退院
退院前日の夜も母子同室してみる?と聞かれたけど、
無理なので夜は預かってくださいと、やっとの思いで言った。
たぶんストレス性と思しき頭痛もひどくて考え事もままならない。
明日から家で過ごしていけるんだろうかという不安。
加えて、私と夫しかいない中で夫がどれだけ協力してくれるかという不安。
産後メンタルなのだろう、後者もわりと大きく思えた。
夫は私と同じでかなりの目的主義者なので、
本当に大事なときはやるが普段は手を抜くことしか考えていない人だ。
(たぶんお互い様なのでそれは心地よい方の意味)
特に家事は、私がキッチンに立てばもう十分だと思って夫は立たないし、
掃除はしなくても死なないのでほとんどしない。
だから入院の数日で、家が散らかっていないといいなと思っていた。
とはいえ明日からは私と夫以外にいないので、助け合っていくしかない。
結局ほとんど一睡もできないまま、退院日を迎えた。
退院の診察を受けると、血圧が今までになく高かった。
メンタルシートのようなものに回答して助産師さんと面談したら、
なぜか感情がわからなくなり号泣した。
とはいえ退院が延びるわけでもなく、
夫が車で迎えに来てくれてめでたく退院となった。
チャイルドシートに小さき者を乗せた。
なぜか道中大人しかった。
程なくして帰った我が家は想像をはるかに超えていた。
部屋の掃除は完璧、それに加えてたくさんのお祝いギフトが届いて、
大家族のクリスマスみたいにダンボールが積まれていた。
聞くと、それぞれがそれぞれに夫の友人からで、
中身はせっせと夫が選んだものらしい。
おもちゃや絵本やおくるみなど。
これからの成長を精一杯考え抜いた人からのギフトだった。
その中心で一際目を引く、娘の名前が書かれた風船は、
夫自身からのプレゼントと言っていた。
感情が飛び越えてしまってうまいこと涙にはならず、
ただただロボットみたいにありがとうと繰り返した。
これから私はこの人と、もう一人と一緒に家族になるのだ。
安堵と自信とこれまでにない感情がどばどば溢れた。
用意していたベビーベッドに赤ちゃんを寝かせ、
家のウォーターサーバーで作ったミルクを飲ませたら、すやすやと寝た。
ここからまた新しい日々が始まる。
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