【断髪小説】かわいい
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モデルとなったご本人から許可を得た、ある意味でコラボ?的な小説です。
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“ソラさんに会いたいです”
最初にやりとりをしてから2日目。DMをしたのは、りかの方だった。
二人は共に髪フェチだが、嗜好は少しずれていた。彼女は断髪が好きで剃髪は苦手。彼はどちらかというと剃髪の方が好き。
ソラは正直乗り気ではなかった。会ったところで髪を切れる訳でもないし、特に切りたいとも思わなかった。
彼は特に断髪には不自由していなかった。自分に好意を抱いている女性に「短いのが好き」と言えば腰まであるロングヘアをおかっぱにしてきたこともあったし、「刈り上げてみたい」と言えばアタッチメントなしで刈り上げさせてもらえた。
剃髪の欲求は満たせたことがないが、断髪についてはもう十分に満足していた。
だからかはわからないが、彼は他のフェチの人ほどは彼女に対して必死にならなかった。
りかは、二言目には「会いたい」という人だった。彼女は他人を立てるトークが上手で、彼女と話している人はとても気持ちよく話すことができた。りかは他人の好意が自分に向いていると感じるのが好きだし、色んな人が彼女に夢中になった。
そして、自分の欲求を彼女に曝け出した。
でも、りかはそれを許す人ではなかった。彼女は自分に劣情を向けてくる人を「キモい」と思うし、一度そう思った人はもう相手にする気にならなかった。
ソラは、りかに夢中にならなかった。同じフェチを持つ人として会ってみたいとは思っていたが、会って髪を切りたいとまでは思っていなかった。そんなソラの態度は色んな人をとりこにしてきた彼女のプライドを刺激した。
りかのトークテクニックもあり、二人はDMでお互いのフェチについて語り合い親交を深めた。
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“ソラさんりかの髪ちょきちょきして🫣✂︎✂︎✂︎
りかソラさんに切ってもらったらキュンキュンすると思うの🥺🤍🤍🤍”
“えー、嫌だよ。りか絶対に切ったら後々後悔するじゃん。それに顎から少し上のボブまでしか切らせてくれないじゃん”
“後悔はする😧
顎までじゃ切ってくれない?🥺✂︎
りかソラさんがちょきちょきしてくれるならもう少し恥ずかしい髪型でもいいよ🫣✂︎✂︎✂︎”
“うーん、わかった”
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「ソラさん、待った?」
りかのサラサラとしたボブが肩の上で揺れる。
「いや、さっきの電車できたところ。今日はよろしくね」
「りかの方こそよろしく!りかねぇ、今日すっごく楽しみで、今日も朝から妄想して一人でしてたよ」
「真っ昼間から何言ってんの?どうする?切る前にぶらっと遊ぶか食べるかする?」
「えーとね、りか気になってたカフェがあるの。でも早くちょきちょきしてほしい気もするしどうしよう」
「じゃあ先にカフェにしよっか。切った後だとりか恥ずかしくてカフェ楽しめないかもしれないし」
りかが無意識にうなじを手で触る。
「待ってりかなんかいまキュンときた。じゃあ先にカフェにしよ」
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カフェでインスタ映えしそうなシフォンケーキを食べた二人は、あらかじめ抑えておいたレンタルルームに移動した。
椅子にはケープを巻いたりかが座り、机の上にはハサミとクシとヘアゴムとクチバシとバリカンと剃刀が置かれている。
「今日はいっぱいちょきちょきしようね。まずは顎のラインのボブにするね」
「はーい。りかなんかすごく緊張してムズムズする」
「はいはい。あ、りかのスマホで動画撮っとく?」
「お願い!できたらソラさんのスマホで別アングルのも撮っててくれると嬉しいんだけど」
「極上のオカズになるもんね?笑」
そういいながら、ソラはりかのスマホを三脚に固定した。
「サラサラツヤツヤ、綺麗な髪だね。きちんと手入れされてそう」
ソラの手がやさしくりかの髪を手のひらに乗せる。
「うん!りかそれこの前美容師さんにも言われて嬉しかったの!」
「そっかぁ。頑張って手入れしてると褒めてもらえたら嬉しいよね。でも、切っちゃうんだけどね」
ソラはそういうと、いつのまにか持っていたハサミをりかの顎の横で閉じた。
5cmほどの長さの髪がハラリと舞って、ケープに落ちた。
りかが唖然としている間にソラは反対側の髪にもハサミを入れる。
「ほら、見て。りかがしてみたいって言ってた姫カットだよ」
「ソラさんいきなりだからちょっとびっくりしちゃった。ねぇりか似合ってる?」
りかがまじまじと前に置かれた鏡を覗き込む。
「うん、りかは顔の形が卵型だから可愛くてよく似合ってるよ」
「ありがとう。なんかそう言われるとすごく似合ってる気がしてきた。次はどうするの?」
「次はね、せっかく可愛い姫カットだけど、姫カットはおしまいにしてこの長さで後ろまで揃えたボブにするよ」
そういいながら、ソラはりかのうなじを指でつついた。
「襟足ギリギリらへんの顎ラインのボブ?」
「そう。とりあえずそのラインで揃えていくよ」
ソラがハサミを閉じるたび、シャキッ、シャキッと音を立てて髪がケープを滑り落ち、りかの白い首筋があらわになっていく。
5分もしないうちに、顎のラインで切り揃えた切りっぱなしのぱっつんボブが完成する。
「りかこの髪型好き!キュンキュンする。これで完成?」
「この髪型似合ってるよね。もう終わっていいの?」
「まだキュンキュンが欲しいからもうちょっとちょきちょきしてほしいです」
「じゃあ次は、りかがしてみたいって言ってた前下がりボブにしようか」
「でも、後ろはもうギリギリじゃない?」
「後ろの下の方を少し刈り上げにして、2cmだけ刈り上げ見せちゃうよ」
ソラはそういってクシをりかのうなじにあてる。
「りか、刈り上げ見えるの嫌だったけど、何回か刈り上げが丸見えな髪型にしてたから最近少しマヒしてきて平気になったの」
「それは何より。ハサミでちょきちょきと刈り上げていくね」
ソラはりかの髪の毛を下からクシですくい、はみ出た部分をハサミで切り落としていく。
シャッシャッシャッと、部屋にリズミカルなハサミの音が響く。
ソラがりかのうなじをなでると、ザリっとした感覚が伝わる。
「横のラインはバリカンを押し当てて作っていくね」
宣言通り、クシをりかの髪にあてて前下がりのラインを作ると、そこからはみ出す部分をバリカンで削るように切り落としていく。
「後ろ、スマホで写メ撮ったから見てみて」
「いい!りかこの髪型も好き!キュンキュンする!」
前髪はオン眉のパッツン、サイドは顎のラインでうなじが少し刈り上がった黒髪の前下がりボブの女性が、スマホに映されている。
「でも、これで終わりじゃないよね」
ソラはそういうと、バリカンをりかの頬ぼねの少し下あたりに押し当てた。
耳たぶから少し上あたりのラインで、髪が落ちる。反対側にもバリカンを当てる。
「ほら、また姫カット。やっぱりよく似合っててかわいい」
「りかかわいい?少し恥ずかしい。これでおしまい?」
「まだおしまいじゃないよ」
「これ以上切ったらダサくなっちゃう」
「今からここから下の髪は全部剃っちゃうんだよ」
ソラの指が姫カットに重なる
「え、ワカメちゃん…それはさすがに恥ずかしい」
「りか、自分がダサくなるの好きっていってたよね?」
「言ってたけど…」
「それとも、俺が切るのじゃキュンキュンできない?」
「そんなことはないよ」
「もうおしまいにする?」
ソラが手に持ったバリカンを机の上に置いた。
「待って、わかったから」
「何がわかったの?」
「ソラさんにりかのこと、ダサいワカメちゃんにしてほしいの」
「いいの?」
「そのかわり、りかのことかわいいって言って」
「かわいいよ、りか。どんな髪型でも、とてもかわいい」
りかの後頭部にバリカンが押し当てられ、そのうなじに向けて髪が刈り落とされていく。
右に左にと範囲を広げていき、やがて下半分は青々とした刈り上げ、上半分はサラサラでツヤツヤの黒髪という、「ダサいおかっぱ」が完成した。
赤くなったりかの耳の下半分近くが、切り揃えられた髪から顔を出している。
ソラはそんなりかのことはお構いなしに、りかの後頭部に剃刀を当て始めた。
「りかがしたいって言ってた、襟足ツルツルの耳が出るくらいのボブにしてるからね」
剃刀が滑る度に、りかの白い地肌があらわになっていく。
「妄想してたより恥ずかしい。りかなんか熱くなって頭がボーッとしてきちゃった」
「かわいい。りか。綺麗な髪とツルツルの地肌の境目がなんかエロいし、ほんとうにかわいいよ」
「そんなこと言われたらもっと恥ずかしくなる、ほんとに熱い」
「できたよ、りか。襟足のツルツルが丸見えのダサいワカメちゃん。でも、すごくかわいい。かわいい以外に言葉がでないね」
りかが後頭部をなでると、ついさっきまであったサラッとした髪ではなく、ヌッとした地肌の感覚が手を伝う。
「ねぇ、ソラさん、これでおしまい?りかキュンキュンしすぎておかしくなっちゃいそうなんだけど」
「おしまいにするつもりだったんだけど…。ねぇ、ここにバリカン入れちゃダメかな?」
ソラはりかの前髪をおでこからかきあげる。
「りかそれはキュンキュンできないと思う…」
「それは可哀想とか怖いとかで萌えないんだよね」
「うん…。りか、前にフェチの人におでこから少しバリカン入れてもらったことあるんだけど、すごく怖かったの」
「そのときは今みたいなワカメちゃんじゃなかったよね?」
「うん」
「俺はかわいいと思うけど、多分可哀想さで言ったら今の髪型も剃髪も変わらないよね?むしろ剃髪した方がウィッグとか被りやすいかもしれないし」
「それはそうかもしれないけど…」
「じゃあデメリットないよね。世間体的にもいずれにせよウィッグ被らなきゃだし。それに、さっきも言ったけどりか卵型だから、剃髪も似合うと思うんだ。多分りかが思っているよりもかわいいと思うよ」
「ソラさんは剃髪した方が好き?」
「好き。絶対にもっと可愛くなると思う」
「うーん…」
鏡に映る自分を見つめるりか。
「でも、やだ…。やっぱり怖い…」
「どうしても怖い?」
「うん…」
「俺のこと信用できない?」
「そういうわけじゃないんだけど…」
ソラは深呼吸をして、ケープに乗っているりかの髪を払った。
「わかった。じゃあ今日はこれでおしまいにしよう、りかさん」
りかは胸が痛くなった。このまま関係が終わってしまうような、そんな気がしてしまった。
「…ぃょ」
「え?」
「いいよ、りかの髪、全部剃っても」
「りか、嫌なんでしょ?嫌ならしないよ」
「嫌だったけど、してほしい。ソラさんにりかのおでこからバリカン入れてほしい」
「嫌じゃなくなったの?」
「うん…。嫌だったんだけど、いま、ソラさんにバリカン入れられるところを想像してみたら、りか少しジンジンしちゃってたの。それに、ソラさんがかわいいって言ってくれるから…」
「本当にいいの?綺麗な髪なのに」
ソラがりかの髪をなでる。
「うん…。それに、もうワカメちゃんだし…。今なら丸坊主でも萌えられると思う」
「わかった。本当にいいんだよね?」
「うん!りかの髪を全部ツルツルに剃ってください!」
ソラはりかのおでこにゆっくりとバリカンを近づける。
りかは鏡に映る自分の額を真っ直ぐに見つめる。
アタッチメントのついていないバリカンが、ゆっくりとりかのおでこに入り込んでいく。
バリカンの通った後の髪が、力なく落ちてりかの鼻にかかる。そのままバリカンはりかの頭頂部を過ぎたところまで進み、止まった。
ソラはりかの頭に手をやり、引っかかっていた髪を払い落とす。
鏡に映るのは、真ん中に青白い一本線の引かれたワカメちゃんカットの女性。
「やっちゃった…」
「やっちゃったね。1時間前はあんなにサラツヤのボブだったのに。今じゃ逆モヒカンだもんね」
「これが、逆モヒカン…」
「そう。さっきまでの可愛らしい髪型から、一本線が入っただけなのにもう後戻りができない髪型」
「すごい…。サラサラの部分とザラザラの部分がこんなところで…」
「りか、逆モヒカンもとてもかわいいよ。まだこんなに髪が残っているのに、ここを刈ったりかはもう丸坊主になるしかないんだよ。」
ソラはバリカンを再びおでこから入れていく。
先ほど刈られた逆モヒカンのすぐ横の部分が刈り取られていく。
「これは…落ち武者…」
「そうだよ、りか。一番みじめに見える髪型でしょ?この髪型は長かった髪を坊主にする一瞬しか見ることができない、ある意味レアな髪型だよ」
「こんなりかもかわいいの?」
「うん。とてもかわいい。みじめでダサいけど、残った髪が女性らしさを感じさせるんだ。その女性らしさがまたみじめで支配欲を満たしてエロく感じる。ねぇ、りか、鏡をよく見て。落ち武者頭になったりかのことを」
ソラはりかの月代の部分を剃り始めた。
りかは恥ずかしさで頭の先まで赤くなる。
「見て、りか。ツルツルの落ち武者になったよ。こんな姿を見せてくれてありがとう。すごくかわいい」
「う…。恥ずかしいけど、なんかりか嫌じゃない。ジンジンしてる。むしろ最初の長い状態から剃りたかった」
「りか、このまま残りの髪の毛も全部剃っていっちゃうよ」
「ソラさん、剃っていくとりかかわいくなる?」
「うん。ここからはどちらかというと洗練された女性って感じになると思うよ」
「ううん、違う。りかにかわいいって言って」
「もちろん、今でもかわいいし、ずっとかわいいよ」
やがて、ツヤツヤのボブだったりかの頭は、ツルツルのスキンヘッドになった。
「あ、ソラさん、大変!」
「どうしたの?」
「りか、来るときこんなことするつもりじゃなかったから、帽子もウィッグも持ってきてないんだけど!」
黒地に白いドットのワンピースにスキンヘッドのりか。
「じゃあ、もう一回さっきのカフェにいこっか」
「え、待って、りか死ぬ。恥ずかしくて死ぬんだけど」
「せっかく綺麗な頭になったから、かわいくなったりかをみんなに見てもらおうよ」
「変に思われないかな」
「うーん、かわいいから大丈夫だよ」
「絶対にそういう問題じゃないってりかでもわかるよ!?」
そう言いながら、二人はレンタルルームを出て、カフェの方へと歩いていった…。
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