「サービス」と「心」の関係について

こんばんは、長文おじさんです。
みんな大好きASMRや私の仕事の一環であるマッサージ、他には美味しい料理を食べたとき、旅館でおもてなしを受けたときなど、満足度の高いサービスで心が満たされた経験がみなさんあるかと思います。
この心が満たされる体験というものを実現するために、よく「心を込めて〇〇します」という表現をしますが、これは半分正解、半分言葉足らずだと私は考えています。
なぜなら「良いサービスは技術により作り出され、安定した技術と心は直接関係しない」と思われるからです。
「満足感」のあるサービスを「高品質」のサービスと仮定しても、「高品質」であることと「心を込める」ことがイコールにはならないわけです。

「満足感」=「高品質」≠「心を込める」

ただ心を込めればいいってわけじゃない。いくら心が込もっていても悪いものは悪いし、込もってなくても良いものは良い。その違いは何なのか。


例えば、彼氏の為に初めてお弁当を作った料理下手な彼女…出来はイマイチでも心が込もってて美味しい!というもの。これはあると思います。
逆に、普段マッサージが得意でよく友達の肩を揉んで喜ばれてる人が、嫌いな上司に肩揉みを頼まれてイヤイヤやったら全然気持ちよくない…これもあると思います。
歌なんかもそうですよね。心を込めて歌うと表現力が上がって上手い!とか、緊張すると息が細くなったり喉が詰まってちゃんと歌えない…とか。


心と技術に関係あるやないかい!となりそうですがそうではなく、これは「丁寧さ・真剣さ」と技術がリンクしていない例です。技術が未熟で不安定、ブレがあるんですね。
「心を込める」ことは低レベル帯で「丁寧に・真剣に」という意味があるので、普段以上のまぐれホームランを打つ要素にはなりえますが、それだけでは安定感に欠けます。不安定では不満が残り、「高品質」なサービスにはたどり着けません。


プロになると自分の心情に関係なく、一定のポテンシャルを発揮できるように訓練します。これは知識と技術の習得であり、基本的にはいつだれを相手にしても最低限のブレでサービスを提供できるようにするということです。
私の仕事のマッサージで説明すると、可動域のチェックや年齢性別職業などの状況、痛めた原因、触ったときの筋肉の硬さ、施術に対する身体のリアクション等で「こうすればこうなる」という予測が立ちます。
こうなると、たとえ横柄な態度のイヤな患者さんが相手で心中ではイヤイヤでも、ある程度楽にすることは可能になる。逆にどんなに好きな相手でも限界以上のことはできなくなります。そしてその限界を突破するためにさらに研鑽を積む。
つまりハイレベルな技術を身に着けるほど成熟してブラックボックス的な不確定要素が減り、ブレが少なくなるわけです。常時ベストパフォーマンス状態に近づき、「高品質」なサービスになっていくわけですね。
もちろんわざと失敗するなら話は別ですが…(ハイレベルになると、逆にどうすれば「悪いサービス」になるかもわかるので、意図的に質を落とすことも容易になります)


ですが、いくら技術を磨いてもそれだけでは足りないと思い始めます。技術は今のベストを安定して提供できていたとしても、人によって反応・満足度が違う。「心が込もっていると感じていない」人が出てくるように思う。なぜ…?


試行錯誤していくうちに、本当に満足のいく良いサービスを提供しようとすると「相手への態度」もサービスに含まれていることにどこかで気がつくはずです。
どんなに名医でも明らかに態度が悪い(全く目を合わせようとしない、めっちゃキレてくる、小声で全然話ができない…等)と「なんやねんコイツ」と思うんじゃないでしょうか。
逆にニコニコと親身になって話を聞いてくれて、病状は真剣な顔つきでなるほどと聞いてくれて、「ではこういうことが考えられるのでこういう治療をしましょう、きっと治りますよ」と言ってくれるお医者さんは素晴らしいと感じると思います。
そう、医者にとっては話をすることも診察の一部であり(問診)、サービスの一環なんですね。表情、視線、声色、口調、姿勢、相槌のタイミング…これらも全て「技術」(この場合は話術)なんです。


ただし、ここで勘違いしてはいけないのが「心が込もっているから満足させられる」のではなく、あくまで「技術として高品質に安定させている」のだということです。名医がみな聖人かというと、決してそうではないです。
「話術」だけなら口先だけうまいナンパ野郎や詐欺師だってものすごいわけですから。技術は悪用もできるのです。そういう意味では、「技術」を扱う人の「心」は問われてくるわけですね。
そういう意味ではプロ(もしくはハイレベルな技術を持つ人)はみな少なからず自分の「役目」を演じる「役者」だと考えることもできそうです。心まで満足できるような雰囲気や空気感作りまで含めて、初めて完成されたプロ・完成されたサービスと言えるのではないでしょうか。


長くなりましたがまとめると、
・ただ「心を込める」だけではサービスは安定しない
・満足のいくハイレベルなサービスを安定供給するには技術の研鑽が不可欠
・心まで満たすような雰囲気や空気感まで「技術」で作り出してこそのプロ

お粗末様でした。

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