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村の子供達の奇行

俺の小学生時代の同級生は11人。
男4人、女7人。

もちろん1クラスだ。
低学年の頃はプラス男が2人居たけど親の都合で転校してしまった。
まぁそんだけ人数も少ないから男子も女子もみんな仲良かった。
男同士で遊ぶ時は基本誰かん家でスーファミやるか山行くか川行くかだった。


何をして遊ぶか?それを考えるのも楽しみの1つだった。
基本ゲーム機も遊び道具も豊富な時代だったけど自然豊かな土地柄、外で遊ぶのが何より楽しかった。
山に冒険に行ったり川に魚捕まえに行ったり釣りをしたり、とにかくアクティブだった。

冒険というのは当時のゲームやアニメの真似事。
駄菓子屋で買ったお菓子を回復薬に見立て、木の棒や鎖、鎌やナタを武器に冒険へ繰り出した。
同級生のこうちゃん家は大工だったので倉庫にある廃材は自由に持ち出して良かった。
そう俺らの中では武器屋…
こうちゃん家にはチビという雑種犬が居た。
ある日突然現れ居着いたらしくそれ以来飼う事になったみたいだ。
人懐っこい犬で元々飼われて居たのか人間に対して警戒心は無かった。
俺たちはチビの散歩ついでによく冒険に行った。

チビも仲間。
まぁ主人公が剣士ならその仲間の魔法使いにパワー系キャラと来て野獣系ポジションがチビだった。
そして冒険の世界に入り込んでる俺らは見えない敵とエンカウントする。
前を歩いてる奴が敵だ!!と叫んだら全員に見える様になる。
チビも加勢させる…

「行け!チビ!噛み付くだ!」

チビが敵に噛み付いた…様に見えた。
たまに物理的に見える敵も居る。
デッカイ岩や木だ。
誰かがやられる、回復魔法を唱えてあげる。
そして満身創痍で勝利する。
戦利品(その辺に落ちてる石や木の枝)を手に入れ次のフィールドへ移動する。
誰もが疑問を抱かず受け入れその世界観へ入り込んでいた。
当時流行ったドラクエやポケモンのごちゃ混ぜみたいな設定。
誰が言い出した訳でもなく俺たちは自然とそういう設定にしていた。

そう、あの頃の俺たちは完全にキマってた。
もちろん、変な薬をやってた訳じゃない。
ナチュラル・ハイってやつだ。
脳汁垂れ流しってやつだ。
それくらいみんな本気で楽しんでたし、楽しむ術を知っていた。
ドブ川にデッカイ石を投げ込んで水しぶきが上がってる間に飛び込むと未来へタイムスリップも出来た。
実際はそんな汚い用水路に飛び込む訳もなく飛び込む振りだったけど誰かが設定を生み出してはみんなそこに乗っかる。
それが楽しかった。

周りの大人が不審に思ったり心配になるくらい俺たちは入り込んでいた。


【謎の儀式】

俺の家は同級生達とは離れた場所にあった。
近所に住んでたのは年上のヤンチャ兄弟と根暗な姉弟、ポッチャリ姉弟。
そしてうちの兄弟。
家の近所で遊ぶ時はそのうちの誰かと遊ぶ事が多かった。
と言うのも村の子供全員が揃って遊ぶなんて事は殆ど無く、唯一村の子供全員が集結するのは夏休み中のラジオ体操か地元消防団の打ち上げでやるBBQぐらいだった。

そんな村の子供達が全員集結した日があった。
特に待ち合わせた訳でも無く学校帰り暇だったので弟と2人で近所にある広場に行った。
広場と言っても公園なんてレベルでもなく色んな石碑が置いてある謎の空間。
唯一そこにブランコが1つ設置されてたから子供達の遊び場になってた。
すぐ横には最上川が流れている。

2人でそこに向かうと何故か俺たち以外の子供達が全員集結して川に向かって何やらやっている。


何やってんの?


声を掛けると1番年上のお兄ちゃん(ヤンチャ兄弟の兄)が何かに手を翳し瞑想している。
よく見ると当時ガチャガチャで入手出来たクリスタルの玉だった。
女子二人が「しぃー静かに」と小声とジェスチャーで訴えて来た。
すると兄の横で同じく何かを山に向かって掲げていた弟(ヤンチャ兄弟の弟)がニヤニヤしながらこう言って来た。


今儀式してっから。


こればっかりはマジで意味が分からなかったが瞑想していた兄が突然こう言った。
山見てみろ!「死」っていう漢字が浮かんで来たぞ!
山肌に漢字の「死」が浮かんで来たらしいが俺はまだその漢字を習って無かったからよく分からなかった。

そして何故か女子も含め全員が山に向かって手を翳しパワー?を送って居る。
よく見るとみんな何か持ってる。

呪物的なもの、神具的なものに見立てて思い思いのアイテムを翳していたがよく見ると土産屋で売ってる剣のキーホルダーやネックレス、ヤンチャ兄弟の弟に至ってはドラゴンボールのフィギュア。
俺と弟は手ぶらだったのでとりあえずその辺に落ちてる石を拾って山に向かって翳した。


終始はてなマークが頭に浮かんでいたが子供ながらにこれは合わせないとマズイと一生懸命儀式に参加した。


どんなシチュエーションにもすぐ入り込んで遊んでいた時代だったがこれだけは未だに意味がわからんし気持ち悪い。
後々気づいたのだがそのヤンチャ兄弟の母親は新興宗教にどっぷりだった。
なんの影響でその遊びを始めたから分からないがきっとそんな家庭の影響もあったに違いない。

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