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FUJI ROCK FESTIVAL '24 感想

昨年は開催直前に新型コロナに罹ってしまい参加できなかったので、2019年以来、実に5年ぶりとなったフジロック。感想をまとめていきたいと思います。

[day.0] 7/25 (Thu.)

前夜祭の楽しさ

18時ころに車で越後湯沢駅に到着し、友人と合流。コロナ前に常宿にしていた民宿まで向かう。相変わらずエアコンはないが、問題なく涼しい。前夜祭に行くのは2017年以来、7年ぶり。
「もち豚」の串とビールを購入し、混雑するアオシスで乾杯。花火が上がったが、曇りでほとんど見えなかった。飲食の列に並んでいるみんなが「花火がんばれ~」と思いながら空を見上げる光景は面白かった。

ほとんど見えない花火

20時からは DJ MAMEDUKA のプレーが開始。最初は Led Zeppelin の 「Rock'n'Roll」から始まったが、レッドマーキーの音ってこんなによかったっけ?と思うくらいいい音だった。2曲目で早速、今年の初日ヘッドライナー The Killers のアンセム「Mr. Brightside」で異常な盛り上がりをみせる前夜祭。みんな大合唱していたので、これは翌日のライブも期待できるなと思った。

続いてはフィンランドからやってきたロックンロール・バンド、Us の出演を待つ。深夜のパレスやレッドマーキーへの出演、グリーンでの Route 17 Rock'n'Roll ORCHESTRA への出演も決まっており、今年の「お前ら何回ライブやるんだよ」枠。勢いよく盛り上げるガレージ・ロックで楽しい。一度は見ておきたかったので前夜祭で見られたのはラッキーだった。この時点で「久しぶりのフジ、めちゃくちゃ楽しい」モードに入っていた。

その後はオアシスでダラダラと過ごし、10時頃には宿に戻って風呂に入って寝た。宿の温泉は、以前はやっていた日帰り入浴をやめたらしく、宿泊客の専用になっていて、ほぼ貸し切りのように使えたのが最高だった。昔は素っ裸でシャワーの順番待ちとかしてたからね。


[day.1] 7/26 (Fri.)

出発~ドラゴンドラへ

宿の布団がペラッペラで、腰が痛くなってしまって朝6時頃に目が覚めてしまう。宿のすぐ前にあるお土産屋さんでは、フジロック期間中は朝食用のおにぎりを販売していて、これがめちゃくちゃ助かる。僕は朝に牛乳とコーヒーを飲まないと体のリズムが整わないので、その両方を取り扱っているのも最高。おまけに、数量は少ないが野菜スティックなんかも売っていて、偏りがちなフジ期間中の食事バランスの向上に少なくない貢献をしてくれていた。
宿で朝飯を済ませ、さらに朝風呂も入る。めちゃくちゃ気持ちいい。一日の最高のスタート!

とはいえこの日の前半はあまり見たいものを絞っていなかったので、とりあえず散歩がてらいきなり最奥地のオレンジ・カフェに向かう。日差しが暑いが、日陰に入ると涼しく、このくらいなら全然耐えられる。オレンジ・カフェのテントでクラフトビールを飲みながら、今日の作戦を立てる。
ヘブンの渋さ知らズオーケストラやアヴァロンの Rei をチラ見しつつ、アヴァロンで昼飯。コットゥロティという、薄焼きパンを細かく刻んで野菜や鶏肉なんかと炒めたスリランカ料理。かなりスパイシーで美味しかったが、紙製のスプーンが一口目で折れ曲がってしまって非常に食べづらかった。笑 グリーンまで戻って、後方で Route 17 Rock'n'Roll ORCHESTRA を見る。昨日観たばかりの Us も登場。

苗場食堂ステージにて、る鹿を見た。中国出身の女性モデルで、ゆらゆら帝国「空洞です」のカバーをシングルリリースするなど音楽活動も行っている。持ち曲は多くないはずだけど、試しに見てみることにした。バンドメンバーにはキーボードで北村蕗が入っており、みんな上手い。ライブはいきなり「空洞です」でスタートし、フィッシュマンズやクランベリーズのカバーをはさみながら、山本精一作曲・坂本慎太郎作詞の「体がしびれる 頭がよろこぶ」を披露。いいライブだった。

けっこう歌も上手い。後ろには北村蕗

続いてはグリーンステージにて、今年にわかに話題沸騰のアルバムをリリースしたシカゴのインディー・バンド、Friko を見る。さすがにまだこのステージは広すぎるという感もあったが、エネルギッシュにでかい音を出していてよろしい。後半は Erika de Casier を見にレッドマーキーに移動した。シルキーな声の女性シンガーは大抵好みなので、後ろの方から楽しんだ。

さて、暑さがけっこうしんどい時間帯を過ごし、友人たちとドラゴンドラに乗り込む。フジロックに来たら一度は必ず乗りたいよね。山頂に着くと、すでに Day Dreaming のDJも終わっている時間で、とても静かだった。最高に涼しいし、ここぞとばかりに綺麗なトイレで用を足す。
下りのゴンドラの最終が17時だったので、その時間ギリギリまで涼んだ。

King Krule を見た感慨

2013年のデビューアルバム以来、10年にわたって僕の音楽リスニング体験のひとつの核にいたのが King Krule ことアーチー・マーシャルという人だった。早耳な人は 1stアルバム以前のシングルから熱狂していたが、僕が King Krule が凄いなと思ったのはやはりアルバムが出てからだった。その思いがピークに達したのは2017年の『The Ooz』だったが、この人が名義を問わず定期的に音楽をリリースすることが、継続的に新しい音楽を聞くモチベーションの一つだったことは確かだ。そんなわけで、今年のフジに彼が出演することは、僕にとってちょっとした事件だった。
アーチー・マーシャルが思ったままの出で立ちで登場したときはその佇まいに、あの声で歌い出したときはその低温の響きに、「Stoned, Again」のラストではバンドの迫力とアーチーのシャウトに強烈に痺れた。アルトサックスをはじめバンドの演奏もかなりタイトであっという間の時間だった。「前に日本に来たのは10年前…」というMCから始まった「Easy Easy」は言いようもなくエモかった。僕が初めてフジロックに参加したのが2014年なのでちょうど10年前。Kanye West がキャンセルになり Arcade Fire が代打でヘッドライナーを努めた年だった。そんなことを思い出した。

抜群の存在感だったアーチー・マーシャル

爆音で聞こえてくるグリーンステージの Awich に思いを馳せながら、オアシスで牛すじビリヤニを食べる。今年食べたフードの中で一番辛かったけど、めっちゃ美味かった。牛すじのゴロッと感と、上に乗ったサラダがサッパリしてて良かった。
次は引き続きマーキーにて Floating Points を見るつもりだったのだが、アヴァロンでやる 北村蕗 が気になってきた。る鹿のステージでの演奏も良かったし、地元が同じ山形県というのもあって、小さめのステージとはいえ初日のトリを務める彼女の勇姿をどうしても確認したくなってきたのだった。
ということで、Floating Points の最初の5分を遠目で確認した後、マーキーをあとに。途中、ホワイトで Hiroko Yamamura がバキバキのテクノでブチ上げているのを見て小躍りしつつ、すぐにアヴァロンに到着。グリーンのヘッドライナーやヘブンの上原ひろみと被っているスロットということで客は少なめだったが、おかげでかなり前に陣取って広々と見ることができた。
ステージ上には彼女が一人だけ。初期はもっと弾き語りのスタイルだったようだが、直近のリリースであるEP『500mm』ではかなりダンスミュージック寄りのトラックが中心になっていて、今回のライブもそういうスタイルだった。曲名までは覚えていなかったがドラムンベースばりの高速ビートに北村の歌唱が乗るとめちゃくちゃ踊れる。民謡仕込みのボーカルは小柄ながらパワフルで、期待以上に最高だった。結局、最後まで見てしまった。

スペシャルなライブだった The Killers

それほど思い入れも無いし、アルバムとして聞いたのは最初の1枚だけという体たらくだが、ライブパフォーマンスに定評のある The Killers は見ようと思っていた。最初の数曲は見逃してしまったが、ブランドン・フラワーズがホワイトのジャケットをまだ着てるくらいの時間帯にグリーン到着。
PA右後ろくらいの位置まで移動したけど、周りのお客さんのテンションもすでに相当高かった。自然に僕も前のめりになっていたが、ライブの空気が更に高まったのは間違いなくあのヒーローの登場後だった。すでにSNSでも相当話題になって、大手全国紙の記事にまでなった後だが、改めて観客として目撃したものを記しておきたい。

キラーズのライブでは定番だったようだが、「For Reasons Unknown」で観客をステージに上げてドラムを叩かせるというパートで選ばれたのが、ワタルという若者だった。キラーズのTシャツを着て袖をまくり上げた彼は、緊張した面持ちのままドラムセットの後ろへ。僕も周りの客も、お手並み拝見、みたいな雰囲気で見ていたと思う。冒頭こそちょっと不安定だったものの、すぐに呼吸を合わせて曲が始まる。パワフルなキックにあわせるようにブランドンが歌っているのが印象的だった。そしてバチバチにキマったフィルイン。ここで客席がブチ上がる。ライブアレンジにも対応したブレイクも最高で、僕も周りも熱狂的に盛り上がっていた。最後は自然発生的に「Wataru」コールが巻き起こるほどだった。
それまでも十分にホットなライブだったけど、これで完全に観客のタガが外れたような気がする。本編ラストの「All These Things That I've Done」のシンガロングに至るまで、一瞬も途切れずピークのテンションが続いていたと思う。
アンコールでは鉄板の「Mr. Brightside」が披露され、微妙なライブアレンジに一瞬戸惑ったものの、2コーラス目で聞き慣れたアルペジオが演奏されるとその日最大の歓声とシンガロングが発生した。みんな喉が枯れるくらい歌っていた。ふだんは正直「なんてダサい音楽なんだ…」と思いながら聞いているキラーズだが、SZA の代打出演、ファンのドラマーの抜群のパフォーマンスなどの偶然の要素を経て最高のライブをするという、フジロック史に残るメモリアルなステージになったと思う。

フェスのヘッドライナーを務めるために生まれてきたようなバンド

その後は友人とオアシスでダラダラしたり、深夜のパレスで Christone "Kingfish" Ingram の熱気ムンムンなブルース・ギターを聞いたりしながら、1日目を終えた。相変わらず宿の温泉はほぼ貸切状態で最高だった。


[day.2] 7/27 (Sat.)

暑さの中での2日目

前日、寝たのが深夜3時ころだったので、さすがに8時前頃まで目が覚めず。朝飯を食べた後、温泉。最高である。朝はのんびりしながら、パリオリンピックの開会式の模様を再放送で見ていた。

その後、YONCE のバンド The Hedigan's を見にレッドマーキーへ。PA卓の後ろ辺りからのんびりと眺める。音源は聞いたことがなかったけど、Suchmos よりジャムセッション的な要素も多く、ダビーなアレンジの曲もあってかっこよかった。

次はグリーンステージにて The Last Dinner Party を見る。女性5人組でUKのチャートを賑わせている…みたいな前評判でものすごいハイプ臭を感じて敬遠していたが、コーチェラでのライブの配信を見て結構良さそうだという期待があった。
リードギターのエミリー・ロバーツは昔 Queen のコピバンをしていたという話を聞いて、なるほどブライアン・メイみたいだと思ったりした。ベースのジョージア・デイヴィスは日本語が達者で高感度高い。「特別なおもてなし」として披露された Blondie の「Call Me」のカバーはその選曲の完璧さもあって素晴らしいハイライトになっていた。

2023年ほどの酷暑ではなかったにせよ、陽が差すと猛烈に暑い。
雨がぱらついてきたのもあって、レッドマーキーの屋根の下はかなり混み合っているようだったので、Glass Beams は遠くから少し眺める程度。ゆる~いサイケな音楽だったが後半はゴツ目のビートも入ってきて踊れる感じだった。
グリーンの後方で昼寝でもしようと思っていたが、10-Feet の爆音で全く寝られず(苦笑)。バスケファンとしての恩義を感じ「第ゼロ感」はちゃんと聴きました。

ホワイトに移動して折坂悠太(band)を見る。10-Feet で寝られなかった分、ここで一気に眠気が来て、PA裏あたりの人がいないエリアでほぼウトウトしながら見ることになった。おかげで内容は殆ど覚えていない。

Noname のスキル、Beth Gibbons のチャーム

軽くメシを腹に入れて、レッドマーキーで Noname を見た。MCなのかラップが始まっているのかわからないくらいめちゃくちゃスキルフルなフロウに圧倒された。むちゃくちゃ上手いことだけはわかるのに、決して頭でっかちな感じはなくてわかりやすく踊れる。60分ほどのセットをひたすら踊り尽くした。

終わってすぐグリーンステージに移動。Portishead のシンガー、Beth Gibbons のライブ。ベス本人は黒のタンクトップににカーゴパンツみたいなラフな出で立ち。酔っ払ってるのかってくらいフラフラ歩きながら酒を飲んだり水を飲んだりしてて、これがあのポーティスヘッドの……? と思ったが、いざ曲が始まるとその変わりようにやられる。音楽的にはかなりハイブロウな曲ばかりだし、バンド(というかオーケストラ)も手練れの感がすごかった。ストリングスやパーカッション含めてキリキリとするような緊張感のある曲がめちゃくちゃカッコよかった。最終盤に披露された Portishead の「Roads」が始まったときには、不要なものが全て削ぎ落とされ、あまりに張り詰めた空気に鳥肌が止まらなかった。
曲が終わるとその都度飲み物を口に含みながら、カンペをチラ見して「みなさんは、やさしい! ありがとう!」とニコニコと語りかけるベス・ギボンズはめちゃくちゃチャーミングなのに、いざ歌い出すと異常なまでの妖気を放っていて、体験としてかなり衝撃的だった。今年のソロアルバムも好きで結構聞いているけど、このライブを見るとどうしても Portishead としてのライブを一度見てみたいと思わざるを得ない。

演奏時以外はニッコニコのベス・ギボンズ

2日目のヘッドライン

さて、グリーンステージ後ろ奥に場所を取り、この日のヘッドライナーに備える。そう、Kraftwerk ……ではなく、パリオリンピック男子バスケ、日本代表vsドイツ代表の試合が始まるのだ。持参したタブレットで NHK+のアプリを開く。ドイツのレジェンド・アーティストのライブを遠目に楽しみながら、フジ会場でドイツ戦を見た。本当はクラフトワークだって Sampha だって見たかったが、今の僕にはバスケのほうが優先されるのは明らかだった。
終盤までW杯王者相手に善戦を繰り広げた日本代表の戦いぶりは見事だったし、同宿の友人と一緒に応援するのはめちゃくちゃ楽しかった。

めちゃくちゃ遠くから見たクラフトワーク

試合後は、本当なら深夜のレッドマーキーや、パレスでの YIN YIN のライブあたりを見るつもりだったのだが、完全に頭がバスケ以外のことを考えられなくなってしまったので宿に帰った。温泉最高。


[day.3] 7/28 (Sun.)

伊達男・拷問・砂糖漬け

8時前くらいに起床。朝ご飯におにぎりと野菜スティック。牛乳とコーヒー。野菜スティックは初めて売り切れ前に買えた。生野菜不足に陥りがちなフジロックにあって、これは非常にありがたい。
初日は浮かれた勢いで辛いものやスパイスの効いたものを食べがちだが、フジロックも最終日になると身体にやさしいものや甘いものが欲しくなる。ということで、オアシスでシナモンロールを買った。疲れた身体に糖分が染みる。No Party For Cao Dong という台湾のポストロック・バンドをグリーンステージで見た。エモーショナルでスケール感のでかいバンドだった。
途中離脱し、フィールド・オブ・ヘブンへ。今年はここまでほとんどヘブンのアーティストを見ていなかったが、菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラールを見た。まあまあ暑い中、タキシードを着込んだ菊地成孔とオーケストラの皆さん。ヘブンの音響がとても良くて楽しかった。

めちゃくちゃ陽が差したり、雨が降ったりのライブ

またグリーンステージに戻り、今度は Rufus Wainwright のステージを後方から見た。見た、というより、音を聞きながら完全に寝っ転がってまどろんでいた。3日目ともなるといかに自分の体力をマネジメントできるかが重要だ。初めてこのフェスに参加してから自分も10歳以上歳を重ねている……。
この最終日は雨がサッと降っては止みを繰り返していて、日中から涼しく、砂埃も押さえられて、理想的といっていい天気。入口でもらったフジロックオフィシャルゴミ袋を芝生の上に敷いて、リュックサックを枕に寝っ転がって聞く「Hallelujah」は至福の時間だった。前日の 10-Feet の爆音と比べるとなおさら。このスロットにルーファスを配置したスマッシュの名采配である。フジロックで印象に残るのはけっこう、こういうのんびりした時間のことだったりする。

しばらく見るものを決めていなかったので、奥地のオレンジ・カフェのテントで雨宿りしながらなにかつまもうと移動。しかし、同じことを考えている人で結構混雑しており、特にトイレはかなりの渋滞だった。僕はたばこを嗜まないので人から聞いた話になるが、オレンジ・カフェにある喫煙ブースは中にソファーも空調もあって大人気だったそうだ。スポンサードしているメーカーもかなり力を入れて利用者に営業していたようで、オレンジの混雑の一因でもあったのかもしれない。

ホワイトに移動して The Jesus And Mary Chain を見た。演奏がヘタとかギターが太ったとかそんな評判ばかりを聞いていたのでさほど期待せずに向かったが、確かに集まった観客も「レジェンド・バンドを一目拝もう」というギラついた視線よりは、「懐メロを聞きに来た往年のファン」的な温かいまなざしが中心だった気がする。一応、JAMC のアルバムの有名どころは聞いているが、改めてライブでベスト・ヒットなセットリストを体験すると、そのソングライティングの素晴らしさに感動した。一方で、初期の暴力的なフィードバック・ノイズのイメージはライブでは再現されず、音量はかなり控え目。思えば、僕が今年見たホワイトステージのライブは、他のステージと比べると相対的に音量がおとなしめだった印象がある。個々の楽器の音の良さは変わらずだが。

グリーンで RAYE のステージをチラ見した。これはちゃんと見ればかなり良さそうなやつだった。ノーマークでした。が、次がこの夏のメイン・アクトなので、万全の体制を整えるべくトイレと食事を済ませる。

Fontains D.C.、今年のフジロックの覇者

もともとアルバムも大好きだったが、今年の来日公演での熱狂的な感想を見て、今年のフジロックで最も楽しみにしていたのがこの Fontains D.C. だった。左側最前列を確保し、サウンドチェックの爆音で期待に胸を膨らませた。
ライブは本当に良かった。直線的なポスト・パンクが基盤にありながら、リアム・ギャラガーやイアン・ブラウンのようなロック・スター然とした振る舞いで観客を煽るフロントマンの存在(タンバリンを持つのがいい)、バラエティに富んだ楽曲の幅(赤髪のギタリストが楽器を持ち替えるたびに様々なニュアンスがライブに追加されるのは本当に楽しかった)がある。
「A Hero's Death」では観客からギタリストを登壇させる定番のパートもあったが、気づいたらステージに一人増えていて、サラッと客席に戻っていったので、よく知らない人はサポートメンバーかな? とでも思ったんじゃないか。笑 真っ赤なバラを観客席に投げ込むパフォーマンスもあったが、ほとんどMC無しというストイックさと、そういうサービス精神とがチグハグなところもかっこよかった。「Boys In The Better Land」で一体になったステージの疾走感はこの日のハイライト。
ラストの「Starburster」で文字通り燃え尽き、ここで僕のフジロックは実質的に終わった。最高だった。

何も言えない

長いクロージングアクト

ずっと真夜中でいいのに。がパフォーマンスしているグリーンステージを通り過ぎ、足は自然に奥地に向かっていた。夜のフィールド・オブ・ヘブンは世界で一番美しい場所だ。今年はまだ夜のヘブンでライブを見ていなかった。
Celebration of the Meters のライブを見ながら友人と乾杯。ミーターズも間違いなく最高の演奏をしていたが、先程の Fontains D.C. の余韻が抜けないまま、ミラーボールの祝祭感の中でふわふわとした気分を味わっていた。
その後、ホワイトで Kim Gordon のライブを見た。今年71歳とは誰も信じられないんじゃないかというくらい、誰よりも鋭く、誰よりもかっこいい女性がそこにはいた。インダストリアルな爆音を出しながらも全く耳に負担を感じさせない、ホワイトステージの完璧な音響にも改めて感動。疲れてくるとこういうタイプの音楽はだんだん受け付けなくなってくるものだが、全身にノイズを浴びて身体が浄化されていくようだった。
最後は再びヘブンにて The Allman Betts Band 、煮て濾して集められたような特濃のアメリカン・ロックを浴びて大団円。閉店間際のルヴァンでスコーンを買ったら、ラスクをサービスしてくれた。

グリーンステージにて「Don't Look Back In Anger」が鳴っている横を通り抜け、ガラガラのオアシスにて今年食べそこねていた五平餅ときりざいめしを無理やりかき込み、今年のフジロック終了。

総括

ベストアクト

5. 北村蕗
4. King Krule
3. The Killers
2. Beth Gibbons
1. Fontains D.C.
1位は決まり。ダントツ。キラーズのライブはヘッドライナーとして満点だったけど、その全ての感動よりもベス・ギボンズの「Roads」の感動が上回った。

その他総括

今年のフジロックはまず何を差し置いても天候に恵まれた。初日・二日目はほとんど雨がふらず、かといって酷暑というほどでもなく(陽が差すと暑かったが)、三日目は小雨が降ったり病んだりで暑さはほぼ感じなかった。かといって夜に冷え込むでもなく、1日中同じ格好(半袖+タイツと短パン)で過ごせたのは非常に快適だった。混雑も少なく、飲食やトイレもそれほど並ばなかったのも大きい。
準備していったものでは、新調したゴアテックスの帽子(Mont-bellのやつ)が良かった。ちょっとくらいの雨なら雨具なしでやり過ごせるし、紐付きにしておけば無くす心配も少ない。同じく新調したナイキの防水トレッキングシューズは、足がむくんでくる夕方以降にちょっとつらくなってきて、自分には合わないなと感じた。とはいえ、今年はこの1足だけで前夜祭含む4日間をやり過ごすことはできた。
スマホの電波については、自分の経験したフジではこれまでまともにつながったことがなく、現在のメイン回線の楽天モバイルも全然ダメだった。が、会場に入ってから急いで契約した povo の回線は混雑下でもほとんど途切れず快適だった。待ち時間の暇つぶしや友人知人との合流では、やはり安定した回線があるとぜんぜん違う。何より、これがなければ会場でクラフトワークを聴きながらバスケ観戦することは不可能だったろう。あと、友人からの招待コードを活用して無料で3日間(100GB)使えたのが最高だった。
今年初めて水筒やペットボトルホルダーを持参してみたが、予想より活躍しなかった。昨年と違って冷たい飲み物は比較的すぐ手に入ったし、これは無くともよかったかな。

食べたもので美味しかったのは、
・ぞうめしやのクレープ(オアシス)
・牛すじビリヤニ(オアシス)
・ジャークチキンオーバーライス(オアシス)
・石本商店のあいがけスパイスカレー(オレンジ・カフェ)
そして何より、現地でご一緒してくれた友人たちと帰り際に食べたへぎそば(中野家)が最高でした。

総じてめちゃくちゃ楽しかった。来年も行けたらいいな。