産まれた日のこと

無痛分娩で産もうとなんとなく思っていた。
医学の進歩の恩恵は、受けるに越したことはないと思ったから。

予定日間近になった検診の日、
診察したら子宮口が既に3cmあいているらしい。
「それじゃあ明日、入院準備して朝から来てね」
と先生が言う。誕生日ってこうして決まるのか。

デパ地下でとんかつ弁当と、明日の朝用のスコーンを買って帰った。

ところが家に帰ると腹痛がする。
定期的な痛みになって、おそらく陣痛だろうと思った。
陣痛が進んでしまうと無痛分娩の麻酔針を入れられないと聞いていたので、
念のため産院に連絡したら「明日の朝来たら大丈夫」と言われた。
弁当を食べてお風呂に入って寝ようとしたが、痛みが気になって眠れない。
そうしている間に明け方になって、突然強い痛みを感じたので、
「うおおおおお」と叫んだら隣から夫が起きてきた。

予定時間より早いが夫の運転で産院に移動した。
思ったより痛そうだと驚かれてそのままLDR室に連行された。
分娩監視装置をつけると、なんと陣痛の痛さが数値化されて表示された。
定期的に痛くなるたびに「うおおおおお」と叫んでいたら、
助産師さんが来て「叫ぶよりお尻の方に痛みを逃がせ」と言う。
背中をさするとか、テニスボールで押すとかのイメージがあったが、
どうやらもうそのフェーズではないらしい。
幾度と波を越えただろうか、
子宮口が全開だから、もう産んだ方が早いと言われる。
いきんでくださいと言われ、コツをつかむまでに何度も波を越えたが、
何十回目で「もう大丈夫」と言われ、そこからぬるっと出てきた。
終わってみたら、家で叫んでから6時間くらいで誕生した。
あっという間のことで、麻酔は打てなかった。夫はずっといてくれた。

助産師さんは、他の仕事もある中で、
数分ごとに来る陣痛で私が叫ぶたびに声をかけてくれ、
一人じゃないと勇気づけてくれた。
一方でどんなに周りが励ましても産むのは妊婦自身だ。
陣痛に襲われて、叫んだら誰かが助けてくれると思っていた。
でもどんなに叫んでも、自分が力を入れなければ産まれてこない。
陣痛の中で何度も、自分が越えるしかないのだと悟った。
そのたびに冷静になって、なぜか叫びも檄に変わっていた。

子供を持つということは悟って越えることなのだと、
実はこのあと何度も思うことになる。
これはその最初の1ページのお話。

誕生日本当におめでとう。これから一緒に成長していこうね。

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