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エピソード5 「散歩道」

「散歩道」を 初めて聴いたのは、もう24年も前になります。「路地裏ライブレポート5」にも書いたのですが、その当時は、まだこのタイトルもついていませんでした。


「僕の友達が、つい先日女の子を妊娠させましてね・・・」そんなショッキングなMCで、それまで和やかだったチューニングの時間が、一瞬ピーンと張りつめた雰囲気に変わったのを覚えています。

「男の子と女の子が、一緒に棲んでいたら、そういうこともありえるだろうなっていうことで、二人にこんな曲を作ってあげたんです」そういって、アコギでこのバラードを弾きはじめました。

ライブではどちらかというと、「路地裏の少年」や「遠くへ」(当時は、とってもテンポの速い曲だったのです)、「HIGH SCHOOL ROCK N' ROLL」のような、曲を好んで歌っていたし、スローテンポの曲でも、「生まれたところを遠く離れて」のように、自分の生き様について歌うことが多い中で、この、ちょっぴり悲しい恋人たちの曲は、私にはとても新鮮でした。

失恋の経験はありましたが、人を愛することの意味なんて全くわからない私にとって、その詞の中に込められている思いが、どんなに辛くて悲しいことか想像はつきませんでした。
でも、その優しいメロディにひかれて、録音したテープを何度も再生してコードを拾い、私自身もよく弾き語りしていました。

しかし、結婚して流産を経験してから、この曲は何年も聴けませんでした。

「小さなともし火を 吹き消した夜・・・・」あのフレーズは、見るだけでも辛くて、「散歩道」というタイトルを聴いただけで、涙が出てくることもありました。

やっと気持ちの整理がついたのは流産から3年くらい経ってから…。
久しぶりにこの曲を聴いて、初めてあの詞に描かれた、情景や、二人の気持ちがわかったような気がしました。

今は、初めて聴いた頃と同じくらい、好きな曲です。

気持ちの整理ができたから、辛かったあの頃のことをに向き合って、「青春グラフィティ」を書くことができました。

嬉しかったことも、辛かったことも、全てが、私がわたしらしく生きているために必要だったのだと思っています。

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