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脱力するためには何が必要なのか

長文ファンの皆様おはようございます。

「脱力(リラックス)はどうすればいいのですか」と質問されることがあります。人間が脱力するためには、二つ必要なことがあります。

①脱力がどのような感覚が知っていること

②脱力しても維持される状態を獲得していること

です。

まず脱力をしたいと言いながら、脱力自体を経験していない方も多いです。脱力はスポーツでは弛緩と名づけられており、緊張との落差で生じます。

十分に弛緩を経験するには、十分に緊張を経験しなければなりません。実は多くの身体の状態は弛緩でもなく緊張でもない、緩やかな緊張状態にあります。

子供の足を速くするために手っ取り早いのは、相撲を取ったり、目の前の壁を全力で押させることです。実は人生で一度も筋肉を強く緊張させたことがない場合も多く、そうすると走る時もずっと緩やかな緊張状態しか作れません。

ですからまず強く緊張し、その後力を抜いて弛緩を体験する。この繰り返しで脱力がどのようなものかを理解していきます。

この感覚がわかると、抜きたい場所の力を抜けるようになります。

次に、脱力はそれが許される局面においてしかできないことを理解しなければなりません。例えば人間が直立して本当に脱力し切って仕舞えばその場に崩れ落ちることになります。なぜならば抗重力筋といって重力に抵抗する筋肉の緊張がなくなると、重力に抵抗できなくなるからです。

人間がある姿勢をとっていながら脱力することは言い換えると

「必要最低限の部位に、必要最低限の力を入れながら、それ以外を弛緩すること」

です。そのためには、しかるべき姿勢を取れていなければなりません。

肩に力が入っている人は、そこに力が入らざるを得ないような姿勢になっていることがほとんどです。具体的には頭が前に出て、少し背中が曲がっています。旗を前に倒して支えている人のようなもので、支える側が力を抜けば旗が倒れるためにいくら意識しても力を抜くことはできません。

ではしかるべき姿勢とは何か。人間に提供を及ぼしている最も大きな力は重力です。打撃で人を傷つけることに限界はありますが、少し高い位置から落ちれば命すら危ういです。

この最大の力に対し、最も合理的な位置を取り続けることが脱力の重要な要素です。これを難しくしているのは直立二足歩行を選んだ私たちの生存戦略にあります。二足で立つという極めて不安定な姿勢で力を抜くためには、中心を掴まなければなりません。

何らかの身体技能を扱うもので、うまく上達しない際に姿勢に戻ることが要求されるのは、無駄な緊張も、技術の偏りも、姿勢の歪みによって受けている罰則のようなものだからです。

中心を掴む。これが熟達論の四段階目で説明した状態です。

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