見出し画像

「グレイモヤ」という凄いライブについて語りたい

皆さんは「グレイモヤ」というお笑いライブを知っているだろうか。また観に行ったことがあるだろうか。

このグレイモヤというライブは東京に数多くあるお笑いライブの中でも、特に異質であり、毎回爆発的な盛り上がりを見せている。

このグレイモヤがなぜこんなにも凄いのか、グレイモヤをグレイモヤたらしめているものとは何なのかを私に語らせてほしい。

私はお笑いライブの制作に携わったり、週に三回お笑いライブに通っていた時期もある、その程度のお笑いライブウォッチャーである。
ただの大学生でプロでも何でもない立場ではあるが、今回はいちお笑いライブオタク、グレイモヤファンとしてその魅力を分析し、述べていきたい。

グレイモヤとは


グレイモヤのフライヤー画像(「ザクセス」公式Xより引用)

まずはグレイモヤというライブについて簡単に説明したい。
以下簡単なライブの概要である。

【公演名】 グレイモヤ
【コピー】 オープニングもエンディングもない「ネタのみ」のお笑いライブ
【会場】  なかのZERO小ホール or 渋谷区文化総合センター大和田さくらホール(以前は野方区民ホールや方南会館、なかの芸小や新宿バティオスなどでも開催していた)
【組数】  15組前後+ストーリーテラー
【料金】  前売3,000円 当日3,500円
【制作】  ザクセス

各項目において簡単に捕捉をしていく。

まずコピーに関してだが、ネタライブでOPとED、中MCが全くないケースは珍しいといえる。ネタの羅列のみでライブにメリハリをつけるのは難しいためだ。後述するが、この難点をグレイモヤはいくつかの方法を用いて克服している。

次に会場である。現在は中野駅近くの「なかのZERO小ホール」という劇場で開催されている。小ホールと言いつつも400人キャパであり、それでいてちょうど良い地下感も感じることができる絶妙な会場である。
(4/8追記 現在は「渋谷区文化総合センター大和田さくらホール」というキャパ735人の会場と交互に開催している。)

余談だが、グレイモヤにはいくつか派生ライブや構成が類似しているライブがあり、それぞれ会場が異なっている。ここでそれらのライブを紹介しておく。

グレイモヤβ」 
グレイモヤより若手の芸人が多く出演する。
チケットは2,500円 会場は座・高円寺2

「グレイモヤG」
現役学生芸人と元学生芸人だけを集めたスピンオフ版。
チケットは2,000円 会場はとしま区民センター多目的ホールや野方区民ホールなど。

「グレイモヤOSAKA」
大阪で行われるグレイモヤ。東京芸人も大阪芸人が半分ずつ出演する。
チケットは3,000円 会場は阿倍野区民センター。

※以下類似ライブ。
「魔の巣」「魔太郎」
グレイモヤと同じく、OPEDなしのネタだけのライブ。
グレイモヤよりもいわゆる”地下ライブっぽい”出演者が多い印象。
「魔太郎」は魔の巣の若手バージョン。大阪で行われる「魔の巣 OSAKA」もある。
ちなみに「魔の巣」は漫画『笑ゥせぇるすまん』に出てくるバーの名前であり、そのためもあってかストーリーテラーは、都トムの髙木払いによく似た喪黒 福造のような人物が務めることが多い。

チケットは2,500円 会場は新宿バティオス
(魔太郎はチケット2,000円 会場は中野シアターかざあな)

魔の巣のフライヤー画像(「ザクセス」公式Xより引用)


次に組数だが、ネタだけのお笑いライブということもあり組数が15組と比較的多めである。公演時間は2時間超が多く、大ボリュームのライブと言える。(ストーリーテラーについては後述)

最後に制作をしているお笑いライブ制作団体「ザクセス」について簡単に紹介したい。
ザクセスは栗原(栗原国家権力)氏が主宰をしているお笑いライブ制作をしている団体である。「グレイモヤ」や「魔の巣」をはじめ、「煉瓦」「鉄人シュタイナー」「ハッキリ言って相当面白いライブシリーズ」やその他多くのお笑いライブを企画運営している。フライヤーのデザイン性の高さやキャスティングのソリッドさが特徴的(個人的な印象)。東京に数多く存在するライブ制作団体の中でも一段と輝きを放っている、お笑いライブファンなら絶対に知っておきたい団体である。
ちなみに栗原氏はエアコンぶんぶんお姉さんと「ユーのカー」、永田敬介氏と「コーツ」というユニットをそれぞれ組んでいる。(コーツはM-1の時期のみ活動)

以上、グレイモヤについての概要である。


グレイモヤは何が凄いのか

さて、ここからは実際にグレイモヤは何が凄いのか、なぜあんなにも驚異的な盛り上がりを見せるのかについて述べていきたい。主にライブ構成について言及していく。

ストーリーテラー

まずはストーリーテラーである。
グレイモヤシリーズにはストーリーテラーなる人物がトップとトリに登場する。グレイモヤでは、都トムの髙木払いに容姿が良く似た「Mr.ドーナツ伝説 咳暁夫」が毎回ストーリーテラーを務め、毎回ライブの冒頭と最後にミスタードーナツについての都市伝説を紹介してくれる。

「オープニングもエンディングもない「ネタのみ」のお笑いライブ」を謳っているが、その代わりとしてストーリーテラーが存在しているのである。

これの革命的なところは、オープニングMCとエンディングMCのトークが担う役割を、コントが担っているという点である。

通常のライブでは進行と何人かがMCとして登場し、トークをしばらくしてからネタブロックに入る。しかし、トークにはもちろん台本が存在しないため盛り上がりにムラが出てしまう。またトークの中で公演や出演者についての話題になるため、芸人は公演を客観的に捉えた話をし、観客も一度公演自体を俯瞰で見てしまうのだ。

一方でストーリーテラーは登場時点で既にキャラに入っており、観客は一気に公演の世界観に引き込まれる。ネタを見る前に「グレイモヤというライブのコンセプトを理解する時間」をスキップできるのである。なぜならもう既にネタは始まっているからだ。もっと言うならお客さんは「グレイモヤ」という一つの長尺のコントを一本見ているような気分になる。コント師の単独公演のオープニングコントを見ているのに近い感覚かもしれない。
以上のような「ネタをしていない芸人」「ネタから降りている芸人」を公演中で一度も見ない構成が、観客をライブにのめりこませている大きな要因の一つと言える。

出順が不明

MCが無いという点からのつながりであるが、グレイモヤには出順が分からないという特徴もある。
ネタライブではオープニングMCの最後に「一組目、○○~!」といったように、ネタをする順番が発表されることが多い。ライブの構成や出順が書かれた紙を配られることもある。
一方でグレイモヤはそのようなMCが存在しないため、出順の発表も当然存在しない。これが及ぼす良い結果として、観客は「次は誰が出てくるんだろう」というワクワク感を終始感じることができる。音楽のライブで次の曲が何かな、と楽しみに思う感覚に近いかもしれない。もちろん誰が出演するかは告知されてはいるが、組数も多く、公演の最中に全出演者を頭に浮かべられる人の方が少ないであろう。
このワクワク感が公演全体の期待感につながっているのである。

トリのみ告知

先ほど出順が不明という特徴について述べたが、実はグレイモヤは事前にトリのみ告知している。フライヤー画像では出演者の中でも下に大きくコンビ名が書かれており、他のコンビよりも存在感が強くなっている。
グレイモヤは毎回出演者が大体決まっており、名前を見るだけではいつものメンバーと感じることが多い。しかしトリは毎回変わるため、それにより公演によって受ける印象が変わり、各回のグレイモヤにそれぞれ違った色を出すことができるのである。いわばロックフェスにおけるヘッドライナーに近い存在と言える。
また、出番順を告知しないことによって生じる平坦な構成に、一つ盛り上がりをつけることができるというメリットもあるだろう。

出囃子「熱き決闘者たち」

グレイモヤの特徴として挙げないわけにはいけないのはその出囃子だろう。グレイモヤの出囃子には「熱き決闘者(デュエリスト)たち」というアニメ『遊戯王デュエルモンスターズ』にて使用された楽曲が採用されている。グレイモヤに行ったことが無くてもこの曲は聞いたことがあるという人は多いかもしれない。

ちなみにこの「グレイモヤ」というライブのライブタイトル自体も遊戯王のカード「万能地雷グレイモヤ」から取ったと思われ、遊戯王との親和性が高いことが伺える。

《万能地雷グレイモヤ》 通常罠カード
フライヤー画像の爆発によく似ている。

クロコップがキングオブコントで披露した「ホイリスト」のネタでも同曲が使われている。
下に「熱き決闘者たち」のリンクを貼っておくので聴いたことが無い人は是非聴いてみて欲しい(カバー音源)。


この曲がグレイモヤの独特な雰囲気や緊張感を作っている大きな要因になっているのである。弦楽器を主旋律に用いた壮大な曲調と、ネタ終わりの盛大な拍手が重なるあの時間は、本当に他でどこでも味わうこともできない至福の時であると断言できる。あの気持ちよさは一度味わうと病みつきになってしまう。

また、公演によっては出囃子と下げ囃子の二曲を使うケースもある。前の組がハケて次の組のネタ準備ができるまでを下げ囃子、次の組が舞台に向かうときに出囃子を用いるといった感じである。
一方でグレイモヤには出囃子である「熱き決闘者たち」しか使われていない。しかし、この曲は一曲で出囃子と下げ囃子の両方の役割を果たしているのだ。

というのも、この曲は2つの部分に分けることができる。まずは冒頭の「デッデレレ~ デ~デ~デ~デ~デ~ デッデレレ~ デ~デ~」の部分である。この部分が先述したネタ終わりの拍手と重なることが多い。この部分がいわば下げ囃子の役割を果たしている。
そしてそれに続くのが「テッテッテッテ テ~レレテ~レレ テッテッテッテ テ~レレテ~レレ…」という力強いティンパニの音が特徴的な部分である。この部分が次の組のネタ準備やコンビ名のがなりに重なり、出囃子のような役割を担っているのである。

これによってライブの流れが切れないのはもちろんのこと、次の組のネタにスムーズに移行することが出来る。まさに神的なBGMである。

ちなみに、トリの芸人が出る前の出囃子では「熱き決闘者たち」のアレンジ音源が流れる。これが流れると「もうそろそろ終わりか…」と少しだけ寂しい気持ちになるのはあるあるだろう。

豪華な出演者

そしてなんといってもグレイモヤは出演者が豪華なこと極まりない。
もう一度先ほどのフライヤー画像をご覧いただこう。

グレイモヤのフライヤー画像(「ザクセス」公式Xより引用)

パッと見ても分かる通り、お笑いファンなら知らない人はいないと言えるほどの豪華なメンバーである。事務所も芸風もバラバラながら、なぜか一体感を感じる凄まじいキャスティングだと言える。これだけ豪華なのに他で見たことのない「グレイモヤ」っぽい組み合わせは、もうすっかりおなじみと言えるだろう。

この中の一組だけを目当てにライブに行く人もいるくらいのメンバーが、これだけの数名を連ねるライブはそうそう無いと思う。
ライブの性質上平場の絡みなどは全くないけれどきっと化学反応が起こる、そんなある種の信頼感を担保しているのはこの魅力的なメンツなのは間違いないだろう。

フライヤー画像

最後に、先ほどから何度も掲載しているグレイモヤのフライヤー画像をもう一度ご覧いただきたい。

グレイモヤのフライヤー画像(「ザクセス」公式Xより引用)

この世に存在するフライヤー画像の中で飛びぬけて一番好きな画像である。こんなに完璧なフライヤーがこの世に存在するのかと思えるくらいパーフェクトなデザインである。

黒を基調とした背景赤字でインパクトのあるライブタイトル中央ぞろえのコンビ名おしゃれながら見やすいフォント後ろで爆発しているイラスト。ちょっと完璧すぎて素晴らしすぎる。誰でも作れそうだけれど、誰にも作れないような気がする。
インパクト抜群で他で見たことがないけれど、シンプルで見やすい」、まさにグレイモヤというライブそのものを表しているフライヤーと言えるだろう。

どうかこのフライヤー画像のポスターを販売して欲しい、Tシャツを販売して欲しい、アクリルスタンドを、スマホケースを、ポストカードを、私のために販売して欲しい。検討をぜひお願いしたい。


最後に

ここまでグレイモヤというライブの魅力をたっぷりと語り、分析してきた。

グレイモヤは言わずと知れた大人気ライブであり、チケットは毎回即完である。お笑い玄人にはもちろん、お笑いライブの入門編としてもこれ以上ないライブであるため、ライブにあまり行ったことがない方にもおすすめしたい。簡単ではないかもしれないが、是非チケット争奪戦に挑んでみて欲しい。
きっと面白い芸人や他の素敵なライブと出会ったり、今まで味わったことのないライブ体験ができることだろう。

最後に、Youtubeにアップされているグレイモヤのネタ動画を一部紹介してこの記事を締めたい。ここまで完全な自己満足でこの記事を書いてきたが、グレイモヤの雰囲気や魅力がちょっとでも伝わったなら幸いである。


ザクセス公式X
ザクセス公式TIGETページ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?