二次創作と一次創作の比較

 すでに原作がある二次創作は、いわば二段ロケットのようなもの。一次創作と比較して高く遠く飛ばせるイメージがあります。どれくらいの差があるのか工房のデータで検証してみました。

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 こんにちは、幻操工房のDaisukeです。
 さて、スタジオやサークルなど制作チームを抱える経営者にとって「営業力」は欲しい能力の一つです。かつてはチラシやHP など何かと作るのに手間がかかっていました。 しかしSNSというメディアが登場して以来、規模的にも手間のかかる量的にも、ずいぶん個人でコントロールしやすくなってきたと感じています。
 個人発信力の高まりは過当競争を生み、発信プラットフォームが整備されてきたおかげで技術的には横並び。「いくら頑張っても見てもらえなければ評価はもらえない…」などと悶々としている方も多いのではないでしょうか?

 イラスト業界で長年使われているジャンル分けの一つに《一次創作と二次創作》というものがあります。シンプルに一言でいうと「原作者と発表者が同一」なのが一次創作。「原作者と発表者が別」なのが二次創作…でしょうか。 著作権が絡んだりオマージュやパロディなど線引きの難しいものもあるので、詳しくは割愛しますが、個人的には一段式ロケットと多段式ロケットの例えが一番しっくり。 より高く遠くに飛ばす(=たくさんの人に好評価をもらう)ためには、原作者の世界観を借りて(=一段目のロケット)発表者のシチュエーションを発表する(=二段目)というわけです。
 原作の人気度の影響が大きい二次創作の影響力は、無名のオリジナル原作と比較するべくもなく、一次創作限定イベントなどでいわば保護していかないと、どうにもならないレベル。ただし原作者がいる以上、お行儀良くしていないと法の縛りが待っている点でリスクを孕んでいるとも言えます。世の中よくできてますよね。

 はたして。同人誌業界ならともかくSNSでも長年の慣例である《一次創作と二次創作》の差とはそれほどつくものなのか! 工房員であるStraycat氏をいけにえ…もとい、氏の協力のもとデータをとってみました。
 さあ、皆さんは二つのうちどちらがSNSに有効だと思いますか?

 今回、ベースにしたのは2022年の1月から5月末までのStraycat氏のTwitter。いわゆる「イラスト垢」になっていて日々掲載されているイラストに自身のコメントをつける形で展開されています。 他の方へのリツイートは滅多にせず、ご自身のイラストのポートフォリオ的な構成。
 氏のタイムラインからインプレッション、エンゲージとその内容について表にしていただきグラフにして比較したのがこちら。

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 Straycat氏の作品群の中で、一次創作と二次創作では制作数に大きな開きがあるのでサンプル数を増やしていくともう少し違う結果が出るかもしれませんが…皆さんの予想とどの程度合っていたでしょうか?
 左から順に見ていきましょう。肝心の《インプレッション》は二次創作の方が2倍以上の伸び。やはり二次創作の営業力は大きいですね。これに比例するようにエンゲージも伸びています。
 ここで面白いのは下表の《エンゲージ率》の部分。単純にエンゲージをインプレッションで割っただけなんですが、比率的には7〜8%くらいでさほど差は出ませんでした。このデータに限って言えば「大通りで25人くらいに見せると、一人くらいは振り返ってくれる」という感じ。都市の駅前なら結構いけそうな数字ですかねw
 そしてみんなが気になる《いいね》数。得票数こそ二次創作の方が上回っていますが、インプレッションに対する比率は上回っているという結果に…! まぁ、これには理由があって、一次創作のデータベースにしたものが「朝嫁制服シリーズ」だったというのも原因ではないかと考えます。シリーズで長期間制作を継続すると「愛着が湧く」みたいな心理が働くので、いいね率が上がるのかなと。あえて肯定的に捉えるならば「オリジナル作品でもシリーズ化した題材を扱うといいねを押してもらう効率が二次創作に勝る可能性がある」ともいえる…かもしれない…。
 決定的に多かったのは《リツイート率》で、二次創作の方が圧倒的に多かったことがわかります。同じ嗜好の人が集まってくるのでこれは理由も判断しやすいですよね。

…ということで、以上のような結果となりました。
 《二次》の営業力は確かに高かったですね。反面《一次》の「いいね効率」での反転現象が面白かったです。小さなデータベースでの検証ですので、参考程度でしかないという但し付きではありますが、あえて希望観測的なことを言わしてもらえるのであれば、

「不特定多数の人に存在を知ってもらうならば《二次創作》」。
 「少人数でもリピーターを増やしたいなら《一次創作》で見せ方を工夫するのもワンチャンあり」。

…といったところでしょうか。
お後がよろしいようで。

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