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Fable-Lil Louis

リルルイスが出した最後のアルバム、『 Two Sides To Every Story』からシングルカットされた曲で、彼の燦然と輝く栄光の名曲群に肩を並べる神曲の一つだ。

ルイのSOUL HEAVENに同アルバム収録Feels Good Just To Feel (Patrice)がクレジットされ、影響力の高さを伺い知ることができる。


Lil Louisという天才

シカゴハウス好きっす!ていうヘッズならLil Louisもシカゴを代表する、ハウス創成期に活躍したオリジネーターとして絶対に通るはず。一度は耳にしたことがある「French Kiss」はお茶の間にも届いた(?)神TUNEの一つ。PVあるし。

今でもかかるとそりゃもうフロアがひっくり返る。これにロングmixした時の破壊力って言ったらそれはそれは脳汁全開必死。OsunladeのCarl Craig - Sandstormsとフレンチ・キスのLongMixはぶったまげました。そりゃ反則ですよ。最高。

ツウはこっちも大好き。
Lil Louis and The World -  I Called U The Conversation

こっちはシカゴ牛耳るTerryHunterのMixで「なんちゅうカッコよさや」と発狂したのも今は昔。こうして並べるとテクノらしい構成のくせに音が艶っぽくて一筋縄でいかないトラックばかりですね。そんなこんなで、Lil Louisの偉業はハウスを聞いてると必然と知ることになるわけである。
そんなさ中、いわゆるレジェンドと呼ばれる一人でもあった彼はアメリカでレストランを開業し、しばらくDJ業から離れる、という噂が真しとやかに囁かれたのであった。ちゃんとコケたらしい。ほんまかいな。

デジタルとレコードの狭間で

Juno, beatportなどをプラットフォームに打ち込みと呼ばれるトラックはどんどんデジタルリリースが増え、レコード店は軒並み閉店していく。オレンジ赤マンハッタンが無くなり、DMRが無くなり、実店舗はほとんど姿を消し、レコードはツールとしてではなく文化としてのレコードに変遷していった。MP3がどうとかデータとアナログの音の違いもやいのやいの論争されてたけど、凡人の耳しか持ち合わせていない私は当時どっちにもいい顔しつつ結局、新譜が無くては死ぬ、という結論に達しデジタル音源バカ買いババアが無事爆誕した。
とはいえアナログ、デジタル論争は最初の頃はまだしも、そうも言っていられない状況になっていく。単純に作る側がレコードをプレスしなくなったのだ。日本では当時まだまだタンテが主流なクラブばかりだったが、海外のブースを見るとそもそもタンテなんてない。CDJ×4-ミキサー、みたいな。レコードでDJというスタイルが、もはやクラブDJとしては全く別の見世物になっていたのである。自分のデジタル移行はかなり遅い方だと自覚しているが、それでもプレイ環境はまだまだアナログ主体だった記憶がある。(今はそんなことないよ、台数少なくてもグレート低くても置いてあるところの方が多い。)
Seratoの登場も大きかった。わかりやすく痒いところに手が届くデジタルツールはジャンルの垣根を越えて多くの人達に選ばれていった。スクラッチとかそういうパフォーマンスやテクニックを必要とする層にヒットした感はすごくあった。欧米組はさすがというか、合理的なものに流れていくのが早いな〜と思いました。

つまり、日本の主たるNYC HOUSEリスナーはアナログ世代が多く、また若い世代もレコードが入口だったりするので旬な音が干される、昔のままで音楽が止まっている、という状況が生まれたのである。

そんな転換期も末期だった頃、彗星のごとくリリースされたのがこの曲である。

この頃Chicagoマンセーだった私はジャケならぬGUで即買い。シカゴ・声・レジェンド、好きな要素てんこ盛りな上にあの「一筋縄でいかない感じ」がある!
なーんて鼻膨らませて楽しんでいたけど、想像以上に影響力があった曲だと知るのに時間はかからなかったのだった。

レコードでリリースされたということは日本のHOUSEリスナーに確実に届いたのだ。特に喜ぶべきはアナログカルチャーに魅せられた若者に等しく記憶されたこと。
あの時代にこのメンツでよくぞレコードリリースしてくれたものです。間違いなくHOUSEの首の皮一枚、微かな道が繋がったと今でも思っている。

そしてアンセムへ

この曲の素晴らしさは聴けば良いだけなんですがなにより特筆すべきはRemix勢のメンツでしょう。
HOUSEの父ことGOD Frankie Knucklesがクレジット。当然シカゴ厨だった私はアンソニーニコルソン、GUのトラックを鬼ヘビーしていましたが…、NYCのMIXを聞くうちに、おや?FKの方ばっかりかかるぞ?!っていうかよくかかっているな?!!!
そして何より、ジャンル外の人間が「この曲ええな」と反応したのだ!あのMixmagの映像見せられて遠い目をしていた彼が。

結局Louie Vega

2014年(たぶん)にAirでOpen To LastでLoui Vegaが降臨。ちょうどこの頃私はデジタルでゴリゴリ新譜買っていて、ネットラジオも結構頻繁にチェックしていた。RootsNYCっていう神ことKevinHedgeとLouieがやっていたイベント兼冠番組がWBLSで放送されていて、どういう仕組みだったか未だにわからないけどすぐにMixcloudにUpされるので良く聴いていた。ので、Vega様神様仏様、死ぬまでに絶対にDJを拝むんだと、人生2回目くらいの代官山へ出陣したのであった。
その日の入りはまあまあ良い方で、でもやっぱり盛り上がるのがEOLとか2000年初期の頃の音以外反応薄くて「やっぱり…」て思ってたんだけど唯一フロアが沸きかえった新譜がこのFableだった。この瞬間に私の中でレコードリリースの偉大さとこの曲の価値が激変したのである。今振り返ってみても本当に忘れらない瞬間だった。玄人っぽい人も、20歳くらいの若い人たちもみんなの顔がぱ~~って明るくなって上向くんだよね。内側から出てくる喜びみたいなやつ、あれがフロアに一瞬で広がっていって景色が変わっていく感じ。
何よりも大事な「曲を知る」というシンプルな仕組み。これがとにかく重要で、恐らく未来永劫に必要不可欠なピースであると認識したのであった。これ以降の私はどんどんあたおかになってはいきますがそれはまたの機会で。
Airという箱についてはそれだけでひとコンテンツ作れるぐらいの歴史と役割があったと思っていて、またいつか文章にできればと思います。ひたすら静かな道を歩いた先にいかついAirの店員さん、でも超やさしい、みたいなのをうっすら覚えている。本当に閑静なエリアにあって、坂道と住宅、小奇麗な建物を抜けた先にあったような。その辺の記憶はぼんやりとなってしまった。早く入り過ぎたせいでビール頼むと1個ついてくるみたいなサービスあったんだけど同時に2本渡されて意味不明だった。いい思い出だ。

文句垂れたけどEOLフロアでかかるとめちゃめちゃいいんだよなぁ…


Louie VegaがかけるということはNYCのスタンダードであるということ。著名なDJのMIXでそれはそれは五月雨式にかかるかかる。なんならこの曲1曲だけでも満足できんじゃね?というくらいにはローカルでもゲストDJでもオンラインでも我々のHOUSE MUSIC という矜持を最高潮に高めてくれた。

この曲はかの御大が残した「Tears」や「Move Your Body」「Can you Feel It?」のようにいつまでも輝き、刺さり続けることでしょう。


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