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YouTubeへの動画投稿について

YouTubeへの動画投稿について。

Twitterのリプライで質問があったので、返信しようとしたのですが、非常に長くなってしまったのと、ダンサーにとって著作権が関係する身近な例として、この問題を共有したかったので、noteの記事にしました。

ダンサーからすると制限が多くてキツイと感じると思うんですが、

こんな願いからこの記事を書いているので、長いですがぜひ最後まで読んでいただけたらと思います。

それでは↓

ツイート元はコチラ(https://twitter.com/kensandance/status/1260858990906359814

みなさん気になる点は、

①YouTubeに市販の楽曲を使って踊った動画をアップしてもいいの?
②収益化していなければOK?
③歌手や作曲家にも広告収入がはいるからOK?

だと思います。

この疑問に関して現状、僕が調べた情報を書いていきます。
(わかりにくい箇所や、間違っている箇所があればご連絡ください。調べて補足資料を投稿します。)

①YouTubeに市販の楽曲を使って踊った動画をアップしてもいいの?

結論から言いますと、
< 限りなくブラックよりのグレー >
です。

この問題を理解するには、
・「楽曲」と「音源」の違い
・「著作者」「実演家」「レコード製作者」の存在
を知る必要があります。

おおまかに説明すると、
<楽曲>は「著作者(作詞・作曲・編曲)」によって作られた音楽そのもの
<音源>は楽曲を「実演家」が演奏(歌唱)し「レコード製作者」が記録したもの
です。
※法律上ではレコード製作者という名称ですが、レコードに限らずあらゆる媒体への記録が想定されています。

JASRACという著作権管理団体がYouTubeと楽曲の(包括)利用許諾契約を結んでいますが、
JASRACは、
<楽曲>にまつわる作詞者作曲者の著作権は管理していますが、
<音源>にまつわる実演家レコード製作者の著作権は管理していません。

著作権というと作詞や作曲をした人の権利というイメージがあると思いますが、演奏した人や、CDを作った人にも著作権があります。
(正確に言うと著作隣接権。あと編曲者にも著作権が発生します。)


JASRACの管理「楽曲」をYouTubeで利用していいよ
であって、
「音源」を利用していいよではない
のです。

このことはJASRACのサイトにも書かれていますが、
楽曲と音源の違いがわからないと理解できません。ヤヤコシイデスネ。

市販の音源を利用する場合にはレコード製作者に問い合わせるように書かれていますね。

音源の利用許諾を得られればいいのですが、基本的にみんなが使いたいと思うような有名曲の場合、音源の権利者は大手のレコード会社である場合が多く、そういう大手の会社は一般人に利用許諾を行うことはほとんどありません
(CMでの利用など、莫大な使用料を支払うような企業案件のみ対応するようです。ちなみに僕が個人的にビクターエンタテインメント様に別件で問い合わせを行って10日以上経ちましたが、返信は来ていません。)

前述のように、大手レコード会社は個別の対応を基本的に行いませんが、
YouTubeのContent IDという仕組みを利用して、例外的に許諾する場合があります。
(Content IDについては③の広告収入の項で詳しく説明します)

動画の概要欄に「この動画の音楽」という項目が表示されているのを見られたことがあるかも知れません。
「YouTubeに使用を許可しているライセンス所持者」とは名前の記載がある権利者が許諾してますよーってことです。
ただし注意しなければならないのが、この表示は
すべての権利者から許諾を受けていることを意味しない
のです。
前述の通りひとつの音源に対して複数の権利者がいます。
すべての権利者から許諾を得ているかをYouTubeは保証していません

ライセンス所持者に許諾されるかどうかは、実際にYouTubeに動画をアップするまでわかりません
(事前に許諾されるかどうかを調べられる「音楽ポリシー」というYouTubeのサービスが一応ありますが、利用者が少ないため廃止予定です。)
「非公開」や「限定公開」でアップして反応を見る、という方法がよく取られているようですが、あまり良い方法ではありません。
なぜなら、
・せっかく動画を作ったのに許諾されずブロック/削除されるかも
・許諾されるかどうかわかるまでに時間がかかる
・そもそもすべての権利者がチェックしているかどうかわからない
といったリスクがあるからです。

知識も必要だし、手間もかかって正直メンドクサイ気持ちも理解できますが、許諾をすっ飛ばして利用するのは絶対にやめましょう。
(現状ではしばしば見受けられますし、僕自身も注意していかないといけません)

以上から、
< 限りなくブラックよりのグレー >
と判断しました。

仕組みや法整備が整うまでの間、
どうしても利用したい音源がある場合、比較的許諾の得やすいカバー音源の利用を推奨します。(これに関しても議論はあるかと思いますがここでは割愛します)
それ以外の場合はパブリックドメインの曲やYouTubeオーディオライブラリの曲などの利用をオススメします。
※パブリックドメイン(PD): 著作権の保護期間が過ぎた著作物


②収益化していなければOK?

一般的にいくつかの条件を満たせば、権利者の許諾を得ずに著作物を使用することが出来ます。
しかし、YouTubeへの動画投稿はこの条件に当てはまらないので、収益化にかかわらず許諾を得なければ利用できません

著作権法第38条を例に挙げると、

公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。

これをみて「あっ、俺のYouTubeチャンネルは収益化してないから大丈夫だ」と誤解しやすいのですが、実はダメです。

まず
<営利を目的とせず>
ですが、
これは直接か間接かを問わないので、
直接動画から広告収入を得ていなくても、
プロダンサーやダンスで収入を得ているアマチュアは間接的な営利目的に該当すると考えられます。
(なにがプロでなにがアマかの議論はここでは割愛します。)

次に
<上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる>
ですが、YouTubeに動画をアップする行為は
複製>や<送信可能化>という別の権利の侵害にあたるため、
非営利目的であっても許諾なく著作物を利用することはできません。

許諾を得なくても利用できる場合について分かりやすくまとめられているサイトを見つけたので紹介しておきます。


③歌手や作曲家にも広告収入がはいるからOK?

こちらはグレーです。

YouTubeはContent IDというシステムを使って、広告収入の一部を権利者に分配する仕組みを持っています。

これによって直接の許諾を得なくても、実質的に権利者が利用を許諾しているということがありますが、これも注意が必要です。

まずはContent IDの仕組みを確認していきます。

このシステムは権利侵害が疑われる動画がアップされた場合、コンテンツを登録している著作権者に通知します。

通知を受けた著作権者は、
1,ブロック
2,収益化
3,追跡
を選択することが出来ます。

「1,ブロック」の場合は動画が非表示になります。

「2,収益化」の場合、動画に広告が表示され、権利者に収益が分配されます。
この場合はYouTubeと著作権者との契約で、利用を許諾していることになります。
しかし、①にも書いたように、YouTubeはすべての著作権者を把握しているわけではなく、Content IDへの登録は著作権者にゆだねられています。登録していない著作権者には広告収入が分配されません
動画投稿後、Content IDに新たに登録した著作権者がブロックの選択をとることも考えられますし、
可能性は低いかも知れませんが、Content IDに登録していない著作権者が権利侵害の訴えを起こす可能性もまったくないとは言い切れません。

「3,追跡(トラッキング)」は権利者が動画再生の統計情報を追跡している状態です。


実際に「2,収益化」を選択し、利用OKとしている著作権者は増えてきています。
星野源さんは自身のラジオ番組「星野源のオールナイトニッポン」(2020.04.28OA)にて、自身の楽曲/音源の利用を許可すると公表されました。(収益の上がらないSNSもOKとのこと。ふとっぱら!)

このような仕組みが普及することでダンサーがある程度自由に踊れる楽曲/音源が増えていくと考えられますが、

現状ではまだ仕組みづくりや法整備が追いついていないので、出来るだけリスクの低い利用方法を選択すべきだと考えています。


まとめ

現状ではYouTubeに市販の楽曲/音源を利用した動画を投稿することはやめておいたほうがいいと思います。

どうしても利用したい曲があるのならばカバー音源の利用など現実的な手段を探る。
曲にこだわらないのであればパブリックドメインの曲やYouTubeオーディオライブラリの曲などを利用することを推奨します。

また、このような「社交ダンス関係であれば自由に使ってください」という非常にありがたいCDも発売されています。

ダンス業界として(もしくは個人の活動として)、このようなダンサブルな音源を制作していくことや、
星野源さんのような先進的な取り組みを応援していくことが、
これからダンサーの活動の幅を広げるためには必要だと思います。

僕は初心者向け作曲の本と星野源さんのアルバムを購入しました!

他人の作品を扱う以上、それに対して敬意を持って接することがクリエイターとしての責務だと思います。
ダンサーは踊ることだけが仕事じゃありません。
正しい知識を身につけ、活動することも仕事のうちだと思います!


以上です。

何かご不明な点があれば遠慮なくおっしゃってください。


ダンス界の輝ける未来のために!

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【 ダンサーのための著作権プロジェクト 】
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