見出し画像

自分を信じる力とは何か

ジョコビッチ選手が「ワクチン接種を強制されるなら今後も試合出場を諦める」とコメントしました。ワクチン接種如何に関しては話の内容がずれるのでここでは触れず、トップアスリートの特性「自分を信じる力_ついて考察してみたいと思います。

トップアスリートになる人は「自分を信じる力」がある人がほとんどです。大事なのは「自分を信じる」ことができたらトップアスリートになれるのではなく、トップアスリートには「自分を信じる」人が多かったという点です。統計的にトップアスリートになれる確率は極めて低く(地球上のバスケット選手は4億人いてNBAプレーヤーは450人なので100万分の1の確率)冷静に考えるならばなれるわけないと思うからです。確率を無視し、なれると信じ続けた人がトップアスリートになっています。

「自分を信じること」とはどういうことでしょうか。それは客観的なデータや、他者のアドバイスよりも、自分なりに考えて出した結論や直感を信じるということです。しかし、普通は客観的事実やデータを優先した方がうまくいくことが多いです。なぜアスリートは「自分を信じる力」が重要なのでしょうか。

トップアスリートという存在は科学的には「例外」です。例外ということは、トップアスリートになれた理由を分析しても他と違いすぎてよくわからないということになります。ですから再現性もまたありません。もちろんある程度のセオリーはどの世界にもあるのですが、それさえやればトップになれるかというとそんなことはありません。みんな同じぐらい正しいことをやっていて、精一杯努力もしている世界で、なぜか一握りの人だけがトップアスリートになれる。その理由がなんなのかわからないのです。このような正解がよくわからない世界では「自分を信じること」は有利に働きます。なぜならば疑いつつやるより信じて一貫してやった方が効果が出やすいからです。

一方で、頂点(例外)を目指すわけでもなく、一般的なデータが活用できエビデンスがある程度存在する世界ではこの性質は不具合を起こします。自分で考えすぎないでデータに従った方がうまくいく時にでも、一つ一つ常識を疑い自分を信じて自分で考えようとしてしまうからです。私はトップアスリートとは「ある環境に極端に最適化され卓越している存在」だと考えています。つまり人格者であるとか、分析的な思考ができるとかは、必要条件ではありません。それが身につくこともありますが、身につかなくてもトップアスリートになる上で問題はありません。

「自分を信じる力」はその他の領域でも成功する上で大切な能力だと思います。ただし、これは一点張りする能力であり、当たらなくてもくじを買い続ける性質でもありますから、不具合を起こした時修正をかけることが容易ではありません。特に自分を信じて成功したという成功体験を持つアスリートが、自分を信じて突っ走ってしまった場合、社会的な影響力や地位もあるので止めることが難しくなります。

頂点を目指すような生き方はハイリスクハイリターンですから、確率的に多くの人生では「自分をそれなりに信じつつ他者の意見とバランスする」方が選ばれるのではないでしょうか。ただし、全体のポートフォリオで最も効果を出すには、むしろある程度の量の「自分を信じる力」を持った個人が各方面に散らばって突っ走り、まれに当たった個人がでっかい成功を収めるというやり方なのだと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?