死体が埋まっている切手
私は東京都でOLをしている。毎日満員電車に乗って、目まぐるしく忙しい仕事をこなし、残業は当たり前、そんな日々を過ごしていた。いつの間にか生きる意味さえも失いかけていた。そんな日々の中でも唯一楽しみにしていることがあった。それは週末に母と電話をすることだった。母と話している時間は仕事のことは考えなくて良いし友達よりも気軽に仕事の愚痴などを言えてストレスを発散できた。母も優しく励ましてくれて癒された。それでまたもう少し頑張ってみようと思える。
私の母には借金があった。父が事業に失敗し、亡くなった際に借金が母へと引き継がれたのだ。私はそれを返済するために東京に上京し、一生懸命働いている。
ある日、仕事を終え家に帰宅するとポストに一通の封筒が入っていた。その封筒は真っ黒で差出人も書いておらず不気味だった。恐る恐る開けてみると便箋とたくさんの人が笑っている絵の切手が入っていた。
便箋には、
「この切手を使って手紙を送れば送った先の人に幸運が訪れる。
手紙の中の内容は相手の幸運を願う内容を書け。
そうでなければ幸運は訪れず、効果はない。
その手紙に書いたことは全て現実になるので慎重に書け。」
と書いてあった。私は不気味に思い、捨てようと思ったが捨てるのも怖くなってしまい、友達に相談した。すると友達は面白がって良いことが起きるなら送ってみればいいと言いました。私もその言葉に納得して送ってみることにした。
幸運を願う相手、幸せになって欲しい人、それはまさに母だった。これまでたくさん苦労をしてきて背負わなくていいものまで背負ってきた。そんな母には幸せに思ってほしい、心からそう思った。
それから手紙に借金がなくなって欲しいこと、母にたくさん幸せが訪れることを願う内容の手紙を書き、切手を貼ってポストに投函した。
その後、本当に借金が返済されたという通知が来て、母も趣味を見つけ、友達ができ、毎日楽しいという電話が来た。
「本当だったんだ」
率直にそう思った。全く信じてはいなく、不気味がっていたけどこの封筒の差出人に心から感謝した。この幸せがずっと続いてほしい、そう思った。
そんな矢先、母が急死した。
突然の出来事に私は全く実感がなかった。寂しさや悲しみを通り越し、怒りが込み上げてきた。やっと借金が返済されて幸せになれたのになぜ母ばっかり不幸な目に遭うのか。やっぱりあの手紙は嘘だったのだと恨んだ。
それからというものの母を失った悲しみからなのか私自身も体調がすぐれない日が続いた。しかし、実家の整理もしないといけないため重い腰を上げ、実家に向かった。実家に入ってすぐ目についたのが私が送った切手付きの手紙だった。
こんなもの捨ててしまおうと思い手に取った瞬間、息ができなくなった。例えなどではなく、誰かに首を絞められている感覚だった。
もうダメだと思った瞬間、切手に書かれている人の顔が笑顔から睨んでいるような顔に変わったように見えた。
私は絶望を感じながら死んだ。
その切手は「死体が埋まっている切手」と都市伝説で言い伝えられていた。
数百年前、その切手を使って人に手紙を送ると手紙の内容が現実になり、送った人も送られた人も幸せになり、その切手は世界の注目を集めた。
故にその切手は高額に取引され、その切手を争って喧嘩が起き、暴力、闇取引、殺人までもが行われるようになった。この争いで亡くなった人は1000人に昇る。
そのため亡くなった人の恨みにより、切手を使おうとする人、幸せになる人は不幸になるようになった。それから「死体が埋まっている切手」と言われるようになった。
国の統制や警察などが整備されこのような争いはなくなり、切手も消滅したと思われた。
しかし、現在もその切手は確かに存在しており、その切手を使って人を不幸にしようとしている人がいる。あの切手を送ったのは誰なのだろう、、、。
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