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海外ドラマ『シックス・フィート・アンダー』- 最終回がスゴイ

留学中、ふとしたことで落ち込んだり、自分の悪い面に目がいってしまうことがありました。そんなとき出会った作品が『シックス・フィート・アンダー』です。

心にぶっ刺さりました。

失敗するのは当たり前だし、後悔してもしょうがない。

こんな単純なことですが、救われました。

アメリカの大学では勉強についていくのに必死で、図書館に缶詰のことが多く、土日は10時間ほどこもっていることもありました。休憩中にブラブラしていると、ふとDVDコーナーで『シックス・フィート・アンダー』を見つけました。日本のスカパーでやっていて数話見たことがありました。その後が気になっていた作品ですぐに借りました。

単語や内容は上級レベルなので、英語字幕をつけてかなり必死に見ました。そうしたこともあり、記憶に強く残っています。

HBOより

最終話を見てこれほどスッキリした海外ドラマはありません。

『シックス・フィート・アンダー』とは

家族経営の葬儀社「フィッシャー&サンズ」をとりまくヒューマンドラマです。

通常の海外ドラマは1シーズンで24話ほどありますが、1シーズン12話ほどなのでかなり見やすいです。2001年~2005年までのドラマ(全62話)なので映像に古い感じはあります。

作品内では「現代は本当の姿を隠して生き抜かなければいけない息苦しい時代」と解釈されています。だからこそ、心を棺桶のように深い場所に閉じ込めなければいけない……。

タイトルの「6 Feet Under」とは「182cm(6feet)下」という意味です。この深さは棺を埋める位置です。ミュージカル「シカゴ」でも家族が死んでいることを表すために使われています。(「The Press Conference Rag」という曲)

葬儀社がテーマであると示しつつ、心の動きも表しています。

人生は理解できないことが起こります。誰しも痛みを抱えながら生きているし、ツライことがあっても生きていかなければいいけない、と思えるドラマです。

ブラックコメディの要素が強く、内容は過激なので、小さな問題がバカらしいと思えたりもします。

HBO制作

有料チャンネルHBOの作品のため、製作者がかなり自由に表現しています。

HBOは基本的にスポンサー収入ではなく、視聴料のみで運営。スポンサーの意向に関係なく、自由に作品をつくることができる。民間放送(誰でも見ることができる)ではないため、過激な性描写や暴力シーンも多く登場。

HBOの作品は『セックス・アンド・ザ・シティ』『ザ・ソプラノズ』『ゲーム・オブ・スローンズ』などが有名です。

あらすじ

人生に行きづまっている家族の物語です。

父ナサニエル・フィッシャーが交通事故で死んでしまいます。家族をつないでいた父の死をきっかけに、残された家族はお互いを理解していないことに気づきます。

エピソードの中で、父ナサニエルと息子ネイトのこんな言葉があります。

息子ネイト「父さん、あんたどんな人間だったんだ?」
父ナサニエル「そんなに気になるなら、どうして俺が生きているうちに聞かない?まあ、いい。聞かれても困ったからな。」

シーズンが進むほど話は複雑になり、登場人物の行動に腹が立ってきます。ですが、そこを乗り越えると感動が待っています。

エピソードは毎回、葬儀社に運ばれてくる遺体の、生前最後のシーンから始まります。

この描写が毎回とてもおもしろいので、一気に心をつかまれてしまいます。

登場人物

登場人物みんな、独自の人生観と観察眼を持っています。

クセが強くておもしろい。

長男ネイト:葬儀会社がイヤで逃げ、ハンサムを武器になんとなく楽しく生きている。35歳で人生を模索中。

次男デイヴィッド:大人になっても家族の中でイイ子であり続けようとする。厳格なキリスト教でありながらゲイというセクシャリティに悩み中。

長女クレア:家族から疎外感を感じている年の離れた妹。芸術家気質で、絶賛スれている女子高生。

母ルース:自分を押し殺しながら生きてきた。保守的かと思いきや浮気中。

父ナサニエル:初回で交通事故にあい死んでしまう。いろいろ秘密あり。

従業員フェデリコ:死体修復に芸術的なセンスを持つ。フィッシャー家にふり回される。

ブレンダ:高いIQを持つも奔放な家庭で育ったためどこか歪んでいる。ネイトとくっついたり離れたり。

ひとりでじっくり

誰かと分かち合うというより、自分自身と向き合うためにひとりでじっくりと見るような作品かもしれません。

最終話をみると「見ていて本当によかった……」と本気で思える作品です。見終わったあと、こんなにスッキリする作品はなかなかありません。

生と死にしっかりと向き合い、本質的に生きることを考えるきっかけになる作品です。

シーズン2のエピソード4にこんなセリフが出てきます。

生きていくうちには人と関わり合って相手を傷つけることだってあるの。
そうするあいだにごくごくまれにイイところが引き出されることもある。たいていは悪い部分だけど…。

このようになんとも納得してしまうセリフがたくさん出てきます。

「死」と「コメディ」の両立

人生は選択の連続です。「何を食べるか」という小さいことから、「どこに就職するか」という大きなものまで、選択の連続です。

人は選択を前にすると、頭の中で何通りかの選択肢を持っていると思います。『シックス・フィート・アンダー』では、その選択肢が妄想というかたちで現れます。

この表現がシリアスな場面にも出てくるので、笑ってしまいます。

また、「死」というテーマはとても重いのですが、登場人物の反応にも思わず笑ってしまいます。

キャスト

製作総指揮・原作・脚本・監督:アラン・ボール(『アメリカン・ビューティー』でアカデミー脚本賞受賞)

アラン・ボールが企画からつとめています。頭の中を見てみたいです。

役名:役者名(声優)

ネイト:ピーター・クラウス(桐本琢也)
デイヴィッド:マイケル・C・ホール(小野塚貴志)
クレア:ローレン・アンブローズ(斉藤梨絵)
ルース:フランセス・コンロイ(土井美加)
ナサニエル:リチャード・ジェンキンス(岩崎ひろし)
フェデリコ:フレディ・ロドリゲス(上田陽司)
ブレンダ:レイチェル・グリフィス(本田貴子)
ビリー:ジェレミー・シスト(最上嗣生)
キース :マシュー・セント・パトリック(志村知幸)

細かい表情まで惹き込まれます。やりがいのある作品なんだろうな、と伝わる演技です。

また、日本語吹替版では、母ルースの声を土井美加さんが演じています。

字幕版もイイし、日本語版もイイです。

ゲストに注目

ビッグネームや、演技力が評価されている俳優がゲストとしてたくさん登場します。

中でも、キャシー・ベイツが女優としても監督としても参加しています。相変わらずいい味です。

オープニングタイトル

アメリカのドラマの第1話はパイロット版といってお試し版のパターンがよくあります。

お試しのため、オープニングタイトルが作られていない場合が多いです。ちなみに、内容が約束されているドラマは第1話からオープニングが作られていることが多いです。

『シックス・フィート・アンダー』は第1話からオープニングがありました。

このオープニングが好きでした。最終話まで変わらないというのも好きでした。

残念なのは、日本で見ている人が少ない点です。

語り合える人がいないのが寂しいです。

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