人間はよく首が千切れる。

晩濁.

昨日小説ヲ読破シタと申しましたが何をかと言うと
白井智之氏の『名探偵のはらわた』(2023)
です。

読後感が生暖かいうちに読書感想文を少し。


美しき幾何学的"伏線"

著者の作品で読了したのは『東京結合人間』(2018)に続いて今作が2作品目となりますが、
『東京結合人間』の時には溢れんばかりの血肉に塗れて見えづらかった謎と推理で綿密に組み合わされたミステリー小説の骨格部分が、本作では眩いばかりによく見えたと思います。
その美しさたるや。ガラス細工の蝉の羽を想起しました(何故)。

正味はじめは著者のグロテスク表現に心奪われ作品制覇を目指し現在手当たり次第に著作を読んでいるわけですが、
徐々にミステリーの気持ちよさを感じはじめております。本作の参考文献で古典を学びつつ、他の現代ミステリー小説も読んでましょう。



グロテスク表現やトンデモ設定はその作品のジャンルを表すものではなくあくまで作家性なんですよね。私はよくその作家性にばかり囚われ、訳もわからず模倣し、結果なんだかよくわからないゼリー状の赤い塊ばかりを生み出しているような気がします。
その塊は生み出された直後は自分の焦がれたグロテスクをよく表現できてるのかもしれませんが、時が経てば乾き、それがなんだったのか、どこからやってきたのか、私が何を表現したかったのかも分からない乾涸びた赤黒い瘡蓋みたいな滓になり
嗚呼もう恥ずかしい…こんな滓恥ずかしい…と思って消してしまうのです。そういう作品とは名ばかりの何かがこれまでの歩いてきた道の後ろにいくつか取り残されてます。
これを誰かが拾って、「美しい」なんて言ってくれる日は多分ないのです。
だから今から歩いていく道のりで骨を作っていきましょう。完成から時を経ても形状を保てる骨に。そしていつかは、今度こそは、誰かに「美しい」と拾ってもらい、その美しさがまた誰かに広まればいいな。


また明日も書きます。

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