令和のプロポーズ事情

「全部指定通りだったよ〜」と、同期入社の彼女は言った。つい先日、5年間付き合った恋人からプロポーズを受けた彼女と久しぶりに会った際に、「おめでとう!!どんな感じだったの??」と興奮している風を装って聞いたら、彼女は、「指定通りだった」と言ったのだった。その様子はまるで、スタバで頼んだ飲み物が、自分の指定したカスタマイズ通りだったよ、というくらいの単調さだった。「え、指定通りってどういうこと〜?!」と、私はまたもや、興味津々で、ちょっと面白がるようなフリをして聞いてしまう。(会話のなかで、何かと"フリ"をするのをやめたい。)
「日付は誕生日か記念日、外資系の指輪、東京タワーが見えるホテル、108本のバラ」と、「抹茶フラペチーノ、ソイミルク変更、ホイップ少なめ、氷無し」みたいなテンションで、彼女は淡々と話した。

そうか、プロポーズはそこまで"指定"する世の中になっているのか。外資系の指輪が欲しい気持ち、108本のバラが欲しい気持ちには全く共感できないが、そういう"指定形式のプロポーズ"が生まれた構造というか、経緯はいくらか想像できた。
インスタを開けば、額を光らせ、こんがりと焼けた男性が108本のバラを持ち、オフショルのワンピから覗かせたデコルテが艶やかに光る女性が、濃紺の小箱を持った写真が溢れている。※男性は、前髪が目元ギリギリまであったり、俗に言うマッシュヘアであったり、小箱は赤や水色の場合もある。そんな写真を見て、羨ましい気持ちがないと言えば大嘘になる。全然羨ましいし、「すげ〜金持ってそうなやつ捕まえてんな〜どこで出会うんだよ、私も出会えるもんなら出会いてえよ。」と思う。だが現実問題、1Kの部屋に108本のバラを置く場所なんて無いし、プロポーズの為にホテルを取ってもらわなくてもいい、そのお金をハネムーンに回したい、なんて考えた。

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