十三機兵防衛圏という突然変異的怪作ゲームについて
11月28日に発売された十三機兵防衛圏に開始3秒で心をわしづかみにされてして、そのままコーナーポストにぶちかまされたのですが、インタビュー読んでこれはゲーム業界に突然現れる怪作だと確信したのでパッションをつづります。
・10年に1作か2作生まれ来る怪物
ゲームって面白い。ファイナルファンタジーやドラクエのような大作王道JRPG、夜を奪うとまで言われるCivilizationのような洋シミュレーションや、本当に広い世界を自由に旅できるTESシリーズやFalloutシリーズ。最近6がでたTropicoなんかも独特の毒のあるジョークが効いてて面白い。みんな大好きだ。
しかし、そんなゲーム業界でも際立って異質で、独特で、狂気を孕み、一般受けはしないけれど、刺さる人には魂のコアまでぶち抜かれるオルタナティブ・ロックンロールのようなゲームが生まれることがある。
芝村裕吏さんの「ガンパレード・マーチ」、今井秋芳さんの「東京魔人學園シリーズ」、イシイジロウさんの「428」大体10年に1・2作のみ生まれるそれを私は「突然変異的怪作」と呼んでいる。
そして、発売前からそんな匂いを強烈に放っていたのがこの「十三機兵防衛圏」だ。
・世界設定の風呂敷が馬鹿みたいにでかい
世界設定の風呂敷が馬鹿みたいにでかいのは、突然変異的怪作の特徴の一つだ。
十三機兵防衛圏でも「タイムトラベル・怪獣・MIB・宇宙人・ゴツゴツの巨大ロボット・ザッピングシステム・アンドロイド・しゃべる猫・大日本帝国軍人・ヤンキー・スケバンデカ・焼きそばパン」と一見無関係なキーワードが無数にちりばめられていて、それでいてすべてが有機的につながりをもっている。ゲームをしていくうちに、伏線が回収され、一目見ただけでは気が付かなかったつながりを見つけ、ステレオタイプなキャラクターに見えたものに血が通い始める。
・個の異常な情熱と努力とこだわりが生む奇跡
複雑な世界観とシナリオを持ったゲームを破綻なく作ることは難しい。小説を書いたことがある人や、TRPGのシナリオを書いたことがある人、もしくは中二病時代の妄想力が人より強く自分のオリジナルワールドで世界を何度も救ったりしていた人はわかると思うが、頭の中ではいくらでも世界を広げられても、それをほかの人にも分かる形で現世に呼び出すことは極めて難しい。
馬鹿みたいに広げることができる人はいても、たたんで包んで人にお出しできるようにするには、異常な情熱・努力・こだわりが必要になる。その片鱗を感じることができるのが、下記の神谷盛治さんのインタビュー漫画だ。
1コマ目から伝わる迫力。これ見てるだけで胃が痛い。
「努力の甲斐があってやっと皆さんにお届けできます!」とか、「今から皆さんの反応が楽しみです。もちろん僕も発売日にプレイしますよ!」みたいなさわやかなノリは一切なく、ほぼこの調子でインタビュー漫画は続いていく。
産みの苦しみのリアルがここにある。
・軽々しく続編を期待できない名作候補
これだけ働き方改革が叫ばれるなかで、この作品をシナリオライターを外注して作っていたらこの作品は生まれなかったと思う。才能を持った人の情熱とこだわり、そしてそれを支えるスタッフの根気、任せたATLUSの英断。
すべてのピースを最後まで空中分解させずに生まれたこの作品に私は魅了されている。
いや、ほんとすげえ大変だったと思う。だからこそ、続編出たら絶対うれしいけど、続編作ってほしいと軽々とは言えない。
ただ、この作品と出会えたことに感謝し、今日も今から夜更かしをする。会社は何とかなるだろ。
・ネタばれのないうちにやって、語り合いたい
伏線とシナリオが命のゲームなので、ぜひ攻略サイトとか見ずにやってほしい。そして、1月くらいに語り合いたい。なんでデスストランディングと新サクラ大戦の間に発売なんだ…不運すぎる。
万人に受けるかわからないけど、これが届くようなゲーマーにはずどっと刺さるので、ぜひ買って語り合いましょう。