「この生命誰のもの」劇団四季 2013-01-30

2013-01-30
「この生命誰のもの」見てきました。
劇団四季60周年を飾るこの年、第一弾!・・・と銘打つには重くねえか!?
という、尊厳死をめぐった演目です。

劇団四季のストレートプレイは賛否両論ありますが、あの言い回しも様式美といいますか、能や狂言のようなスタイルだと思うのです。
あの言い回し、最初は「ええ?!」って思いますが、舞台が進むに連れて気にならなく…むしろ、あのおかげで一字一句内容が入ってくるので、語尾や表情や間に込められた役者さんの気持ちを汲み取る余裕が出てくれば、「内容を明確に伝える言い回し」というのは作品を感じるのにとても助かるのです…。
よく小劇場などで「今なんて言ったんだろう?」と気になって内容が入らないことも多々あったりするので。
まあ、賛否両論あるのは否めませんので馴染めなかったらそれ以前の問題なのですが、幸い自分は気にならない便利なコです。

今回の作品、原作が外国脚本とは気づかないほど日本人視点に作られていて、外国戯曲にありがちな「文化や考えのちがい」を感じさせませんでした。
「ちがい」を感じるとしたらジェネレーションギャップでしょうか…。
舞台背景が古いのと、言い回しが古い(脚本演出がおじいちゃんだから・・?)のにツッコミたくなりつつ…

作品としては、どの人物も「いそうな人」であり、どの人も「患者のことを思ってる」結果であり、どの意見も正しいがための対立があり…
怒鳴ったり感情のぶつけあいはないけれど、確実に「大人の喧嘩」でした。
しかもぶつけてるのはエゴだけど決して自分勝手という意味のエゴではないという…。

四季のストレートプレイは、演者さんが感情を爆発することはなく、常にコントロールされた状態での演技であり、アドリブも許されない抑圧に物足りなさを感じるけど、脚本・演出の言いたいことは正しく伝わるという作品になってると思います。
今回も演出の意図を感じる素敵な舞台でした。
その中に、役者さんの細かな表情の動き、言葉尻で感情がちょこっと見えた時、自分の中で倍増して感じる…見る側の感受性に訴える作り方をしているなあと思います。

今回、運良く最前列で観れたのですが、主人公早田役の味方さんの眉の動き、目線、瞬きの頻度…素晴らしかったです。
思い通りになったのにあの表情とか……

しょっぱなから重いテーマの内容でどうなるかと思いましたが、いや、内容は医療用語や法律の討論という愉快な内容ではないはずなのですが、観劇後、爽やかでスッキリした感じになれる興味深い舞台でした。

■『この生命誰のもの』 (自由劇場)
早田 健(患者) : 味方隆司
シスター朝田(病棟婦長) : 大橋伸予
里村恵子(看護学生) : 服部ゆう
田原洋介(看護助手) : 谷部央年
北原真弓(担当医 研修医) : 野村玲子
江間隆司(集中治療部長 主治医) : 志村 要
権堂令子(医療ケース・ワーカー) : 中野今日子
森山敬二(早田健の弁護士) : 斎藤 譲
土屋 弘(精神科医) : 吉谷昭雄
川路彰彦(早田健の弁護士) : 勅使瓦武志
馬場 晃(精神科医 院外) : 星野元信
安藤一郎(病院の弁護士) : 志村史人
三村判事(裁判長) : 山口嘉三

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