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昨晩は寝つきが悪かった。とにかく悪かった。あまりにも眠れない時は朝起きることを諦めるためアラームを切って寝ることが多い。当然9時半に起きた。今日も遅刻だ。三限は体育だったので切った。運動は嫌いだ。できるだけ体を動かしたくない。しかし最近は毎朝の恒例であった最寄り駅から学校までの遅刻回避中距離マラソンがないため極端に運動量が少ないように思える。しかも幼児もびっくりの勢いで腹が減るので間食と呼ぶには無理がある量の間食をして1日4食の生活を続けている。こうなるとそろそろ太ってくるのではないかと思い、恐る恐る体重計に乗ったが体重は却って減っていた。これだけバカみたいに飲み食いしているのに減るのか、と思った。このペースで行くと17年後くらいに消滅する。34歳、良い頃合である。
四限に間に合わせるべくのんびりと学校へ向かっていたらたまたま不登校気味のクラスメイトと会った。互いにコミュ障なので不意に外で会った時には言葉よりも前にニヤリと陰キャ特有の気持ち悪い笑みが出てしまう。その後は何事もなくいつも通り授業を聞き流し、スマホの見すぎでバッキバキになった目を労りつつ放課後に。
放課後、他クラスの友人に絡まれる。彼は誕生日だった。昨年、彼は俺への誕生日プレゼントとしてまりもっこりのアイマスクを寄越してきた。別にまりもっこりが好きでもなければアイマスクも要らなかったのだが、ふざけて付けて周りの人間の小笑いを何回か得た気がするので良いプレゼントをくれたものだなと思う。そんな彼の誕生日ということでぜひこちらからも何かプレゼントを返したいところだったが生憎財布の残金は52円。PayPayには40円くらい、Suicaにはたしか6円くらいしか入っていない。手っ取り早く1階の自動販売機で飲み物のひとつでもあげようかと思ったがこれでは水しか買えない。まりもっこりの対価が水1本なのはあまりにも申し訳がないので何か持っているものをあげようと思った。そう伝えると彼はまず財布に入っていた近所のスタジオの会員証を欲しがった。俺の痕跡が感じられるものが欲しいらしい。本当に気持ち悪いなと思った。結局、百均の俺の苗字が入ったハンコ付きペンのハンコの部分をくれてやった。まるで同じ苗字のハンコを使ってくださいと言わんばかりの気持ち悪い人の気持ち悪いプロポーズみたいになってしまった。そもそも他人の苗字のハンコを欲しがる彼が最高に気持ち悪い。面白い友人を持ってよかったなと思った。
帰宅した。明日は卒業アルバムの集合写真を撮るため身だしなみを整えておけとの通達があった。ここで今日の自らの身だしなみを振り返ると、乱雑に伸ばした襟足、完全に目を覆い隠す前髪、近所の古着屋で500円で買ったジャージ。最悪である。5年後に見返して絶対に頭を抱える自信がある。しかし、厨二病5年目にしてようやくBUMP OF CHICKENの藤原基央を目指して伸ばし始めた襟足を切ることは些か憚られる。前髪に至っては厨二病1年目あたりからずっと目を覆い隠し続けている。重度の厨二病患者こと俺とは一度前髪を通した世界に慣れてしまった以上、もう二度と元の世界には戻れないという哀しき生き物なのだ。もはやずっと隠し続けていた目元を世間に見せることがなにかのタブーであるかのように感じられる。きっと就活で不利だ。就職は諦めよう。
そうして、バンドマンとして生きていくという浅はかな決意を固めたのであった━━
前髪は全く目が見えないところから、ギリギリ頑張れば心眼で目が見えてくる人も出てくるくらいの長さに調節した。社会への適合への大きな第一歩である。
500円のジャージはこれが俺流のグランジファッションだ!と思いカッコつけて着ているつもりなのでそのまま着る。俺がファッションの最先端だ。きっと3年後くらいに中古激安アディダスジャージブームがやってきた頃には皆、俺の先見の明に嫉妬し伸びきったジャージの裾に噛み付くことだろう。今日こそ早く眠りにつきたい。

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