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専門外でもそこまでこだわるのか!一流のこだわりを痛感したときの話

キャリアの中でも特に影響を受けた人物って皆さんいらっしゃいますよね。
わたしの場合は20代後半で出会った一流フォトグラファーであり経営者でもある方がまさにそういった人物でした。

今回はその方との仕事を通じて感じた“一流のこだわり”についてお話したいと思います。

わたしは最初に入った会社が2年で倒産し、そこでキャリアに対する考え方が大きく変わりました。

倒産の経験を通じて、

“会社というものはいつ倒産するかわからない。これからは自分のやりたいことを徹底的に追及しよう”

というマインドになり、当時システムエンジニアが1人もおらず募集もしていなかった魅力を感じていた会社に直談判してエンジニア第1号で入れてもらいました。

この会社はビジュアルコミュニケーションにとても強みがあり、フォトグラファーやデザイナー、画像処理オペレーター、プロデューサーなどのプロフェッショナルが知恵と技術を結集して広告制作やストックフォト事業といったビジュアル関連事業を手掛けていました。

入社したのは1996年頃でインターネットの活用を企業側でも模索をし始めている時期でした。最初の上司は当時の専務だった方でフォトグラファーとしても一流の方です。

そのような方が最初の上司だったので、入社直後から色々な経験をさせてもらいました。まず入社初日に併せてWebサーバーとして使うハードウェアが用意されていて、Webサイトの立ち上げを命じられました。

今はホスティングサービスなどを利用すればWebサイトで情報発信する仕組みは簡単に用意できますが、当時はサイトを制作する手前のサーバ環境構築は結構な手間でした。回線を引きネットワークをつなぎWebサーバーとして利用できる状態にするところからやりました。

Webサイトを立ち上げてからは、色々な指令が専務から降ってきます。知的探求心が旺盛な方なので何か思いつくと階段を下りて私のところに来て新たな指令が来る、そんな日々を送っていました。その中でも印象的だったのは画像圧縮技術に対する強いこだわりでした。

「猪目君、インターネットで写真を綺麗にできるだけ快適に見せたい。研究してみてほしい」

ある日こんな指令が専務から降ってきました。

当時のインターネット環境はISDN(64kbps)の時代で今の光回線(1GBps)と比較すると単純計算で速度は約15,000分の1、今では想像もつかない亀のような閲覧環境でした。

当時のWeb担当者は「如何にファイルサイズを抑えてリッチなビジュアル表現を実現するか」を日々思考錯誤しながらサイト運営をしていたと思います。

当然ながらビジュアルコミュニケーションにこだわりを持つこの会社では、中途半端なことはできません。さらにその中でも強いこだわりを持つ専務はわたしの想像をはるかに超えたこだわり振りでした。

そして色々な画像圧縮ソフトを取り寄せての数か月の検証が幕を開けます。

画像圧縮で特に難しいのは、空のように淡い色のグラデーションが多くの割合を占める画像です。目標にしていたのは、“256色でフルカラー(1,677万色)とあまり遜色がない画質”でした。

画質の劣化を極力おさえて色数を256色まで落とすことができれば、写真にもよりますが画像サイズは少なくとも数十分の1以下になり、当時の遅いインターネット閲覧環境でも快適に写真を見せることができるためです。

色々と試行錯誤していましたが使える色数が限られているので、当然ながらグラデーション部分はかくかくした不自然な圧縮結果になり、使いものにならない。

当時市場に出ていた画像圧縮ソフトはほとんど試していたので、さすがにお手上げかと思っていたある日、専務から出てきた言葉は「ロスアラモス研究所が開発した画像圧縮技術を使ったソフトウェアがあるらしい。取り寄せたのでこれも試してみよう」という一言でした。

あのロスアラモス国立研究所?
そんなところの技術を使ったソフトウェアがあるのか?

早速試してみることにしましたが、これが驚きの画像圧縮技術で256色なのにフルカラー(1,677万色)と感覚的にはあまり差が見られない検証結果となりました。

「これは使える!」。そしてこのソフトウェアで画像圧縮した画像を活用して当時のWebサイトで写真を綺麗かつ快適に配信することができました。

この経験を通じて“自分の専門分野でなくてもプロとしてこだわり抜く姿勢”“一流の方が物事を掘り下げるレベルの深さ”を学びました。そしてこの時の貴重な経験が数年後の国内最大級のストックフォトECサイトの開発にも活かされていきます。

この専務の方とは今でもお付き合いがあるのですが、70歳とは思えない飽くなき探求心で現役のフォトグラファーとしてご活躍されています。ちなみに入社したいと直談判した時に面談をしていただいたのもこの方でした。

今でも撮影機材を自作したり、趣味が高じて60歳を過ぎてから会社をいくつか起こしたりと、この方を見ていると自分はまだまだだなといつも痛感させられますが、こういった真のプロフェッショナルと20代後半で出会えたことはわたしの大きな財産です。

皆さんもキャリアを積まれてきた中で大きな影響を受けた人物がいらっしゃると思います。是非皆さんのエピソードも是非聞かせてください!


#キャリア奮闘記 #一流フォトグラファーのプロ魂に触れる #画像圧縮技術を探求

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