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夢と希望が戦略に与える悪影響

夢や希望が戦略に入り込むと何が問題なのか。達成したいゴールは個人にとっては夢や希望にあたる。五輪にでたい、大きな会社を作りたい、人の役に立ちたいなどは個人的な欲求を形にしたもので、それを思い描いている段階では達成できる根拠もないのでまさに夢や希望としか言いようがない。

だからなんにせよ個人においての出発点には根拠がない。そしてこれを実現するために戦略がある。ところが、この戦略に夢や希望が混ざると厄介なことが起きる。夢や希望は根拠がない事を前向きに捉えて思い込む事だとも言えるので、現実も自分自身も正確に把握しない。

夢や希望を強く持つと、不可能はないという考えが強くなり、現実を見ることができなくなる。五輪にでたい、そのために世界トップレベルの筋力をつけると考える時、実際には人種差、個人差がある。戦略的であれば頑張っても限界があるなら技術などの戦い方を選ぼうと考えるが、願えばなんとかなる、やればできるという思いが強いと努力ではなんともならないものにこだわり時間と労力を浪費してしまう。

大雑把に言えば、夢や希望を強く持つ人は現実よりも願望を重視する。それはモチベーションを上げてくれるが、裏を返すと現実の分析を軽視している。夢や希望は常に現状を自分に都合よく解釈させる。この都合良い解釈から生まれた戦略は、ご想像の通りほとんどうまくいかない。

また正義感と戦略のバランスが崩れている人もまた目標を達成する確率が低い。サバンナで草食動物が多数の肉食動物に狩られても、それを許せないとか可哀想と思うのは自分のものの見方であって、現実はひたすらに現実でしかない。現実そうであるより、本来そうであるべきが強くですぎて妥協ができない。妥協は弱さだというが、戦略とは足りないリソースを配分する事であり、それは妥協のセンスのことでもある。

こだわりもまた戦略を阻む。こだわる人間はそのやり方に固執するから相手にそれを見抜かれる。勝ち方にこだわる人間は、勝つことだけに集中する人間に勝てない。成功体験を持つ人間はこのやり方でうまくいったという経験があるからこだわりにプラスして自信もあるので、自滅する確率も高くなる。

手段に固執する場合、実はそちらが本当の目的であったということはよくある。勝つために良いチームを作ろうとするが、実際には良いチームを作ることが目的という場合だ。自分が何を欲しているかを知っている人が強いのは、目的と欲求が一致しているから。手段にこだわる人は、体裁にこだわる人だ。

全てのこだわりと夢や希望を抑制するのも現実的には苦しい。だから大事なことは目標に夢と希望とこだわりを一点集中させ、そこに至る道は一切自由にありとあらゆる選択肢を考えてみることが大事だろうと思う。そして結局のところ欲求やこだわりも含め、自分を知ることが、戦略の要になる。

参考図書

戦略的思考とは何か

諦める力

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