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体験の多様さと、意思決定の場

もしまだそれほど社会人経験がない人が何をすればいいかと相談に来た場合、とにかくなんでもいいからいろいろ体験した方がいいとアドバイスします。体験というのは価値になります。つまり役に立ちます。多様性が重要なのは、多様な体験を持った人が集まり議論することで結論がより良くなると想定されているからです。

女性としての体験、外国人としての体験、障がい者としての体験。いくら想像しても体験していない人は理解することはできません。スターフルーツという果物がありますが、星型で緑で酸っぱくてと説明しても、本当に食べてみることとは質的に異なります。体験の豊かさは全く次元が違います。

ではなぜ体験が価値になるのでしょうか。まず組織がヒエラルキーの構造をしている以上、重要な役職になるほど意思決定をする必要が出てきます。私はあまり大きな会社を知りませんが、多分階層的になっていてそれぞれ意思決定をしていると想像します。その決定に従って日常業務が進められる。

この業務を進めることと、意思決定をすることは質的に異なると私は考えています。日常業務は行われていることそのものが価値ですが、意思決定の価値は「決めること」です。いい意思決定をすることが大事であり、そのプロセスはどうであっても構いません。突き詰めれば会議は意思決定をするための装置です。すでに大枠が決まっている中で決めることはある程度考えると同じ答えに行き着くことが多いです。ところが階層が上がると様相が変わります。

あらゆる選択肢がある中で、情報も十分ではない中で、ゲームのルールがいつ変わるかわからない中で、一度決めたら引き返すことが困難な中で、成功すれば大きな利益が、失敗すれば甚大な被害がある中で、決定をするということは、決められた範囲で決めることとは違います。最後は勇気しかないと思うのですがその前段階では、考えに考え尽くすぐらいあらゆることを想定しておく必要があります。

良い意思決定ができるなら一人でもいいし集団でもよいです。ただ一般的に重い決定ほど多様な視点であらゆる可能性を検討しておくことが求められ、その際に多様な体験を持つ人たちで会議を構成しようという考えが生まれやすくなります。例えば経営者として上場させた経験、大きなトラブルを対処しきった経験、マイノリティの経験、ある領域に特化して得た経験などです。多様な体験をした人を集めたくなるインセンティブがここにあります。

また、私の年齢ぐらいからは、テクノロジーの使い方に関して下の世代の方に教えるより教えてもらうことの方が多くなります。仕事のアウトプットもすぐ追い抜かれるでしょう。では一体何が提供できるかというとやはり経験をしないと得られない洞察を還元することなのではないかと思います。年齢を重ねるごとにだんだん体験の価値は高くなります。こんな失敗をしてねという話ほど学びが多くかつ誰も傷つけないことはないと思います。

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