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氷艶2024③

こちらは場面ごとに書いていきたいと思います。


第一幕(前半)

プロローグ~約束(冒頭~回想)

いきなり主人公の二人が登場(しかも客席から、スクリーンにアップの映像)。一気に世界観に引き込まれました。そして、しばらく原作と同じセリフが語られます。それを聞いた瞬間、あ、原作に忠実なんだなと確信しました。
回想シーンの場面も長く(かずしろうファンとしてはとても嬉しかった)、大人キャストと入れ替わるシーンは、幻想的な映像の効果もあって、とても印象に残りました。
その後のシーンでは、現地で観たときはアイスダンス要素だな、見ごたえあるなとくらいしか思っていなかったのですが、録画で見返してみると、二人の関係性(惹かれあっていく)を象徴したシーンだと解釈しました。このあたりは、現地と録画とで見た印象が全然変わりました。
大人になった三人の関係性の微妙な変化の中に時折あらわれる無邪気な少年トキオ&カケルの対比も興味深かったです。
三角関係というのは、事前に公開されていたあらすじで把握していたのですが、まさか想像とは異なる方向だとは思ってもいませんでした(笑)

夢の実現~転落と絶望(パーティ~投資家)

場面がにぎやかになり、音楽も演出も衣装も華やかに。特にユキのドレス姿が美しかったです。投資家登場の場面では、元々アラビアンな世界観が好きなので、衣装や音楽が個人的にツボでした(手下4人も好きなメンバーばかり!)。
並行して、ユキの死も描かれるのですが、舞台を広く使えるリンクならではで、異なる場面を同時に進行できるのはアイスショーの強みなのだなと感じました(目が足りなくなりますが、複数回観る楽しさにもつながると思います)。
俳優やアンサンブルキャストに様々な役割を持たせていたのも面白かったです。

銀河鉄道~プリオシン海岸

銀河鉄道は、アンサンブルスケーターの動きで見事に表現されていました。幻想的で美しく、それでいてスピード感やスリルを感じました。その直前のバイク事故の場面もですが、フィギュアスケートのシンクロ技が効果的に使われていたと思います。
その後の場面は、原作でいう、遺跡発掘のあたりでしょうか。現地で観たときは印象が薄かったのですが、映像でみてそのシーンだと解釈しました。
また、ここで登場するリンゴが後半で大きな役割を持つというのも、その導入部分、説明の場面としてこの部分が存在していたとあとで見返して確信しました。音楽のアレンジがラテン系だったのも、躍動感があってよかったと思います。

ケンタウルス座

一幕最後のとてもにぎやかな場面。ノリの良い音楽で振付もポップでキャッチ―でかわいらしく、出演者も本当に楽しそうでした。そして、ケンタウルス座は、今回の大きなテーマ「多様性」を象徴する場面でもありました。ジェンダーレスなキャラクターの登場で、ならではだなぁと感じました。カラフルでレインボーな色遣いもそれを意識していたのでしょうか(もちろん曲に合わせたのもあるでしょうが)。
また、大ちゃん&高志郎くんのリフトなど男性同士のアイスダンス技が披露されたのも、競技では男女の組み合わせでしか表現できないけど、ショーなら競技の枠組みやルールを超えた様々なことにチャレンジできて、表現の幅が広がるんだと見せつけられた気がしました。

第二幕(後半)

鳥捕り~白鳥座

後半冒頭では、アンサンブルスケーターの個々の技の見せ場がありました。その後の老婆や鳥捕りのやりとりが、とても演劇的で好みでした。でもここで語られた内容が物語のキーとなっていく。二人の愛すべきキャラクターでほっこりするシーンとなりました。
白鳥座でのユキの登場は、その美しさにうっとりでした。でも、前半とは違い、3人はそれぞれ別々で、交わらない。関係性をしっかり表現する作りこみに、唸りました。

サソリ座

迫力に圧倒されるシーン。エリアンナさんのパワフルな歌唱力と荒川さんの存在感が見事にマッチしていて、負の感情がこれでもかと伝わるシーンでした。すっかり荒川さんの敵役もハマり、二人でまさにディズニーのヴィランズのような雰囲気を醸し出していました。
こういうスペクタクルなシーンでは、やはり照明や音楽や演出の力だけでなく、立体的に、空間を広く多く使えるスケーターのアンサンブルと、アクロバットな演技の魅力が光るなと感じました。スピード感とスリルのある、とてもアイスショーらしい演出が光るシーンでした。氷艶ではおなじみとなった、大ちゃんと荒川さんのバトル?追いかけっこ?が見られる場面でもありました。

青年の想い

一転して、炎から海へ。この演目を通して伝えたいテーマの2つ目、「自己犠牲」。青年のセリフを通じてこの演目で伝えたいことが明確になったと同時に、魂のこもった歌と演技が心に響きました。
演出家のコメントを読む限り、おそらくこの題材を選んだ時に真っ先に思い浮かんだテーマなんでしょう。力強い歌声と男性陣のアンサンブルのパフォーマンスに心を動かされました。
前半では高志郎くんが大ちゃんとアイスダンス技を披露していましたが、この場面は友野くんと大ちゃんが演技や歌を披露していました。現役選手でこれだけの役割を任されたのも、二人に対する期待値の高さを感じました。
そして、友野くんも大ちゃんも音楽に合わせて自然と体が動くタイプで近しいノリは感じていたのですが、さらに滑走屋での経験を経て、ますます二人の関係の深さや信頼関係の強さを感じました。

命のリンゴ~南十字星(老婆と子どもたち)

男性ばかりの力強いシーンから一転、可愛らしい衣装と傘を持った老婆たちが登場。そして、やはりキッズスケーターの出番がありました。これまで見てきたアイスショーの中でも最もキッズスケーターの出番が多かったように感じました。キッズと女性陣(老婆)のやり取り、衣装も含めとてもかわいかったです。
そして、私は知らなかったのですが、讃美歌が映画「タイタニック」でも使われていた曲と知って、この演目に込めた想いを強く感じました。

石炭袋~別れ~還るべき場所~終わりの始まり(ブラックホール~ラスト)

前のシーンはカラフルでほんわかとした柔らかい雰囲気でしたが、一気に黒がメインで男性的な雰囲気に。ここもアイスショーならではの迫力のある演出に、殺陣も登場しました。スピード感とアンサンブルの掛け合いで、とても見ごたえありました。滑走屋を彷彿とさせるような、黒く長いマントのような衣装でダークでスピード感あるかっこいいシーンとなっていました。
(ラスボス戦?にしては少々物足りない気もしましたが…今回は演劇性、ストーリー性を重視するために、派手なアクションや演出は控えめだったのかなぁとも思います)
その後は、再び演劇的な場面。しっかりと物語をまとめる説得力のあるシーンとなっていました。
伏線回収も見事で、始まりと終わりがきちんと繋がり、とてもすっきりとした終わり方となっていました。

また、最後はゆずのライブのようなステージになるのですが、出演者自身がライブを楽しんでいるような、ノリのよさが印象に残りました。
そこで披露された「虹」は、フィギュアスケートファンにとって凄く印象深い曲(個人的にはこの曲くらいしか確実に知っているといえるものはありませんでしたが…)。
バンクーバー五輪のCMタイアップソングで、大ちゃんはバンクーバー五輪のメダリストでしたし、同じくメダリストでそのCMにも登場していた浅田真央ちゃんも同時期に自らが座長を務めるアイスショーを開催しています(こちらについては別記事にまとめています)。そのような不思議な縁もあり、このタイミングで行われた運命も感じていました。

おわりに

こうやって一通り振り返ってみると、リンクを縦横無尽に走り抜ける動的なシーンや、出演者がたくさん出てきて演出も豪華で動きや迫力のあるシーンと、キャストの心情や場面をしっかり丁寧に説明する芝居メインの静的なシーンとが交互に点在し、飽きることなくテンポよく見ることができました。
ミュージカル俳優さんの歌で感情を伝える力、表現力をじかに感じることができ、やはりプロなんだなぁと実感しました。
そして、大人数のシーンではアンサンブルスケーターの活躍により視覚効果がぐんとアップする場面があり、一方で、スケーター一人一人の滑りを堪能するシーンもあり、様々に見応えがあって、フィギュアスケートの表現の奥深さも感じました。

スケーターが歌や演技って、正直大丈夫なのかな、なんて思ったりもしていましたが、そんな不安は吹き飛ぶような、とても素晴らしいエンターテイメントとして成立していたと思います。新感覚のエンタメとして、またこれまでの氷艶シリーズとは少し違った形で、アイスショーの新たな可能性を開いたと感じました。
是非多くの方に見ていただきたいし、この作品に込められたメッセージを受け取っていただきたいなと感じました。

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