雪の中

#雪 #病院の思い出
病院の待合室は、絵が飾ってある。
通っていた精神科の待合室には複数点、絵が飾ってあった。
10代後半の頃、病院へ行くと、毎回同じ場所に座って名前を呼ばれるのを待っていた。そこから見えるところに、女性の横顔を描いた絵があった。
とても寒い冬の日だった。
いつものように女性の絵をぼーっと見つめる。女性のいる部屋の中が吹雪いていて、女性は寒そうな景色とは似つかわしくない表情をしている。
なんだかいつもと違う気がする。けれど何処が違うか分からなかった。

診察待ちの時間は長く、ずいぶん長いこと吹雪の中の女性を見つめていた。本を持ってきていたけど、読む気力がなかった。
通院を始めた14才の頃からいる看護師さんが、私の名前を呼んだ。
先生と何を話したか覚えていない。ご飯は食べていますか?眠れていますか?学校はどうですか?とかいつもの質問だったと思う。食べれています、眠れません、つらいです、といつものようにこたえたと思う。
診察が終わって待合室につづくドアを開けると、待合室にある大きな窓の外は吹雪いていた。
ここは案外雪が降る。
そこで初めて私は今日の天気を知った。
女性の絵の前まで行って、よくよく見ると、窓の外の吹雪が反射して映っているだけだった。
女性の部屋には変わらず陽が射していた。

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