1ヶ月検診

夕方から産院の予約をしていた。
夫が車で送ってくれると言っていたので待っていた。
待っていた、というのも、家の隣にパーソナルジムがあり、
子供誕生以降健康第一を掲げた夫はそこに通い出し、
その日は出発の直前までジムの予約を入れていたからだ。

出産直後に比べると見違えるほどに体調も戻ってきたこのころ、
だんだん夫は外出の予定を入れるようになり、
私と赤ちゃんと二人で留守番をすることも増えた。
留守番中はテレビも寝顔も見放題でつまらなくはなかったが、
顔色を見ながら昼食を取ったり、風呂に入ったり(入れたり)し始めると、
「なんだ一人でもできるじゃん、明日からよろしくねー」
と言われるには疲労が大きすぎる気がして、
かといって夫に外出を控えてほしいというのも違いすぎるので、
(夫は「赤ちゃんを見ておくから君も好きなことしておいでよ」と言うような人だし、私がそれをして笑っているのを一番望んでいるのだけれど、なぜだか私の心がまだそこまで至っていない)
ぐるぐる考えていた。

もう一つ考えていることと言えば、
赤ちゃんの頭の形の話で、
子供は出生時以降ずっと右を向いて寝る癖があったので、
右の後ろが絶壁に近い感じになってきた。
最初それを夫に言われて気づき、私も気になり始めた。
とはいえ日々のオペレーションが多すぎて、
やっと(右向きで)眠りについた子供を左向きに寝かせる術を私は知らず、
そんなときに(夫に)右向きを指摘されるのはつらかった。

そんなこんなで出発予定時間の30分前ごろに帰ってきた夫は
汗びっしょりで、
シャワーを浴びたら?と勧めたけどそのまま行くらしく、
ソファーと部屋とを行ったり来たりしたかと思うと、
見るからにふらふらとして、なんと突然トイレでぐったり座り込んだ。
驚いた。
とりあえず水を持ってきて、救急車が頭の片隅によぎったが、
しばらく座っていたらだんだん良くなってきて
普通に歩いて部屋に戻れるようだった。
とはいえ車の送迎で無理は禁物なので、
産院へは私と子供と二人で行くことになった。
(出かけに「向き癖の件を聞いておいて」と頼まれた。)

長らく使っていなかった配車アプリでタクシーを呼んで、
買って数日前に届いたばかりの抱っこ紐に赤ちゃんを入れ、
夫を心配しながら家を出た。
幸い赤ちゃんは静かに眠っていた。

検診は無事終了して晴れて卒業となった。
先生に元気でねと言われて初めて、実感がわいてきた。
感謝の言葉をうまく伝えることができなかった。


数日後、無事正式なマンスリーバースデーを迎えた。
退院した直後と同じマットの上で記念写真を撮った。
子供は無事肥えていた。

夫がいつものようにスーパーに買い出しに行くと言い、
家を出て行ったがしばらく帰って来ない。
仕方がないので赤ちゃんと寝ていて、起きたら晩ご飯ができていた。
「ケーキも買ってきたから食べよう」と夫が言った。

子供が寝てから薄暗いダイニングテーブルで二人でケーキを食べた。
おめでとう、こそ夫は言わなかったが、
いろいろな感情がこみあげてきて涙がとめどなくあふれた。
この日のことは一生忘れまいと思った。

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