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敗血症・敗血症性ショックの治療について簡単に解説【輸液・抗菌薬・ドレナージ】

今回は、臨床や医学の勉強をしていて感じる疑問の一つ、

敗血症・敗血症性ショックの治療はどうするべきか?

についてまとめました。敗血症及び敗血症性ショックについて、ガイドラインに沿って治療について解説したいと思います。


1.敗血症の治療を急ぐ理由

敗血症性ショックの患者の治療において、

初回抗菌薬投与が1時間遅れるごとに死亡率が増加する(平均7.6%)

敗血症は内科救急疾患と呼ばれることが多く、治療を急がなければならないと良く言われますが、それはなぜなのでしょうか?

その一つの根拠となる論文を以下に紹介します👇

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効果的な抗菌薬治療を開始する前の低血圧の持続時間は、ヒト敗血症性ショックの生存率を決定する重要な要素である

目的:敗血症性ショックの再発・持続性低血圧の初回発症から有効な抗菌薬治療の開始が遅れることの有病率と死亡率への影響を明らかにする。

デザイン:1989年7月~2004年6月に実施された後方視的コホート研究

設定。カナダと米国の14の集中治療室(内科系4、外科系4、内科・外科系6、混合診療/外科系6)と10の病院(学術機関4、コミュニティ6)

患者:敗血症性ショックの成人患者2,731人の医療記録

介入:なし

測定値と主な結果:

主要アウトカム指標は退院までの生存期間であった。

再発性または持続性低血圧の発症後にのみ有効な抗菌薬治療を受けた敗血症性ショック患者2,154人(合計78.9%)のうち、有効な抗菌薬開始の遅れと院内死亡率との間に強い関係が認められた(調整オッズ比1.119、95%信頼区間1.103~1.136、p<0.0001)。

分離または疑われる病原体に有効な抗菌薬の投与は、低血圧が記録されてから最初の1時間以内の生存率79.9%と関連していた。

その後6時間の間に抗菌薬の投与が1時間遅れるごとに、平均7.6%の生存率の低下と関連していた。

持続性/再発性低血圧の発症後2時間までには、1時間以内に治療を受けた場合と比較して院内死亡率が有意に上昇した(オッズ比1.67;95%信頼区間、1.12~2.48)。

多変量解析(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation IIスコアおよび治療変数を含む)では、効果的な抗菌薬治療開始までの時間が転帰の最も強力な予測因子であった。

有効な抗菌薬治療開始までの時間の中央値は6時間(25~75パーセンタイル、2.0~15.0hr)であった。

結論:成人の敗血症性ショック患者において、低血圧が確認されてから最初の1時間以内に抗菌薬を効果的に投与することは、退院までの生存率の増加と関連していた。

死亡率は遅延の増加に伴って漸進的に増加していたが、敗血症性ショック患者の50%のみが低血圧が確認されてから6時間以内に有効な抗菌薬治療を受けた。

引用)Duration of hypotension before initiation of effective antimicrobial therapy is the critical determinant of survival in human septic shock. Kumar A,Roberts D,et al. Crip Care Med. 2006 Jun;34(6):1589-96   DeepL翻訳・一部ブログ作者の意訳あり

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すなわち、少しでも早く抗菌薬加療を開始したほうが生存率は上がる傾向があるという事ですね!

2.敗血症治療の総論

感染症を疑う患者の診察の基本

【診断と方針】

●まずは敗血症を疑うこと
●バイタルサイン等のパラメータの変化の察知し、その変化の鑑別として感染症を想起すること

【治療介入】

●迅速な培養提出と、適切な抗菌薬投与が必須
●ソースコントロールはもっと重要

感染症を疑う患者の診察におけるポイントは上記の通りです!

まずは敗血症を疑ってスコアリングおよび診断を付けていくことが大切です。

診断基準に関しては各患者ごとの臓器障害についてスコアリングしたスコアである、

SOFAスコアの2点以上上昇とされています。

6つの全身臓器の項目ごとにスコアリングを付けていくのですが、これを忙しい臨床現場でつけるのはあまり現実的とは言えません…

そこで、ICU以外の場でSOFAスコアの代わりによく使用されているのがq-SOFAスコアです!

コチラはバイタルだけで計算できるため大変有用なのですが、一方であくまでスクリーニングであることを念頭に使用しましょう。

より詳しい敗血症・敗血症性ショックの診断基準についてはコチラをチェック

治療については、先ほど強調したように早期の抗菌薬投与が要となります。

迅速な培養提出と、適切な抗菌薬投与が必須である一方で、

感染源のソースコントロールはより重要であることを忘れてはなりません。

皮下の膿瘍に伴う敗血症性ショックと診断して、抗菌薬投与を行っても原因となっている膿瘍をドレナージしなければバイタルが安定しないシチュエーションをしばしば経験します。

感染のソースコントロールは大切!

デバイス感染ならデバイスを抜く

膿瘍ができてるならドレナージする

創部感染なら洗浄する


3.敗血症バンドルとは?

敗血症バンドル

1時間以内に達成すべき項目

1)乳酸値の測定

2)抗生剤投与前に血液培養を採取

3)広域抗生剤の投与

4)低血圧・乳酸値≧4mmol/Lに対し、

30ml/kgの晶質液投与

最後に、敗血症の治療においてよく紹介される、敗血症バンドルについてご紹介します。

これは、救急外来のシチュエーションで、1時間以内に達成すべき項目であるといわれています。

輸液量の投与量については、これだけ投与するより早期にカテコラミンを使用したほうがいいというエキスパートオピニオンもありますが、

このバンドルのすばらしさは何といっても

敗血症は緊急疾患で治療介入は時間を意識して素早く行うべきであるというメッセージを発信し続けている事でしょう!

今後救急外来で感染症を疑う患者さんを診察する際には、このバンドルを意識して初期診療にあたってみてください。

また、輸液を十分に行っても循環不全が改善しない際には、昇圧剤の使用も考慮されます。

具体的な昇圧剤の適応や使用方法についてはコチラを参考にしてみてください

4.引用文献

2016年敗血症治療ガイドライン

Duration of hypotension before initiation of effective antimicrobial therapy is the critical determinant of survival in human septic shock. Kumar A,Roberts D,et al. Crip Care Med. 2006 Jun;34(6):1589-96

レジデントノート Vol.20 No.8 (増刊) 2018

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