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イラストとAIと著作権のトラブル事例とわたしの考えについて

誰にも公開しないで、コッソリと終わらせたつもりだったのですが。

実はイラストの「無断使用」を巡ってトラブルが発生しました。その問題は最近話題のAIイラストをめぐる話題なので(1)トラブルの概要(2)論点とか争点とか(3)それに関する法律上のことや(4)わたしの考えをまとめてみました。(約5,500字と長文なので、お気をつけて。こんなことなら記事を2つに分ければよかった……)

2023年6月28日長い追記をしました。この方が半年にわたって、事実と異なることをツイートしていたと言う情報提供があり、いったん状況を整理しておくためです。そのために約2000字とスクショを数枚追加しました。最後に追加しています。

トラブルの背景

わたしのことをご存じない方もお読みになるので、ざっくり自分のことを。ほそぼそとボカロPをしながら、ボカロP仲間を登場させた漫画を書いています。「その漫画を掲載している架空の雑誌があるとしたら、それってどんな雑誌なんだろう?」と思いつき、ある時から「架空の雑誌の表紙」も公開するようになりました。


架空の雑誌「週刊ボカロP」の表紙イラストという体裁の画像。Twitterで交流のある方をモデルにしている。

その後、Twitter上の相互フォローの方に「表紙に登場しませんか?」と声をかけるようになりました。ツイートのインプレッション(とりあえず表示される回数)が4000を超えるようになったので、幾らかでもお付き合いのある方のPRに役立つかなぁと思ったからです。

トラブルに至るまでの流れ(前段の出来事)

ある日のこと、相互フォローの関係にあった「ある方」に表紙に出ませんかとオファーしました。この方は自分でイラストを描くのが上手な方だったので、次のようにお誘いしました(抜粋、要約版です)。

通常は、わたしがアイコンなどを参考にした絵を描き、それを読み込ませてイラスト生成しています。しかし、あなたの場合は、イラストが上手なので、あなたのイラストベースで表紙を作れたらと思います。

一番下の「追記」をご参照ください

そして、この方がTwitter上に公開しているイラストをダウンロードして、それをAI読み込ませてイラストを作成。そのイラストは当然誰にも見せずにDMでこの方に送りました。「こんな感じのイラストになります」というサンプル、もしくは確認用ですね。そのイラストを実際に見なければ、返事のしようがないからです。

このオファーについてはお断りともに、次のような文章が添えてありました。

わたしのイラストは無断でAIにかけることを禁止しています。それなのに、どうしてこんなことをするのですか。

DM内での回答内容を要約

この点については後ほど詳しく触れますが、結論としては「オファーを断っている」「少なからず不快感を抱いている」ことが明らかでしたので、それらの点についてお詫びして、一連のDMを終えました。

トラブル発生(引用リツイートとDM)

この件はこれで終わりと思っていたのですが、しばらく時間が経って、この方が引用リツイートをします。この行動には別の問題もあるのですが、その点はあとで説明します。

この方の引用リツイートには、次のようなことが書いてありました。

わたしのイラストを無断でAIにかけてイラストを生成した。これは著作権侵害だ。

後日行われた話し合いのあと、ご本人から謝罪があり、同時にツイートは削除されました。

そしてDMで「あなたが今回のことを、著作権侵害と思っていないことでショックを受けている」という内容のメッセージが届きました。この引用リツイートが、しばらく公開されていたので、一部の方が目にして「どういうこと?」となったようです。

ひとまずまとめ(後編に行く前の論点整理)

この状態になって、考えるべき点がいくつか出てきました。

  1. 著作権ってどういうこと?

  2. 著作権法で許されていることと、そうでないこと

  3. 今回の件の問題点とは?

などの点です。かんたんにひとつずつ考えてみます。

1.著作権ってどういうこと?

これは「何かオリジナリティのあるものを作ったら、そのものはあなただけが自由にしていいんだよ」みたいなことです。逆を言うと「あなたが作ったものは、あなた以外の人が好きにしたらダメなんだよ」と言うことでもあります。

ただし「法律で許されている範囲の利用は除く」という条件もあります。言い換えると「例外的に他人の著作物を許可がなくても利用できる場合があるよ」ということです。ちょっと脱線ですが、法律って「原則と例外」の集まりです。なので、原則はこう、例外はこう、と理解すると、割とつかみやすいです。

2.著作権法で許されていることと、そうでないこと

著作権の法律が禁止している「好き勝手」っていうのは、基本的に「他の人に見せたり聞かせたりすること=公開すること」「ばらまくこと(頒布や販売)」という感じです。法律の厳密な解説でないので、ざくっと言っていますけど。

なので、誰にも見せずに、個人で楽しむ分には「別に罪にはならないよ」となっています。私的利用とか私的複製ってやつですね。

例えば、テレビアニメを見てます。あるシーンをスマホで写真撮影しました。ここまではOKです。自分で楽しむ分にはご自由に、です。

その写真を、レタッチしたり、加工したりしました。OKです。あくまでも自分で楽しむだけなら、これもOKです。

その写真をAIにかけて、イラスト化しました。どうでしょうか?このAIさんが、読み込んだデータを勝手に公開しなければ、おそらく問題ないです。写真を個人でレタッチするのと何が違うの、という感じですかね。

でも、これらのものを公開したり、友だちとかに送信したりしたら、まあアウトでしょうね。正確には、家族だとかごく限られた少数の人の間であればセーフでしょうけど(特定少数、かなり限定された特別強固な個人の関係性という感じですかね)。

誰かが作ったオリジナリティのあるもの(創作物とか著作物)を守るというのは、おもに「無許可で公開、頒布、販売される」こと、言い換えると「勝手に利用されて利益を奪われる」みたいなことが起こらないため、ということお分かりいただけたと思います。

3.今回の件の問題点とは?

実は、この方のTwitterのヘッダーには、イラストの使用について次のように書かれています(2023年1月6日確認時点)。

AI加工(その他含む)トレス無断転載禁止

ご本人のTwitterアカウントのヘッダー部分からの引用

ちなみに、このように「引用しましたよ」ということが分かるようにして、ルールに沿って記事などに含めることも、著作物利用ルールの例外、つまり「許可がなくてもOKなやつ」です。

脱線ですけど、本来は「ここから引用」と出典を書くべきですが、今回は書いていません。なぜなら「出典を書くと、その人の名誉が損なわれる恐れがあるから」です。ちょっと微妙なところですが、この件は平和裡に終わったので、このまま相手さんは不明な方が良いとの判断によるものです。

さて、お気づきの方もいるように、ご本人さんの注意書きは「無断転載禁止」という言葉で締めくくられています。逆を言うと「許可を取ればOKなこともありうる」ということですね。なので、わたしは許可を得る行動に出た、というわけです。

ちょっと脱線しますが、仮にこの方が「私的利用も禁じる!」と書いたらどうなのか。たぶん無効ではないかな、と。

日本の法律が良いと認めているのに、それを勝手に禁止できるなんてことになったら、法律の意味がないですからね。どこかの将軍様ならあり得ますが、ここは日本なのですから。そのようなわけで、わたしは注意事項の禁止事項に抵触しないよう注意して、この方にオファーを出しました。

これが「この利用規約に同意していない人はイラストを閲覧できない」という仕組み、例えば鍵アカとか会員制サイトであれば、拘束力があります。なぜなら「利用規約に同意する」という条件でイラストの閲覧利用をするという「約束=契約」が生じるからです。

逆に、制限が全くないオープンな環境で、「私的利用もAI学習も一切禁じる」みたいなのは、原則としては「その人の気持ち」「そうしてほしいというリクエスト」以上の意味を持つことは少ないと思います。

元に戻りますが、そういう日本の法律の背景のもとでわたしがやったことは、次の3つです。

(1)この方のイラストをダウンロードする(私的利用として)。
(2)AIにかける(まったくの非公開=私的利用の範囲)。
(3)AIがアウトプットしたイラストを本人(と、わたし)だけがわかる仕方で送る(DM)。

その結果「あなたは著作権侵害をしています」というツイートが公開されたというわけです。

今回の件についてのわたしの考え方と対応

わたしも弁護士ではないので、書いていることには法的に「ちょっと危ないぞ」という点もあるかもしれません。ただ、わたしのやったことは、「まあ、著作権法の違反、つまり著作権の侵害にはならないかな」ということです。

それを踏まえて、解決すべき問題は3つありました。

1つ目は、この方が嫌な思いをして、傷ついたという事実に対して、どのように向き合うか。

法的な問題はさておき、わたしの言動で傷ついたのは事実なので、その点に対してお詫びを述べました。もちろんDM内ですけれど。現実的に「謝ることしかできない」という面もあります。

2つ目は法律上の違反があったかどうか。

この点については「法律違反はないと思いますよ」と説明しました。これはご本人が「傷ついた」「わたしは認めない」という点とは全く別の問題なので、はっきり伝えました。

例えば、車を運転しているとしますよね?追越車線で、法定速度の範囲で、一台の車を追い抜いたとしましょうか。追い抜かれた人が「あれは危険なあおり運転だ!」と言ったとします。

違うでしょ、ということです。

あなたが、わたしに追い抜かれたのが「嫌だった」というなら、それはごめんなさい。法律を守って運転していて、まさかそんなふうにあなたを傷つけたとは思わなかったんです。そういうしかありません。同時に「でも、わたしは何も違反していませんよ?」と言います。

3つ目は、この方が、引用リツイートで「この人は著作権侵害をした、」と公言したことです。これはマズイですよね。

この方にもDMで伝えたんですが「DMとか、誰もみていないところで、わたしにだけ言うならいいんです。でも公の場所で、実際には法律違反をしていない相手に向かって、この人はイラストを無断利用した人ですよ!ってやるのは問題ですよ」と。

要は、この方がわたしに対して、名誉毀損したことになるわけですね。

もうひとつ問題点があります。この方は「引用リツイート」で「著作権侵害だ!」と公言しました。

ここまでお読みになった方は「あれ?」と思われたかもしれません。わたしは「この方のイラスト」は公開していません。DMでご本人に見せただけです。なのに、どうして「引用リツイート」できるのでしょうか?

実はこの方、表紙になることを同意してくださった、この方とは関係ない、まったく別人のイラストを引用して、「イラストの著作権侵害があった」と書いたわけです。

わたしがDMという非公開な場でやりとりしたのに対して、この方は公開の場で無関係なイラストを引用して「著作権侵害だ!」とつぶやいてしまった。

この記事を書いて公開した理由のひとつは、これなんです。

わたしの企画に快く参加してくださった方がいて、その方描いたAIイラストは公開していました。この方、なんと「そのイラスト」を引用して「著作権侵害だ」と書いたわけです。

あなた関係ないがな……_:(´ཀ`」 ∠):

すると、その引用リツイートを見た人の中には、「そのイラスト」が侵害したイラストだと思う人も出てくる。実際は、この方が問題だと言っているイラストは、どこにも公開されていないのだけれど、そのことはどこにも書かれていない。

要は「銃を乱射した」わけです。

なので、「あなたのツイートを見る人の中には、もしかしたら攻撃的な人もいるかもですよ。そういう人が、あなたの行為を見たときに、あなたのことを非難するリスクがありますよ。この引用リツイートについては、訂正するなど何か適切に対処された方がいいのではないですか?」という趣旨のメッセージ送りました。

すぐに引用ツイートは削除していただいたので、「話が通じてよかったと」ホッとしました。

しかし、引用リツイートしたイラストが、この件とは全く無関係だったことは、何も書かずに削除されました。そこで「あなたはきちんと訂正しなければいけないんですよ」と伝えようとしましたが、すぐにブロックされたので、この方に対してはわたしの説明は届かない可能性が高くなっています。

追記:その後時間が経ってから、この方のブロックが一時的に解除されました。その際の話し合いで「謝罪しましょうか」との申し出がありましたが、すでに日数が経過しており、今さら蒸し返すこともないと考え、「もういいですよ」と回答しています。

なので、まどろっこしいやり方ですが、この件についての背景の説明と、あのイラストは流れ弾に当たっただけで、何も問題ないのですよ、ということを説明することにしました。

まとめ:法律で禁止されていないことについて、どれだけ相手に要求できるのか?

法律で禁止されていなくても、わたしが嫌なことはしないでくれ!

その気持ちもわかるので、気をつけていたつもりでしたが、今回はこの方の心を深く傷つけてしまったようです。これは反省するしかありません。

同時に、わたしたちは、お互いに自分の感覚を相手に強制できないんだよ、ということも伝えておきたいんです。

わたしたちの心の中のルールは他の人には見えません。今回のことで言えば、「法律で許されている私的利用でさえ嫌だから、画面上で見る以外には、一切ダウンロードもしないでほしい」と思っているなら、鍵アカなどで限定公開するなどの努力は、あなたにも必要なんですよ、ということです。

法律上許されていることを止める権限はないんです。

あなたは自由にしたいでしょう?他の人から「わたしが気持ちいい行動しかするな!」と言われたら、それこそ悲しくてやりきれないでしょう?あなたは法律によって自分の自由を最大限守ってもらいたいけど、他の人の自由は認めないんでしょうか?それは、やっぱりおかしいですよね、と言っているんです。

結局、今回のことは、AIが絡んでいるから、すごく専門的でマニアックかと言うとそうではなくて、普通の考えでいいんです。

それは「この国では法律が禁止していないことは自由です」「TwitterはTwitter社のサービスだから、家主であるTwitter社さんのルールも守る必要があります」ということ。

その範囲で、お互いに適度に生暖かくスルーしながら、折り合いをつけるしかないんですよ。同時に、お互いに何かのことで間違ったら、きちんと謝った方がいいよね、ということです。

なので、この方が「関係のない人のイラストに対して泥を塗って、その後に何も訂正しないで削除し、あとはブロックしておしまい」としたことについては、色々な意味で「かなしいなぁ」と思っています。

わたしだけでなく、いろんな人が経験する可能性があることなので、相手の方にご迷惑が最小限で済むような形で、情報をまとめました。長文を最後まで、ありがとうございます。

2023年6月追記:

その後、約半年近くにわたり、この方が「名指しこそ伏せてはいるものの、中傷めいたツイートを断続的に行なっている」とのご連絡をいただいています。

中には「ほぼ名指しだよなぁ」苦笑いするものもありますし、わたしの言動を性暴力の文脈で発言しているものもあり、ちょっとルール違反じゃないかなと感じてもいます。

この方への最後のDMで「わたしも間違ったことをしました。あなたも間違ったことをしました。お互いに謝罪をして、お互いにDM上で受け入れました。ここで仕切り直して、引き続き良い音楽仲間に戻りませんか?」という申し入れをしましたが、現在までブロックされた状態が続いています。

そんなわけで、この方の言動について、わたしは確認できていないのですが、「タイムライン上に(共通の相互フォローさんがいるなどの関係で)出てきた内容が気になって」と、情報提供いただくことがあります。

その内容について、事実ではないこと、事実に対して「かなり盛っているのでは?」というもの、あえて誤解させるように書いているのだろうかと思えるものなど、少し気になる内容が目立っていました。

そこで、情報提供いただいたツイートの一部を引用して、これまでの文章などと比較して、みなさんにご判断いただこうと思いました。相手の方のアカウント名などは削除しています。一部、下線を引くなどの加工も行なっています。

順番がバラバラである点はご容赦を。また、提供者のみなさんのスクショ時期により、日付があったりなかったりします。

オファーのDM。このあと「こんな感じになります」とAIイラストを提示(生成したイラストはお見せできません)
性暴力ポスターを引用し「おじさん同盟」主催から「DMで暴力を受けた」と発言
自分を見下すような内容や、攻撃的(暴力的)なDMを大量に送られたと主張


画像を一方的に無断加工されたあと、逆上され、心理的暴力を受けたと発言

DMは一番最初の、わたしの声かけのものしか公開していません。

理由として(1)DMは秘密裏のやり取りであり、トラブルになったからと言って、相手の了解もなく公開して良いとは考えられない(2)冒頭の文章は、多くの活動者さんへのオファーの文章と似通っており、わたしがこのような声かけをしていることは周知のことである、などが挙げられます。

実際のところ、全文公開した方がわたしにとっては都合が良い面はあります。

  • AI加工の件をおわびしたした際、謝罪を受け入れる旨の返事と共に「ボカロ界を盛り上げようと言う意欲を感じており、陰ながら応援している」と結ばれている。

  • その後、感情が再燃したあとのやり取りでは、「今回のことに腹が立ち、不適切な行動をとったことについては、関係者に対して申し訳ないことをした」ことも認めている。

  • 自分自身がイラストの著作権に関して敏感なところがあり、「きちんと調べてから発言すべきだったと反省している」と述べている。

  • 知らず知らずのうちに、自分が「偽善」をしているとのコメントがある(この方の発言では、わたしが「偽善者!」という糾弾をしているように見えるものがあるらしいのですが、偽善という表現は確認する限り、ご自身で自発的に述べていらっしゃいます)。

  • 一連の感情が再び爆発したのが落ち着いてきて「自分が何をしたのか分かってきた。申し訳ない」と結ばれている。

……などの点が明らかになるからです。

わたしからは公開するつもりはないですが、もしもこの方が全文公開を望まれるようなら、どなたかこの方に、この記事を教えて差し上げてください。そして「全文公開していただいて結構です。ただし、巻き込まれの方の名前のところだけ、消し込みをかけてくださいね」とお伝えください。


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