13.きっかけ
写真を撮らなきゃいけないのに、肝心のカメラが壊れてしまった!
すぐ、修理に出したけれど、戻ってくるまでに3週間かかると言われてしまった!
まだ、2,3本しか撮り終えていない!
せっかくやる気が出てきたのに、どうすりゃいいんだ!
憂鬱な気分で部室に行き、ひとつ上の先輩に相談してみた。そこへ背後から、
「僕のでよかったら、使ってみる?」
と声をかけられた。振り向くと、あの部長だった。
わたしは、この部長が大の苦手だった。いつも不機嫌そうで、偉そうで、
いつも部室に居て(ココしか行くところがないのか?というくらい)、
牢名主みたいな奴だったから…。
「僕らは課題はないし、使ってへんからいいよ」
と言いながら、いきなりカメラを差し出された。
“人の好き嫌いなんて、言ってられないよなぁ~~”と思いながら、
「すみません。じゃあ、お借りします」
と言ってそのカメラを受け取った。
「大事に使ってや。君、雑なところがあるみたいやし・・・。おいキムラ、使い方教えてやって・・・」
ぶっきらぼうな上に失礼な人である。
“そりゃ、雑だけど、なんであんたに、そんなこと言われなきゃいけないのよ。こんな人から、カメラ借りるのは嫌だなぁ”
と思ったが、背に腹はかえられない。
この部長から借りたカメラは、ミノルタXG-Eという、とっても軽くて使いやすいカメラだった。
キムラさんというのは、2年生の部員である。
顔はゾンビみたいな顔をしてるけど、入部初日から、わたしのことを何かと気にかけてくれていた。
「けいこっていうんか。じゃ、おけいちゃんやな」って呼び方まで決めてくれて、フィルムの扱い方や現像、焼き付けの仕方を教えてくれている親切な先輩だった。
でも、部長と話したのは、それきり。
存在自体がうっとおしいのに、借りまで作ったもんだから、ますます会うのが負担になった。
だからそれからは、合宿ぎりぎりまで部室には顔を出さず、授業を終えるとカメラを持って京都の街へ繰り出し、写真を撮り歩いた。
休日には京都の名所旧跡を散策した。おかげで、1ヶ月の間に、市内の観光名所はくまなく見て回れた。
フィルムも、ノルマだった10本をはるかに越えて、20本近く撮っていた。
そして合宿の3日前くらいから、集中して現像・焼き付けの作業を行い、自分なりに納得した写真を10枚選んで引き伸ばし合宿の準備を終えた。
その間に、写真部のことがだんだんわかってきた。
1年生の部員は私を含めて9名。
2年~3年生は在籍だけして全く活動していない部員もいるので、何人いるのかよくわからない。
4年生は10名。
女子学生は、わたしのほかに4年生のカナちゃんという先輩がいるらしい。彼女もほとんど活動していないので、部室には顔を出していなかった。
「合宿には、みんな来るからわかるよ。おけいちゃんのお披露目やな!」
キムラさんにそう言われながら、いよいよ合宿当日を迎えた。
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