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冬への覚悟

 まず大きな反省点として、市からは「協力のお願い」と「要請」ばかりで、現在進行形で対応していることへの中身と方針が市民にリアルタイムに届いていなかったことがあげられている。また、雪の降り方にムラがあったために、市から受託されている業者の除雪作業実績(作業回数)は、過去の大雪の年と比較すると少ない。最終的な雪堆積場への搬入量は過去5年間平均を大きく上回り、最高量を記録したことを踏まえると、北友舎のような民間の除雪業者による搬入量が増加したことが伺える。これは、札幌市の委託通りに業務を行っている除排雪業者が、民間の業者に比べて柔軟に対応できなかったことが可能性として大きいかもしれない。
 市としては、毎年事前に除排雪計画を組む。市との契約除雪業者は10㎝以上の降雪があれば幹線道路など、市民のライフラインを守る道路を除雪し、雪山が既定のラインを超えれば排雪作業に入る。それ以外に、パートナーシップ排雪のように、町内で除排雪を担っている生活道路の除雪で積まれた雪を、町内会の要請で排雪する仕組みがある。道幅が10m未満の場合は札幌市と町内会が費用を分担するのが決まりだ。 
 パートナーシップ排雪業務は例年2月以降に行われることが多い。ところが、今年は通常業務として行わなくてはならない幹線道路と、各町内会自治体の生活道路の排雪タイミングがいっぺんに訪れてしまった。市と契約している業者は幹線道路を優先し、それも市の決定に従い7割除雪でこなすしかなかった。そのうえ市街地に近い雪堆積場は1月下旬から2月の間に次々と上限を超えてしまい閉鎖され、郊外まで長いトラックの列ができた。帯広や釧路から来た応援のダンプトラックが何時間も順番待ちの渋滞に巻き込まれていた。苦肉の策とはいえ現場としても当惑したことだろう。
 一方で、今回殺到した要望・苦情には、町内会費を預かり運営しているその地区の首長の方々など責任感ゆえ排雪を要請した事例も含まれていることだろう。そのことをふまえてか、検討会では大雪の時はパートナーシップの区分けは中止し、状況に応じて臨機応変に札幌市が生活道路の排雪を担う、ということになった。
 パートナーシップ排雪制度は1992年から始まった制度で、それ以前、昭和40年代からある排雪トラック無償貸出制度とは別に機械式の排雪を安全に生活道路で活用する制度だ。どちらも一回きりしか利用できない制度なので、民間の除排雪受託業者への依頼が年々増えているのはそういった制度上の「動きにくさ」も関係しているかもしれない。
 札幌市の4回にわたる検討会の資料から導かれた対策を参照すると札幌市の都市機能を長らく支えていた除排雪管理ノウハウが、「臨機応変さ」への移行をしにくくなっていることが伺える。大雪の判断、作業優先順位の判断など、市の策定が今後進み、作業方法の見直しが図られていくだろう。その過程をただ見守り待っているのか、自分でその仕組みを回すために何が出来るのか考えて、行動を変えていくのか、雪の街に暮らす市民として問われているのではないだろうか。
 もう間もなく寒さが増してきて、雪虫が初雪を知らせてくれる。先人が使った雪踏み靴や、馬にひかせて圧雪に使ったという三角そりなどを郷土資料館や博物館などへ赴いて眺めてみるのはどうだろう。、昔の生活に思いを馳せると、不思議と冬の生活に覚悟が決まるものだ。


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