何が正しいことかわからないステージ
何かを極めていく上で避けられない苦しさは「何が正しいかわからない」です。最初のうちは基本的な理論があり、それに従っていけば強くなりますが、次第にそのようなものがなくなっていきます。
それは「個別性」が強くなるからです。みんなに効く方法から、自分に効く方法を選ばなければ上にいけなくなります。しかし、自分に効く方法は教科書には書いてありません。ですから自分で選ぶしかない。
選ぶしかないのですが、それが合っているのかどうか確かめようがないわけです。とにかくやってみるしかない。
優れたスーパースター、たとえば大谷翔平選手や、マイケルジョーダンが、どんなことをやってなぜ誕生したかを分析することはある程度できるかもしれません。でも、「こうやればあのような選手を見つけ、育てることができる」という手法はわかりません。トップアスリートのみではなく全ての選手に同じことが言えます。なぜならば人間は皆違うからです。
一方で、独自の方法を見つけようとするこの姿勢が、トンデモ理論にはまり込ませてしまうことがあります。自分のやり方を考えながら、おかしな世界にははまらないバランス感覚が必要になります。
最終的に選手は自分の内側にその基準を見つけます。
最終的な高みに登れるかどうかはこの内側にある基準の確かさと感度で決まっていきます。これが熟達論で話をした「心」の段階です。
どんなに身体能力が優れていても、この基準がなければ、技術が崩れていき、コーチ選びを間違えます。いくらデータを出しても、それが自分に合うかどうかのデータはないからです。
この「内側の基準」はアスリートの場合、身体的です。もちろん徹底的に考えることは大事なのですが、それでも最後の決定は勘に頼るしかありません。しかし、心を獲得した後の勘は当たると私は考えています。
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