2024年のおすすめ本
さて、恒例の今年読んでよかった本、ベスト五冊です。毎年そうですが、出版した年は関係なく「私が今年読んでよかったもの」を選んでいます。年末年始のお暇な時に読んでみてください。
1. 万物の黎明
サピエンス全史は大変有名になりましたが、そのカウンターとしてかなり刺激的な本です。人類は牧歌的な狩猟採集の世界を生きていたが、農耕が始まり、余剰に生産できるようになり、それを集約し権力構造ができ、都市国家が生まれ、国同士の間に利害の衝突が起き、現代に至る。という一般的な歴史観が覆ります。
特に今では当たり前になっている、個人、ヒエラルキー、自由の概念を、ネイティブアメリカンが深くその矛盾と特異性を説く部分は必見です。この世界は必然ではなく、あり得たかもしれないもう一つの世界を想像することができます。
2. 手の倫理
「触る」と「触れる」の違いをテーマに、接触する倫理的な意味を考察しています。「触れる」という行為には相手の了承や配慮が含まれ、「触る」はそれがない。道徳は広く承認された「そうすべき」行いで、倫理は道徳を一歩踏み出して、自ら何が正しいかを判断すること。「触れる」にはその倫理に一歩踏みだすことが求められる。
性的同意や触れ合いに関する議論を背景に、触れる行為がいかに複雑で曖昧かを探求しています。
3. 科学的根拠で育て
中室牧子さんの著書で、教育における科学的根拠を分かりやすく説明しています。スポーツやリーダーシップ経験は生涯年収を上げる。次男より長男、次女より長女の方が将来成功しやすい。兄弟構成や早生まれの特性など、多様なエビデンスを基に整理されています。
一つ一つ論文を読んで自分で調べていけば辿り着ける答えなのかもしれませんが、膨大な論文を読み込んでこられた中室先生がシンプルに整理されているのでとても読みやすいです。得に子育て中の方におすすめです。
4. 生成と消滅の精神
人間の心の形成過程を歴史的視点から描いた一冊です。兎も角衝撃を受けます。ジュリアン・ジェインズの「神々の沈黙」から始まり、古代の心のあり方と現代の自我中心の世界観にどう発展してきたかが描かれています。下西さんの大変丁寧な論考が響きます。
西洋的な「中心ある自我」と比較して、日本的な心のあり方は「ともにある」なのではないか。私のテーマは「身体から考える」なのですが、大変共鳴いたしました。
5. センス・オブ・ワンダー
有名なレイチェル・カーソンによる自然の驚きと美しさを体感できる作品です。過去に幾つか翻訳本が出ていますが、森田さんの感性によって、身体の細かい感覚が感じ取れるような一冊になっています。
なんとなく子供達が自然を体験することが素晴らしいと感じている方には、きっと好きになってもらえる本です。世界を身体で受け取る感性ほど大切なことはないのではないでしょうか。