首がすわるまでのあかちゃんは横抱きで VOL2


1999年。「この町で子育てをしてよかったねと皆が思えるように、できることからはじめよう」と、子育てサークルの運営をしていた4人が集まって作った「子育てを楽しむ会」(2008年にNPO法人となる)で行った事業の記念すべき1回目の事業が「手作りだっこひも教室」だった。

キルトの布を使って、わっかのひもを二本作って、それをクロスにし、あかちゃんの背中を支える部分を作るというシンプルなもの。
縦抱き専用なので、首がすわってから使えるというもの。

このシンプルなだっこひもは、一日に何度もあかちゃんを抱っこするママたちの腰や肩や腕への負担をやわらげ、とても人気だった。

縫っている時間は気分転換になるし
一緒に縫っていた人と友達になったり
縫っている時間保育がつくことで、しばし子育てから解放されるし
人にあかちゃんを預けることに罪悪感を持っていた人も、「手作り抱っこひもを作っている」ということで、預ける勇気がでたりして
いろんな点で喜ばれた。

縫製を教えた人や、保育をした人達へのお礼が必要なのだけど
少しでも参加費を抑えたいと思って助成金を申請した。

2000年頃からずっと、いろんな助成金に申請しながら、2010年頃まで、多いときで一年間に100人にこの手作りだっこひもを教える教室を開催していた。同数または同数以上のあかちゃんの保育もしてきた。
多分、10年間で800人以上の人に教えてきたと思う。

今この手作りだっこひものことを「むぎゅっと」という名前で呼んでいる。

その頃の抱っこひもメーカーは、いろいろ「新生児を横抱きできる機能がある」という商品を出していたけど、どれも使いにくくて、結局その機能を使わなかったという人が多かった。

突如(というわけでもないかもしれないが)2005年頃に、布にリングがついた「スリング」というものが現れた。

「子育てを楽しむ会」は、2000年~ずっと、1歳未満のあかちゃんを持つ人が出会える「あかちゃん広場」を定期的に開催していて、2005年頃を思い出してみると、1回のあかちゃん広場の参加者が50組を超えていた時代。(地域子育て支援拠点事業、通称子育て支援センターや子育て広場などがまだ普及していなかった頃)
そのあかちゃん広場にスリングでやってくる人が多くなった。

どうも「この使い方であってるの?」「なんか危ないのだけど」「布にくるんでいるけど、結局素手で抱いている感じで、使っている意味がない感じ」という人ばかりで、「スリングの使い方をどうしたらアドバイスできるのか?」と思っていた時、スリングの使い方のサロンを行って人がいるということを、地方紙の記事で見つけた。

新聞社に電話をし、彼女につないでもらって、彼女に会えたのはそれから1週間ほど後のこと。

早速宇治に来てもらって「スリングの使い方教室」をしてもらうことにした。

後で思うことだけど、本当にいい人と巡り会ったと思う。
彼女は看護師さんだったので、医学的な知識があり、スリングの中にどういうふうにあかちゃんを入れるとよいのかと言うことを独自で研究していた。

あと、とっても器用だし、センスもよくて、話し方や教え方もうまかった。

定期的にスリングの使い方講座を開催しておけば、スリングの対応はばっちりだった。
だけど、彼女の転居が決まり、その日は終わりを迎える。

そこで、転居までの間に、スリングの使い方(その頃は作り方も教えていた)を伝えられる人を育成して欲しい・・・と頼み、数人が習うことに手を挙げてくれた。その後、2人の人が引き継いでくれた。

使い方、縫い方を教えている間に、いろいろアドバイスをくれる人もいて、少し縫い方を変更したりもした。

年間100人ほどに手作りの仕方を教えることは続いていたけど、その中身は「スリング」と「むぎゅっと」を合わせて100人という感じになっていた。

その頃のスリングは、首がすわる前から横抱きが出来るものとして紹介していたので、首がすわるまでは「スリング」、首がすわって、しっかりしてきたら「むぎゅっと」という流れが出来ていた。
もしくは、首がすわってからもスリングで縦抱きを続けるという人もいた。

実はこの年間100人という数字は大きな数字だった。
この頃、宇治市では年間150人前後の新生児が生まれていた。もちろんあかちゃんは一人目のあかちゃんだけではない。
その中の内の100人が手作り教室に来てくれていた事になる。

2000年から2010年にかけての変化を言葉にするなら、「ミシンの使い方や裁縫は苦手な人が増えてきたなあ」ということだった。
2000年頃は備品としてミシンがあったわけでもないので、各自持ってきてもらわないといけなかったけど、ほとんどの人がミシンを持っていた。
でも、2010年の頃には、備品としてミシンを常備できたこともあるけど、ミシンを持っている人も減っていたし、持っていても使ったことがないという人も増えていた。

でも、これらは親の変化であり、一緒に来る赤ちゃんには、特段この10年間に大きな変化は感じなかった。

2010年頃から、「手作りの良さを伝えたい」「楽しい時間を提供したい」「自分に合った抱っこひもで楽にたのしく子育てして欲しい」という意識だけでは、だっこのサポートに対応出来なくなってきた。

つづく

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