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何がその人の世間的評価を決めているか

Dai Tamesue 為末大

「何がその人の世間的評価を決めているか」

昔、マネジメント事務所にいたことがありました。その時に、興味を持ってよく考えていたのは何がその人を有名な人だと決めているのかということでした。考えた結果、私の理解では

①能力-何ができるか

②印象-どんな印象を与えるか

③来歴-どこからきたか

④推薦者-誰が承認しているか

⑤並び-誰と一緒か

⑥世間-世間はどう評価しているか

の六つだと思いました。上から順に揺らぎにくく確かだが、獲得しがたいものです。

①があることが本当は一番大事なのですが、①があるかどうかを見分けるにも目利きの力が入ります。①を本当の意味で評価できるのはその領域の身内の人だけです。⑥と①がずれることは、特定領域に身を置く人であればよく見かけることですが、それはスポーツなどの勝敗が見えるわかりやすい領域を除き(それですら内部の評価と世間の評価はずれていますが)、能力の評価が難しいからだと思います。世間一般で知られている人と、業界内で認められる人がずれている理由です。日本人は自分の目利きに自信がないので③と④と⑤を大事にします。つまり経歴と、権威がある人の推薦と、誰と同じグループにいるかです。海外で表彰されることへの評価が高いのはわかりやすく④が得られるからだと思います。

②はその他者に感情を湧き上がらせるものです。先天的な性質、育ちの良さ、本人の自己肯定感、人生経験と自分と向き合ってきたこと、に影響を受けていると思います。②を演じることもできるのだと思いますが、長期的にはやはり本質が見抜かれているように思います。特に邪な気持ちや何か自分の中に邪気を抱えている場合はそれが影響してしまいます。妙な話ですが良い印象を与えて自分の利得にしようと思えば思うほど印象が悪くなります。ですから、そのままの自分で良いと突き抜けるか、または他者に対して何かをしてあげたいと思うことが大事で、それに気づくには結局人生経験と自己問答になるのだと思います。

③ですが、これはその人の過去の実績、どこに所属していたか、日本の場合はどこに生まれたかなども影響すると思います。日本はエマニュエルトッドによると直系家族にあたり正統性を好むので、いくら否定しても2世議員はなかなか無くならないと思われます。③に家が含まれるからからです。タレントさんのスキャンダルを見ていると、③を狙うものが多いと感じています。なぜならばその人が世に出ることになった根拠が揺らぐからです。そういう意味では学歴詐称を狙うことはわかりやすいです。私のような体育会系は学歴詐称があったとしてもああそうですか程度で、八百長などの方がよほどダメージが大きいと思います。

④は承認です。誰がその人をすごいと承認したかは大きく影響します。まるまる賞を取ることは、その賞を出す場所の権威に影響を受けます。面白いことにその賞を出す側もまた、出す相手によって権威を得ていきます。組織が大きくなったり、歴史がある集団が表彰したがる傾向にあるのは、承認することにより自らもまた権威を得るからです。ただ承認者もまた、その人を承認することで自らの信用を賭けるわけですから、人間関係が大きく影響する世界ほど、誰かを承認することは重たいことになります。本の帯に誰かが書くことも、まるまるが認めたと言うことも、承認によって権威を得る一つの方法です。

⑤これは世間的にとてもわかりやすく手っ取り早く効きます。「並びは誰ですか」というのはよく聞かれる質問ですが、それは誰と一緒にいるかによってその人の権威が変化するからです。強い事務所は①をきちんと鍛えながらも、先輩タレントにより⑤と④と③を絡めながら世に出していきます。あの人と一緒にいられるぐらいの人というのは権威の創出に影響しています。ただ、この構造が強くなりすぎて①より⑤や④の方が重んじられるようになると、長期的には全体の質が下がり(実力を高めるより誰かに取り行った方がうまくいくので努力の方向を間違え始める)、いずれ業界自体が衰退します。最近はアパレルでコラボ商品が多くありますが、この並びの概念で捉えるとまた違ったものが見えてきて面白いです。

⑥これがあることが影響力の一つの指標ですが、一方で極めて揺らぎやすくこれを追いかけることは大海で漂う波を追いかけるようなもので儚いです。⑥を追う人は⑥が手に入らないという皮肉な構造になっているように見えます。理想は勝手に⑥がついてきてくれることがいいです。④と⑤だけを駆使して⑥を追いかけ続けるという方法もあるのだと思いますが、あまり定着した例を見かけません。また以前は⑥が全体に対するパーセンテージで見られていた気もしますが、実際にはもっと細分化されていて、局所的に認められていると言うこともあると思います。その場合は④に近くなるかと思います。

長期的にはやはり①と②に集約していくのではないかと思うのですが、それには時間がかかるのでどうしても比較的簡単に手に入るそれ以外で埋めたくなるのが人間です。また世間を見渡しても⑤とか④でうまくいくようにも見えるので、ぶれてしまいがちです。結局そうなると世間を捨てやるべきことをやるに行き着くように思います。

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