・写真集・デザイン・画集・マンガなど)のなかから、「本にしたい感動」を選ぶというもので、優秀作品は、賞金とともに出版化が約束されていました。
昨年の実績は、応募総数2734作品(フィクション部門1669、ノンフィクション部門660、ビジュアル部門405)で受賞&単行本化されたのは3作品。 

審査は、第1次審査、第2次審査、最終選考とあり、最終選考まで残るのは、各部門約20作品くらい。

あの作品を読んでもらった上に、出版化される作品を選ぶ最後のステージに残ったのです。それだけで、天にも昇る気持ちでした。


4.  そして6月_結果は・・



「すごいね~~。そりゃいけるんじゃないの?そんな感じするよ!」

最終審査に残ったことがとても嬉しくて、「青春グラフィティ」を読んでくれている友人に報告をしたら、みんなそう言って、喜んでくれました。

「そうだといいね。でも、賞を取るって大変なことだと思うから、あんまり期待しないでね!」

「本になったらいいね。あれは本になると思うよ。是非本にしようよ!」

審査の通過だけではなく、「青春グラフィティ」をたくさんの友人が“いい作品だよ”って改めて言ってくれたことも、とっても嬉しかったです。

最終審査の結果が出るまでに1ヵ月半かかりました。待ってる間、毎日ポストをドキドキしながら覗いていました。

そして、6月16日_ついに結果が届きました。

それは、薄っぺらい封筒ではなく、A4判の大きな封筒でした。さすがに封を開けるとき手が震えました。ハサミが上手く使えないほどで、心臓もバクバクしていました。

中には、ケースにはいった書類の束があり、まず、各賞の受賞者のリストがありました。その中に、自分の名前があるかどうか確認しました。そして、結果は・・・

残念ながらどの賞にも私の名前はありませんでした。

急に、身体から力が全部抜けて、ヘナヘナと座り込んでしまいました。

『大賞1席100万円と出版化』という宣伝にひかれて応募したコンテスト。いつか、自分の本を出版したいというのは、私の夢でもありました。
100万円でなくても、7作品が選ばれて出版化のチャンスが与えられるのです。あっさりと、1次選考で落ちていたらあきらめはつきまししたが、1次、2次選考と通過して最終審査まで残れば、「もしかして?」と思うのは当然のこと。
でも、昨今は、著名人の本でさえ売れないのです。出版化の条件が、出版社が全額負担してまで出版したいと思わせるようなユニークさ、盛り上がり、面白さが絶対に必要だということは はわかっていました。そういう点でから見て、私の作品は受賞は無理だろうなと、心のどこかで思っていました。

しばらくは、他の書類を読む気になれませんでしたが、少し落ちついてきた頃に他の書類にも目を通してみました。
受賞した作品の内容を見て、納得しました!私が審査員でも、同じように考えて選んだろうなと思いました。

今回の応募総数は、前回の2734作品をはるかに上回る、5329作品。その数の多さにまず驚きました。その中で最終選考まで残ったのだから、本望じゃないか!そして何よりも、結果よりも過程が大事なんだから・・・。

コンテストに応募するために、もう一度あの作品を読み返し、加筆修正作業を行ったこと。
文章って、読めば読むほど表現の工夫が生まれてきます。
以前、新聞の連載記事を書いているときは、書いた内容を10回くらい見直し、何度も手直をして送っていました。  
そのときに比べると、まだまだ表現が甘いな~と思うところがいっぱいありました。

私の目的は、自分の文章表現を客観的に評価してもらいたいということも考えていました。
お金を出せば、誰でも本を出版できる時代です。本当に面白いか、文章がわかりやすく読みやすいかは二の次だったりします。
せっかく読んでもらうのなら、何か心に響くものを読み手に届けたいじゃないですか?
読みやすく工夫することや言葉の選び方は必要だと思うのです。
コンテストに応募するということは、作品と作品を通じた自分の表現力が評価されるということなんですよね?

そういう意味では、最終選考まで残り審査員の皆さんに、あの作品を読んでもらえたわけです。
そして、審査員の方からこんなコメントまでいただくことができました。

一人の少女が自立した大人の女性にいたるまでの日々が、表題にある『青春』の香りいっぱいに描かれた作品です。しかもその日常には、お気に入りのシンガーのBGMがいつも流れ、作者の歩みにエールを送っているなんて、いかにもモダンな世代であることを感じさせます。きっと感性溢れる女性だから、こんな爽やかな現実を手に入れられたのでしょうね。 

文体に心地よいリズムがあり、活字を読んでいることを実感させない文章力も作者の持つ大きな力です。すでに多くのファンをインターネットを通じて獲得されているようですが、勢いのない昨今の世情に元気を与えてくれるチアリーダーとして、期待できる人材の登場を予感させる作品でした」 

このコメントとともに、「出版化奨励作」という認定書も添えられていました。

「青春グラフィティ」をいつも読んでくれていた友人だけでなく、全然会ったこともない人にも、私の表現したかったことが伝わっていました。そして、私自身のキャラクターをわかってもらえていました。そして、そして、私の文章について褒めてもらえたことが何よりもうれしかったです。
これだけでも、頑張って応募した価値がありました。

「青春グラフィティ」は、私が私自身の青春時代を駆け抜けた証です。何度壁にぶつかっても、這い上がりながら、自分が大切にしたいことを見つけた軌跡です。これからも、私自身が読者になって、落ち込んだ時、方向性を見失いそうになった時、そのヒントを見つけるために読み返していこうと思っています。

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