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仕事の勘

仕事をしていく上で必ず出てくる言葉に「あいつは勘がいい」「あいつはセンスがいい」というものがあります。スキルがある、能力があるということと重なりながらも、少し別の文脈で語られるこの「仕事の勘」の正体とはなんでしょうか。私は仕事の勘とは「少ない情報で要点に至ること」だと定義しています。

当然いきなりうまくはまるとも限らず、間違えていることもあると思います。しかし、勘のいい人間は複雑な中でも「これが最も貴重なリソースだ」「ここを起点に物事が動いている」と考え、実際に行動するので仮説があっているかどうかが検証され続け、磨かれます。ですから今答えがあっているかどうかは大した話ではないと思います。

今は仲が良い起業家と最初に会った時1時間ほど話し、二回目に会った時いきなり「要するにあなたは様々なネットワークの中にいる。そういう人はよく誰かいい人いないかと聞かれている。一方でたくさんの人材リストがあなたの頭の中にある。とりあえずあいつにしようと思われる存在に私がなることが大事だと思いました」と言いました。それを私に宣言するところも含め勘がいいやつだと思いました。

一年一緒にいた人がこれを思いつくこともありますし、誰かがあの人色んな人知っているよと聞いてわかる人もいます。しかし、勘のいい人は一回会ってその人の振る舞いを見ただけで仮説を持ちます。この少ない情報量の中で「要するにこういうことじゃないか」と思いつき行動できることが「仕事の勘」ではないかと思います。

分かりやすいように勘が良くない人で優秀な人の例を出します。このタイプは後追いになりやすいということです。情報ははっきりしてくるほど何が答えか分かりやすくなります。表面に出て明示されているものから正確な結論に至ることはできるのですが、はっきりとしていない抽象的なものから思いつくのが苦手です。情報の間をつなぎ合わせて大きな仮説に至ることが勘です。

さて勘は育成可能かというと私は可能だと思います。誰に言われずとも仮説を持ってやってみて失敗することの繰り返しで磨かれると思います。また、読書も効くと考えています。昨今は特に新しいテクノロジーなどすぐ理解できないものが多くありますが、このようなものを理解する上では、通貨とは何か、信用とは何か、国家とは何か、人間とは何かについて書かれている古典を読むことが有効だと思います。一方、瞬時に抽象化できる知性は先天性か幼少期の前半の環境が大きいと考えています。

さてここでも素直さが重要になります。仮説を持ってやってみる人も知らず知らずパターンに入り込み出られなくなることがあります。そもそも情報の間を勝手に自分で埋めて仮説を立てるわけですから、間違えまくっていたり思い込みに囚われやすいのは当たり前です。外部からのフィードバックによってここから抜けやすくなるわけですが、素直さがない人は自分の考えとやり方に固執するので抜け出られなくなります。

勘のいい人は自律分散について何も知らなくても、一通り話を聞くと「鍵はガバナンスですね」という言葉が出てくる人です。部屋に入った途端誰が重要人物かわかる人です。ボスではなく「重要人物」がわかることが大事です。混沌の中から自分なりの仮説で一定の秩序を見出せる人が勘の良い人だと思います。

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