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Lutrous + 25 応援コメント


かつて大橋さんは飛浩隆『グラン・ヴァカンス』をダンス化するという試みを行ない、私も多少関わった。
言葉で書かれた小説を、言語を第一要素とはしないダンスに変換しようとするのは、野心的ではあるが、もちろん先例がないわけではない。むしろ色々とあると言ったほうがいいだろう。重要なことは、だがしかし、大橋可也&ダンサーズによる『グラン・ヴァカンス』が、過去の「小説のダンス化」とは著しく異なる異形の舞台に仕上がっていたということだ。
では、マンガはどうか?
今回のダブルビルは、いずれも市川春子のコミック作品にインスパイアされたものである。私はこのうち、『宝石の国』をモチーフとする『Lustrous』のショーイングを観た。それはやはり、予想していたものとはまったく違っていた。
それはいわば、市川春子の絵と文字が紡ぎ出すドラマツルギーを一旦、分子レベルにまで解体し、そこから或るエッセンスを抽出した上で、ダンサーの身体に実装させたかのようだった。
それはまぎれもなく「大橋可也&ダンサーズのダンス」であり、しかし同時に、確かに市川春子の『宝石の国』の世界観を凝縮されたかたちで表現していた。間違いなく今回もそうなることだろう。
上演を観るにあたり、『宝石の国』と『25時のバカンス』を読んでいる必要はない(もちろん読んでいてもよい)。
真の問題は、何がダンスを起動するか、なのだから。
そして、そのダンスが、それを目の当たりにするわれわれに、如何に作用してくるか、なのだから。(佐々木敦)


市川春子「宝石の国」をモチーフにした「Lustrous」は、わずか二人のダンサーにあの複雑怪奇な物語を背負わせ、人間関係の機微を描くことに成功していた。アニメも大好きだが、そこには実際の肉体を媒介とすることでしか生まれない説得力があった。終わりのない戦争の残酷さを、肌身で感じて頂きたい。 (綾門優季)


大橋可也はかっこいい。いきなりそんなことを言われても困ると思うがほんとうだ。何も知らない人ならまず、名前がかっこいいことに気づくだろう。名前からしてかっこいいなんて狡いという話だがそこに佇んでいるだけで、つい凝視め、見惚れてしまう。すべての所為に無駄がなく、流れるように動くふだんの仕草がめっぽうに美しい。動きに音を感じさせないという秘めやかさ。何かに似ている……。と思ったときにそのとき読んでいた市川春子の『宝石の国』の金剛にそっくりだと気がついた。アニメ化される、ずっと前の話で、発売されて間もない1巻を無理矢理、大橋さんに渡したのはわたしだ。ダンサーズと金剛と宝石たちの関係は似ている。2.5Dの舞台やアニメではなく、ダンス作品として『宝石の国』の舞台化が可能なら____。アニメではなく、縛られた生身の身体でこそできる表現があるはずで、飛浩隆のSF小説『グラン・ヴァカンス』を舞台作品にし、すごいすごいものを観せてくれた彼らなら____一体どう、表現するのか。わたしはそれを観たくて観たくて仕方がないのである。(吉田アミ)


敬称略/順不同




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