二段ベッドと豚の味噌焼き

2020年6月10日 17:40

ある飲み会でTHIS IS パンの岡下さんに、心に血の通ってないお前に初恋の思い出とかあるのか？と言われ、
心に血が通ってないと言われたことにはつっこまず、そりゃありますよ！と答えた。

聞かせてやと言われたので、浮かんだ思い出を同時進行でみんなに話した。

中学に入学し、1年生の時に同じクラスになった子を好きになった。一目惚れだ。
自分の隣の席になった女の子と幼なじみで、休み時間になるとその子に話しかけに来るあの子が待ち遠しかった。
思春期と持ち前の人見知りとで、女子と話すのが苦手だった。
授業中ダジャレ言ったり先生をいじったり友達とバカなことしていたのに、女子が落とした消しゴムすら恥ずかしくて拾えなかった。
少しずつ隣の子としゃべれるようになり、それから数ヶ月経ってその子にラブレターをもらった。
俺はその子の幼なじみのあの子が好きなんだ。人生皮肉なもんだよ。中1にして悟った。
それからというもの、なぜか席が隣になる子からラブレターを貰うようになる。
成年誌の後ろに載ってあるモテモテになるブレスレットなんか必要なかった。人生で一番のモテ期だ。
あの子と席が隣になればラブレターを貰えるかもと、自分から告白する勇気の欠片もないヘタレ双子兄は、完全に受け身の体勢をとっていた。

中１の冬だったかな、奇跡が起きた。

隣の席にもなっていないあの子がラブレターを渡して来たのだ。
神様ありがとう。何も良いことしなくても、逃げ腰でも、幸運をくれた。
次の日あの子の前行って、僕も好きですと言えば良いだけだ！
そして次の日、教室に行くとあの子と目が合う。
なんだか照れくさい。
それに、他の女子達の目が俺を観察するように思えた。
なるほど、女の子というものは誰々にラブレターを渡したとすぐに友達に言うのか。というか、ラブレターを渡す前から色々と、あーでもないこーでもないと相談しているのか。みんな知っているのか！みんなが俺の返事が⭕なのか❌気になっているのか！
それがわかった途端に、あの子に返事をするのがとてつもなく恥ずかしくなった。
それから１週間返事をすることが出来なかった。
あの子からしたら意味わからない。なんの反応もしてこない奴が１週間普通に生活してるのだから。

そして１週間経った日の夜に、あの子から家に電話があった。お袋にいじられながら、子機をもって拓のいない二人部屋の二段ベッドの上へ。
急な電話に完全にテンパっていた。

あの子　『あの返事を聞きたいんだけど、、、』
俺　『あっそうだよね。うん。えっと』
あの子　『ダメですか？』
俺　『いや、そう言うわけじゃなくて！なんて言うか』
あの子　『好きな子がいるんですか？』
俺　『そうそう！好きな人がいる！』
あの子　『はぁー。そうなんですね。好きな子いるんだ。じゃあ。ガチャ。ツーツーツー。』
俺　『えっ、あっ！好きな子ってそう言う意味じゃなくて、、、』

何をしてるんだ薄らボケ！
１週間も待たしてごめん！俺も好きです！ってすぐ言えよ！くそカス野郎が！ひき肉にしてやろうか！

神様がくれたビックチャンスを全く意味のわからん形で棒に振ったのだ。
電話をかけ直し気持ちを伝えることもせずに、ただ呆然と二段ベッドの上で横なっていた。

それから、あの子と全く話せなくなる。

2年はクラス替えで別々になりさらに遠くに。

俺も好きなんだけどなーなにやってんだろ。
よし、3年でまた同じクラスになったら次は俺から告白しよう！神様、あの子が他の男子のこと好きになりませんようにお願いします！

なんで同じクラスになんないと告白しないんだよ！９クラスあんだぞ！博才ないお前が1/9引けるわけねえだろ！勇気だしてとっとと告白しろボケ！ひき肉にしてやろうか！

同じクラスになった。

神様まじありがとう！

春夏秋が過ぎ、冬が訪れた。

あの子話すことさえ出来ていなかった。

なんでだよ！もうお前になんの期待もしないわ！糞して寝とけ！

神様！もうひとつだけお願いがあります！
もう一度、あの子から告白してきてくれないでしょうか？

もう呆れてなんも言えんわ。

奇跡が起きた。

なんとあの子からまたラブレターを貰ったのだ。
忘れられないでずっと好きでしたと。
これでダメなら諦めますと。

神様まじありがとう！

もちろん答えは決まっている！
今すぐにあの子の所にいって、実は俺も初めて見たときからずっと好きだったんだ！
そう言うだけだ。

みんなもここまで待たせてごめんね！この糞野郎のせいで！ほら頭さげろ！

それから１週間後、うじうじしながら返事の手紙を机の上に置いて逃げるようにして帰りました。