【断髪小説】2人の秘密

彩香との出会いはTwitterだった。
彩香は女性の髪が切られることに興奮する、いわゆる断髪フェチだった。
俺と彩香は、同じ性癖を持つ者としてsnsでの友情を育み、やがて付き合うことになった。
二人の愛は、「丸坊主にして」という言葉や、バリカンを彩香のおでこにあてるというゴッコ遊びと共に成熟していった。

自分の髪が切られたり刈られたりすることを想像して興奮するものの、かわいくありたい彩香は、本当に切られるのは嫌な人間でもあった。
彩香は前髪は眉下パッツン、重めで長めなボブをキープしていた。

「ねぇ、もうすぐ誕生日じゃん?私の髪を切らせてあげよっか?」

ベッドの上で背中越しに彩香が投げかける。

「え、どうしたの?彩香、自分が本当に切られるのは嫌なんじゃないの?」

少し下半身の血の巡りがよくなるのを感じたものの、振り向くことなくスマホを見つめ続ける。

「いや、なんていうかね、絶対に後悔はするんだろうけど、でも、実際に切られたらどれだけ興奮するんだろうって思ったの。その興奮を一緒に経験したいなって」

「坊主にしてもいい?」
「それはダメ。見えない範囲で、ツーブロが限度かな」
「それだと見た目あまり変わらないじゃん」
「愛しの彼女の頭をバリカンで刈れるんだから、それで興奮してよ」

彩香は少し不服そうな顔をして、俺の前に座った。

「わかった。で、いつ切ればいいの?」
「いまでしょ」

彩香は少し使い古されたネタをすると、ベッドの影から紙袋を取り出した。
紙袋の中にはバリカン、ハサミ、クシ、クチバシ、ゴム、ケープ、新聞紙が入っていた。

「長さは変えない感じ?」

新聞紙の上に置いた椅子に座った彩香に、ケープを巻く。

「とりあえずは変えないで、刈るだけにしてほしいな。あ、このケープ腕が出ないじゃん。拘束感がすごいね」
「わかった。刈る長さはどうする?」
「んー、見えないからアタなしでいいよ。その方が興奮できるでしょ?」

言われるがままにバリカンからアタッチメントを取り外す。

「ブロッキングは耳の上4cmの高さでいい?」
「いや、それは高すぎるでしょ。せめて2cmにしてよ」
「わかった」

耳の上2cmでも大概高いのだが、彩香の気が変わらないうちにゴムでブロッキングを済ませる。

「じゃあ刈るよ?」
「あ、待って。私も後で見たいから動画回して!」
「了解。その方が何度も楽しめるもんな」

左手にスマホを構えつつ、右手に持ったバリカンを彩香の白い首筋に近づける。

「いくよ。この綺麗な髪の毛、全部青々とするまで刈り取ってしまうよ」
「私の髪、綺麗?」
「うん、とても綺麗。いままで時間とお金をかけて手入れしてきたもんね。それがもうすぐゴミになるんだよ」
「私の髪がゴミになるの?頭の半分青々とした恥ずかしい頭になるの?」
「そうだね。かわいくなくなっちゃうかもしれないね」
「いやだ…」

彩香はケープの中で指を動かしているようだ。

「いくよ」
「んっ…」

バリカンが彩香の首筋に入り込むと、艶のある髪が少し上に持ち上がり、すぐに力をなくしたように流れ落ちていく。そのまま、バリカンをブロッキングした位置まで持っていき、離す。
バリカンが通った後には青々とした地肌が見える。

「刈っちゃったよ」
「どうなってる?」
「青々とした一本道だよ」
「小説と同じだね」

それから何度も彩香のうなじ、耳の下、耳の上からバリカンが入り、その度に彩香の髪が束になって落ちた。
やがて、彩香の頭は耳上2cmから下が1mm坊主のポニーテールになった。

彩香をポニーテールにまとめているゴムをとると、先ほどと同じ長さの、やや量が減った髪型に戻った。

「刈り上げといったらあれだよね」
「「刈り上げツインテール」」
二人は顔を見合わせて笑った。

眉下パッツンと、青々とした刈り上げツインテール。あどけなさと、エロさがあった。

二人が満足いくまで写真撮影をしたが、二人とも欲求不満になっている空気を感じた。

「ねぇ、彩香。上の髪も切らない?」
「でも、切っちゃうと見た目が変わっちゃう」
「そういうけど、本当は切ってもっと興奮したいんでしょ?」
「それはそっちじゃないの?後悔しそう」
「後悔するほどに切るから興奮できるんじゃない?」
「それもそうなんだけど…。かわいくなくなったら嫌だから…」

彩香は肩についた毛先に指を絡める。

「絶対にかわいいと思うよ」
「えー、絶対に切りたいだけでしょ」
「ほんとほんと。絶対にかわいいと思う。少なくとも主観的には」
「主観的にじゃダメじゃん笑。うーん、じゃあ、毎日かわいいって言ってくれる?」
「言う言う」
「絶対にかわいいって言ってくれる?」
「言うから」
「アフターケアをきちんとしてくれるなら…いいよ…」

彩香はこれから訪れるであろう興奮と後悔を天秤にかけて、欲望に負けた。

「どこまで切る?」
「とりあえずこのくらい」

彩香はうなじの生え際と肩のちょうど真ん中あたりを触って言った。

「わかった」
「ねぇ、せっかくだからアレやってほしい。ハサミで切らないで、バリカンを押し当てて切って」

そういうと彩香は、バリカンを俺に差し出した。
再び彩香はケープに巻かれる。

俺は言われるがままに、彩香の首筋にバリカンを押し当てる。
一筋だけ髪の毛がこぼれ落ち、白い首筋が顔を出す。
黒い髪と白い首筋が直角的にあわさり、欲情を誘う。

バリカンを押し当てる度に、黒い髪が流れ落ち、白い面積が増えていく。
横の髪も顎下のラインで切り揃え、なんとか左右対称のボブにすることができた。

「ねぇ、かわいい?」
「かわいいよ」
「嘘だ。もっと切りたいって顔してる」
「それは否定できない」
「うなじギリギリまでならいいよ」

欲情に支配されているのは俺だけではないらしい。

先ほどよりさらに3cmほど上の、襟足ギリギリのラインにバリカンを押し当てていく。
耳の下ギリギリ、リップラインのボブになった。

「ねぇ、彩香。まだ物足りないんだろ?あと3cm切らないか?」
「ダメ。それだと刈り上げが丸見えになっちゃう」
「本当は丸見えになるほどに切って、後悔する自分に興奮したいんだろ?」
「でも、恥ずかしいし、刈り上げが見えてるのはかわいくない」
「彩香がそう思う髪型だからこそ、逆に興奮できるんじゃないのか?」

彩香は難しい顔をしたかと思うと、少し泣きそうな顔になり、「じゃあ2cmなら」と承認した。

彩香の襟足から2cmのラインにバリカンを押し当てる。
先ほどまでと違い、黒い髪が落ちた下は白い首筋ではなく、青々とした頭皮になった。
そのまま横は耳の真ん中、鼻の高さのラインと繋がっていく。
前髪の長いワカメちゃんみたいになった彩香からケープを外し、そのまま毛が付くのも気にせずベッドに押し倒した。

「彩香、ワカメちゃんみたいになっちゃったね」
「それでもかわいいって言ってくれる?」
「かわいい。世界一かわいいよ」
「後ろどうなってる?」
「ぱつんと切り揃えられたラインの下は刈り上げが丸見えになっているよ。上の髪が少し浮いていて、パンプキンスカートみたいになってる」
「恥ずかしいけど、フェチのツボにささるやつだね」
「正直めちゃくちゃ刺さる」
「私がそんな頭になっちゃったんだね。後でくるっと回ってみるから、たなびく髪を動画に撮ってね」

それから、毎週金曜日の夜に俺は彩香の刈り上げ部分を剃ることになった。
"パンプキンスカート"の下の、二人だけの秘密の領域。

ある金曜日、いつもどおり彩香の頭を剃っていると、少し恥ずかしそうに彩香が言った。

「ねぇ、私たちもう26じゃん」
「そうだな」
「そろそろだと思うんだよね」
「まあ、確かに周りをみていると」

剃ることに集中しているため、どうしても返事がぶっきらぼうになるが、彩香は気にせず続ける。

「それでね、結婚するなら、結婚式が終わった後ならしてもいいかなって」
「何を?」
「実際に丸坊主に。新婚旅行のホテルで頭を剃って、ゼロからの結婚生活を始めてもいいかなって」
「新婚旅行か…いいね」
「あなたのためにするんだから、スキンヘッドになっても毎日きちんとかわいいねっていってね?」

その後、2人は夜遅くまで語り合った。いま彩香ほ後頭部をなでる剃刀が、やがて頭頂部を這うことを想像しながら。

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